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今回の金価格上昇の要因

2019年5月30日まで1287ドルと1200ドル台だったNY金価格が5月31日突然1300ドルを超え、6月21日には1400ドル台も超えてしまった。この急騰の裏にあるのは、米国の利下げのニュースだけである。敢えて言えばイラン近辺に生じたホルムズ海峡におけるタンカーへの攻撃とか、無人偵察機の撃墜等少しきな臭い動きもあり、トランプ大統領はイラン攻撃の15分前に命令を撤回したという騒動もあり、その後イランに追加経済封鎖を行ったという地政学的リスクらしきものもあるが、戦争が起きたわけでもないのに、100ドル以上の値上がりは不可思議に想える。さらに米国における利下げは、米国株価を高め、債券価格も上昇(金利は下落)している。金価格も上昇し、三つのアセットクラスが同じ動きで高くなっている。
利下げは株価を上げるのは自明であり、債券価格の上昇も当然のことであるが、なぜかそれらと一緒に安全資産と言われる金価格が上昇したことはすっきりしないものがある。
敢えて言えばドル安である。金利が低下すればドルは下がる。しかし、円はドルに対してそれほど上がっていない。ドルインデックスは確かに、5月30日の98.14から6月24日は95.98に▲2.16、▲2.2%下がっているが、金は同じ期間に1287.1ドルから1414.3ドルまで+127.20ドル、+9.9%上昇している。ドル安に対して金高は4倍以上の反応である。
ファンドがドル資産を売って金を買ったという可能性はある。すでにファンドは金を買い始めていた。金の売り残は減少しつつあった。
こうした理屈のつかない価格の変動は、その反動を恐れる必要があると思われる。群集心理で我も我もと買い、利益が出たところで誰かがそっと抜け出すと、慌てて買いを売り閉じる動きが加速する可能性がある。
無論、中東で地政学的リスクに火がついたり、トランプ大統領と習近平首相が足を蹴飛ばし合ったなどというハプニングがあれば、話は別である。
いずれにせよ7月1日のTOCOM SQUARE TVで上記を直近の数値で固めたグラフを用いて解説したい。

金と原油、トウモロコシが対照的な動き

6月3日のNY金価格は、NY金価格は+16.8ドル高の1327.9ドル、NY原油価格は▲0.25ドル安の53.25ドルとなっている。また最近まで350セント前後だったシカゴトウモロコシは、429.8セントまで上昇している。

年初を100とした指数で三つの商品を比較すると、金はだらかでボラティリティーが低いことがわかり、原油は上昇し足り下降したり、動きが激しい。またトウモロコシは、春先から横ばいないし下降気味だったが、米国中西部の豪雨を受けて作付けが遅れたという要因があり、このところ急騰している。
トランプ大統領の発言を受けても、金のように上がる商品と原油のように下落する商品、ほとんど無関係に動く穀物といった具合であり、ニュースや価格変動要因は商品それぞれに違った反応をもたらすことがわかる。
金は経済と密接な関わりがあり、通常はゆっくりした動きに終始するが、サプライズがあると急騰する。ということは、サプライズが収まれば金価格も収束し始める可能性が高い。元々金価格は平穏な価格推移をして、数十年と言う単位の長期投資に向いている商品である。短期の変動を収益かしたいなら、原油や穀物の方が向いている。原油は基本的に余剰であり、下がりやすいのであるが、イランやベネズエラなどの地政学的リスクに反応しやすく、反応するとそのボラティリティーは高い。
一方トウモロコシは、シカゴにローカルズと呼ばれる穀物専門の投資家がたくさんいるため、価格はかなり練り込まれている。彼らは毎日天気予報に意識を集中し、細かい価格変動を収益化する機会を狙っているので、価格は比較的緩やかな動きをするが、天候異変でもあれば一方的に価格は動きやすい。それだけ多くの投資家が身構えているためだ。

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今回の値上がりも、それまでトウモロコシを売り込んでいた投資家が一斉に買い手仕舞いし、買い方に回ったためだと推察される。穀物に関する大きな事象は一斉に反応するが、逃げ足も速いので、遅れて行くと裏目裏目に出やすいので注意が必要だ。まだはもうなり、もうはまだなりの典型であろう。



