- 2011-03-14 (Mon)19:10
- 近藤雅世
- 原油
日本の商品価格は小豆と灯油の例外を除いて軒並み下落した。地震が起きただけならまだしも、東京電力の停電と原子力発電所の予期せぬ事故は日本の工業力に対する不安をもたらした。停電なぞついぞないと思っていたら、2006年や1987年に首都圏で起きていた。しかし記憶にないほどの出来事であり、今回のような大規模なものは初めてなような気がする。いかに日本のインフラに老朽化が来ていたかがいまさらのように思い起こされる。海外からは日本の復興を期待してエールが送られているが、壮年期を過ぎた日本の回復には時間がかかるかもしれない。原子力発電に対しても世界的に見直され始めている。炉心溶融等の大事故が起きた場合は、たとえ万一の場合であっても、戦争以上の被害が恒久的に及ぼされる点で、他のインフラとは違った脅威がある。これに対して、絶対大丈夫という保証を行い説明が繰り返されてきたが、たった一度の地震による津波でその信用が崩れれば、人々は疑心暗鬼にならざるを得ない。今回の停電と原子力発電における二つの日本のつまずきは、日本の景気悪化の予兆を惹起させ、商品需要の減少をイメージさせる。一方で金価格はそれほど反応していない。本来は、地震等の天変地異に対しては、金価格は上がるはずである。しかし、ことが日本でおきたために日本人は、地震=円安=資産を金に移そうという反射神経をもっち合わせていない。せいぜい株価の下落を嘆く程度であり、まさかの事態に対する反応が鈍いので、金価格はそれほど上がっていない。本来のセオリーから言えば、企業が利用する素材原料の商品は下落、食料価格は上昇、円安、金高になるはずであるが理論通りにはならない。食料価格上昇は、スーパーやコンビニの商品棚が空になっていることでわかるように、震災特需である。ただ、この場合は仮需なので、その分将来の売り上げが落ちるという反動付きである。もう一つ、震災と商品価格に関するセオリーは、原子力発電装置の故障→発電能力減少→火力発電設備稼働率アップ→重油需要増加→重油生産増加→ガソリンや灯油もいっしょになって生産されてしまう→ガソリンや灯油の余剰在庫増加→ガソリン、灯油価格下落につながる。円高になっているのは、損害保険求償等の資金を海外から引っ張ってくるためにレパトリエーションで円買いが生じるという思惑だ。