- 2009-12-09 (Wed)18:00
- 近藤雅世
- 金
金価格が下落した要因は3つある。一つはクリスマス休暇に向けて27万枚あるファンドの建て玉がプロフィットテイクに向かっていること。他人が売ると、我も我もと早くプロフィットテイクなり損切りの買い戻しなどが行われるため、下落幅は大きくなる。時には上げ幅をそっくり返すこともある。二つ目は失業率の改善や、非農業就業者数の減少が10月の11万人から11月は1万人に減少したことがサプライズになり、米国景気は回復しているのではないかという思惑である。三つ目はギリシャ国債の格付けがBBB+に格下げされ、アイルランドやポルトガル、スペインといった国の財政悪化や英国もAAAから格下げされるのではないかといった国の信用下落によるもの。どちらもユーロ圏の経済に対する不安を呼び起こし、ユーロ安ドル高を惹起している。ドル安も永久に続くわけではないということであろう。しかし、たとえドル高になったとしても、金の魅力がなくなるわけではないと思う。ユーロに比べてドルが高くても未だ一昨年わずかに4行の倒産だった米国の中小金融機関の倒産件数が、昨年は26行になり、今年は先週末に6行の倒産を含むと既に130行という多くの金融機関が倒産している事実は、その背景に更なる金融不安が現在進行形であることを示している。米国だけでなくユーロもダメとなるなら中国やインドしか世界経済を保つところはない。しかし、今一番心配なのは中国なのだ。昨日中国政府は引き続き金融緩和政策を続けると述べたが、これは薄氷を踏む思いであろう。自動車が売れているとはいえ、これは以前より借金がしやすくなったということに過ぎない。人々の収入が増えたというよりは、銀行がいくらでもお金を貸してくれるので、それを使って夢の生活が出来るという、どこかで聞いたような話が今中国で進んでいる。輸出は減少しており、収入は減っているのに、借金して買ったものは借金をいずれ返さねばならない。マネーゲームで安く買ったものが高く売れる間は資産は膨らむが、最後にババを引いた人は、坂道を転がり落ち、銀行は貸し倒れが増加し、不良債権の山となる。そうした事態が時間の問題で起こりそうな雰囲気である。従って世の中に不安は消えていない。北朝鮮のデノミは富裕層を極貧に落とした。12月6日までのわずか一週間に換えられる古い紙幣は日本円にして3千円まで。それまでいくらたくさん旧紙幣の北朝鮮通貨を溜め込んでいても3千円以上はすでに紙切れになった。こうしたことは為政者の一声で起きることであり、それが通貨の宿命である。ドルも円もユーロも背景の信用というものが崩れたら何の価値もない。ならば普遍の価値金の購入意欲は、価格が下がれば下がるほど旺盛になるだろう。問題はいつまで、どこまで下がるかであるが、これはわからない。しかし、金価格がずるずる下がり続けることは考えられない。底を拾うことはあきらめて、流れとしてはいずれ売りから買いに転じた方が良いだろう。
<< 粗糖の上値追いは危険 |
| 大豆は豊作なのになぜ値崩れしないのか? >>