AIと相場

筆者はほとんど毎日、暇があるとネットで対戦囲碁を行っているが、囲碁の世界ではGoogleのAIに世界のトップ棋士が完敗している。またAIの出現によって、これまで悪手とされていた定石が、その方が良いという判断に代わってしまった棋譜が数多くあるようになった。当初のGoogle社のAIは過去の人間が打った手をすべて入力し、数千万件の棋譜を覚えて、その最適解を出すものであったが、次世代のAIはAI通しで数千万局を打たせて互いに競い合わせることにより、過去の棋譜の再現ではなく、新しい手を独自に生み出すようになり、これと共に、人間は勝てなくなった。そして現在のプロ棋士はAIの導く新手を覚えないと勝てなくなっている。
要するに考えるAIの出現である。これまでのコンピューターは、例えば相場に使うハイフリークウェンシーのコンピューターは過去の相場のどの場面に当たるかを現在の相場から判断し、その後の展開を推理するというものであり、結局過去の相場の確率を瞬時に求めるものだと理解している。囲碁の場合は19×19の盤面上で、人間にとってはほぼ無限と言える世界であるが、AIにとっては、瞬時に確率を計算するのはお手の物であるが、その程度では勝てなかったところ、人間と同じように、新手を考え、その先どうなるかを一手ごとに考えるようになっている。
こうしたAIを相場に使うとどうなるのかは知ってみたい気がするが、AIが必ず勝つなら相場は囲碁と同様に面白くなくなる。
さて、以下は5月20日付けの日本経済新聞記事である。
『人工知能(AI)を用いて農産物の作況を予測し、商品先物市場で活用する取り組みが動き出している。作況をいち早く正確に分析して売買の材料にする。農業データ分析を手掛けるスバックテクノロジーズ(東京・千代田)はコメの作況をリアルタイムで計測するシステムを開発中だ。政府統計の発表を待って売買する従来の取引手法を変える可能性もある。
「コメの作況指数をリアルタイムで予測できれば様々なビジネスになる」。スバック社の鈴木光晴社長はこう語り、2021年を目標に秋田県や新潟県のコメ作況をリアルタイムで予測するシステム開発に取り組んでいる。AIの機械学習で衛星画像や気象予報といったデータを解析して、コメの生育状況を予測。6月から作況を2週間おきに出す。同サービスを大阪堂島商品取引所に上場する秋田産や新潟産のコメ先物の参加者に販売し、取引の売買材料にしてもらう狙いだ。コメは田植えが順次始まる5月から、収穫を左右する天候によって相場が変動する天候相場の時期に入る。農林水産省の作況指数はサンプルを基に統計を作成するため速報値でも8月末、指数として公表されるのは9月末まで待つ必要がある。18年産の新潟コシヒカリは作況悪化が確認された9月から相場の上昇が顕著になった。
カギはいかに正確な作況を予測できるかだ。「多様なデータ集めがカギになる」という鈴木社長。ドローンを用いるなど現地の様々なデータを視野に入れる。農業データを活用したビジネスは官民で始まっているが大半は省力化や品質向上に関する開発に限られ、商品先物市場に焦点を当てた例はほとんどない。同社は人材を1人採用し、システムの開発を急ぐ。
同様のサービスは米国では普及しつつある。米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループは18年春から米スタートアップのテルアスラボ社と提携し、テルアスラボ社が分析した大豆など穀物の生育状況を有料のデータを配信するサービスを始めている。
テルアスラボ社は衛星画像などからAIで穀物の作況を予測するが、実力は折り紙つきだ。16年には国の大豆の単位あたりの収量が1エーカー当たり52ブッシェルになることを米農務省が需給報告で修正するより2カ月も早く正確に予測した。将来性が注目され同社は18年末、米農業技術開発のスタートアップ、インディゴ・アグリカルチャーに買収された。
商品先物市場は従来は政府統計の発表などを待って売買され、相場が動くケースが大半だった。AIによるファイナンスの影響に詳しい和泉潔・東京大学大学院工学系研究科教授は「単純に統計の内容を待って先物相場が動くというパターンは変わる可能性が大いにあり、統計の内容を踏まえ市場参加者がどう動くかという読みがより重要になってくる」と指摘する。』


経済ニュースと金・原油価格

現在の主要政治ニュースとしては、トランプ大統領の掲げたいくつかの政策とその波紋が挙げられる。

一つはイランの原油輸出をゼロにする政策である。トランプ大統領がこの政策の意図するところが今一つ不明確であるが、とにかくオバマ大統領と欧州各国が締結した原爆開発停止のシナリオは生ぬるいというものである。
ブッシュ大統領はその背後に軍需産業や石油産業がパトロンとしていた。9.11を契機に父親が敢行できなかったイラクフセイン大統領の抹殺を計ったことは、石油価格引き上げという観点から理が通っている。

一方トランプ大統領は、イスラエル寄りだということはわかっているが、サウジアラビアに対してOPECの減産は石油カルテルだと述べており、必ずしも石油価格を上げたいという明確な意図はないように思われる。それでも、これだけイランに対して厳しい経済封鎖を行えば、イランの革命分子は過激な行動に出ることも十分考えられる。それに対してトランプ大統領はイランと戦争する気持ちは無いという。イランにとって、原油輸出は生命線であり、それを止めることは戦争状態に等しいと思うのだが、トランプ大統領の真意がわからない。

いずれにせよ穏健なロウハ二大統領は、核合意の履行を停止し、イラン原子力庁は20日、同国にあるウラン濃縮施設の低濃縮ウランの製造能力を4倍に増強すると発表した。トランプ大統領の脅しによる対話外交の思惑は外れたことになる。最近イランに行った人のブログを読むと、思ったより平穏な国だという。ただ、物価は上昇しており、人々は不安になっているものと思われ、イスラム共和国軍が先鋭化する可能性が無いとも言えない。

13日サウジアラビアのタンカー2隻とノルウェイ船籍のタンカー2隻が妨害を受け、またサウジアラビアを横断するパイプライン二か所にイエメンのフーシ派のドローンによる攻撃があった。サウジアラビアは、イエメンのイランが支援する反政府勢力の拠点を空爆した。
 
こうした地政学的リスクは原油や金価格を押し上げるが、今のところ事故程度の扱いであり、大きな価格の上げにはつながっていない。しかし、今後さらなる事件が発生すれば、市場は身構えているため価格が上がるのは早いだろう。

マクロ経済の動きと商品価格

 トランプ大統領は商品相場に恰好の材料を与えてくれる。今回は米中貿易協議の最終段階での中国に対するプレッシャーである。25%の関税引き上げは米中貿易協議に対するブラッフであろうが、その都度市場は驚いて反応する。米国株価は急落し、ドル安になり、金は高くなり、原油価格は安くなった。問題は9日から10日にかけての米中貿易協議が開催されるかどうかであり、開催された場合は交渉が妥結するかどうかが、相場師にとっては一種の賭けとなる。その後のニュースを詳細に見ながら、状況に応じて判断することになる。価格を予測できるチャンスは年に数回しかないが、そうした機会の大半は反動である。行き過ぎた価格の反動はいずれ到来し、山高ければ谷深し、逆も真なりである。

米中貿易協議のそれぞれの立場を推測し、どのような交渉になりそうかを推定する。米国にとっても中国にとっても、交渉の決裂はあり得ないだろう。来年に大統領再選を控えるトランプ大統領は、選挙前の米国経済の悪化や株価の下落は望ましいことではない。中国も習近平主席の失策を望む勢力は影日向にいるだろうし、最近の中国経済の低迷は、共産党一党独裁の地盤を揺るがそうとしている。中国国民が不満を持つような政策は採れない。一帯一路の政策には資金がかかるが、このところ国家財政はそれほど豊かではない。食用油の原料となる大豆は思ったほど国産化が進んでおらず、米国からの輸入大豆に25%の関税をかけたため、中国国内大豆価格が値上がりし、国民の食生活に不満が出ると、政権運営に危うさをもたらす。中国としては何としても米中貿易協議を妥結させたい立場だと言えよう。しかし、米国に屈した態度は示せない。弱腰だと反習近平勢力がやり玉に挙げる。

従って、何はともあれ、米中協議が決裂するというシナリオは描き難い。妥結は時間の問題で、条件闘争に過ぎないであろう。ということは、いずれ妥結すればお祭り騒ぎになる。株価は上昇し、ドルは強くなり、結果として金価格は下がり、原油価格は上がるだろう。今の逆の動きになる。その振幅は、上がった幅であり、下がった幅であろう。深追いは禁物で、いずれ逆張りが正解となると読むのが自然ではなかろうか。現在の状況は長続きせず、反動が来るだろうと身構える必要がある。

マクロ経済の動きと商品価格

 マクロ経済と言えるかどうかわからないが、今朝のイラン産原油の禁輸措置に対する中国を初め日本や韓国インド等8カ国の適用除外が5月1日に解除とのアメリカの措置は当然のことながら原油価格を押し上げた。イランは経済封鎖がされるまでは日量300万バレルを輸出していたが、4月は100万バレルを下回り、トランプ政権は輸出ゼロを目指している。
 この背景には、サウジアラビアやUAE等がOPEC諸国の協調減産を少し緩めて増産しやすくするという配慮があるのかもしれない。夏場の需要期を迎えての減産は、収入減にもつながり、また、減産によりシェアを米国などに奪われる恐れがある。OPEC諸国とロシア等の非OPEC諸国は6月に総会を開催するが、ロシアは長くて3か月の延長しかしないと年末までの延長は保証できないとしている。それだけ原油の生産が減るのは国庫収入に響くのであろう。こうした事情はロシアに限ったことではない。

 以前は世界の原油需給バランスを図るのに、OPECの余剰生産能力という指標が使われていた。しかし、シェールオイルの発見以降この言葉で需給バランスを示すことはなくなった。なぜなら、OPECが需給のカギを握っていた時代は終わったからだ。OPECが減産してもその分米国やブラジル等が増産する可能性がある。

 幸いなことに、米国株式市場に上場している43社の石油開発企業の平均原油生産コストは48.3ドルと言われ、現在の65ドルなら、大きな利益と余裕資金が生まれている。したがって米国石油企業はいつでも増産体制にはあるものの、過当競争をして価格を引き下げる愚を侵す必要はなく、OPECが減産すればその売り先にブレント原油価格より安いWTI原油を売り込めばよいことになり、焦って生産する態度にはないことが、毎週公表される石油掘削リグ稼働数に表れている。

 以上のコメントを作る判断材料としては、新規のニュースとそれが与える需給に対する影響度合い、その世界の需給バランスを図る要因の分析としての米国企業の収益性分析などがからんでくる。またOPECやロシア等の財政状態も目安となろう。原油価格の予想には様々な経済指標が必要となる。

マクロ経済の動きと商品価格


 米国の好景気は4月で118カ月に及び、過去最長だった1991年3月の底から2001年3月までの120カ月の好景気に、あと2ヵ月に迫っているという。そんなに景気が良いとは思えないが、2007年頃の世界金融危機から比べると今はぬるま湯に浸かっているようなものである。もっとも、2018年の米国のGDP成長率は+2.9%で、日本は+0.8%と3倍以上の開きがあるので、日本で感じる景気よりは米国の景気の方がはるかに好景気を感じていることであろう。
 こうした好景気と商品価格は、原油価格では需要の好調さに反映される。ただ、原油の需要は、ガソリンや軽油、灯油、ジェット燃料、ナフサ等の石油製品需要によって形成されている。時代と共に自動車排気ガスは環境規制から制限されるようになり、電気自動車が今後の主流と目される。こうした経済の構造変化は商品価格に影響を与える。電気自動車は未だ4%程度と思われ、石油企業は今後もアフリカ等新規に自動車が売れる地域ではガソリン車があくまで主流であると強気の姿勢を崩していないが電気自動車の伸びが今後数十年でどう変わるか、先のことはわからない。
 原油の掘削方法も水平工法や水圧工法が新たに導入されて、頁岩という岩石中に貯留していたシェールオイルをくみ出す方法が開発され、生産量が世界的に拡大した。おそらく旧式の掘削方法のみであれば、年々原油の生産は先細りとなり、原油価格は上昇していたであろう。
 マクロ経済ではないが、こうした技術開発は消費構造のみならず、供給構造にも大きな変革を与える。
 安部首相が掲げた三本の矢は『大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略』であるが、現在の日本の経済低迷の主な原因は、第三の矢が無いためだと思われる。モノ余りの時代で、それ程新たに欲しいものが無く、たとえあってもその金額が小さいので大きな経済効果を産みにくい。自動車やスマホに代わるような新たな産業が発生しなければ、少子高齢化のために国民総生産は横ばいにならざるを得ないだろう。
 そうした時代の商品価格は横ばいの上下動を繰り返す時間が長くなる。投資家としては、いかにそうした横ばいの上下動の中で収益を取るかが課題となっている。

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