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金とプラチナの価格

 以前はプラチナ価格の方が金価格よりずっと高かった。しかし、2002年以降プラチナ価格が金価格を下回ったことは4回あり、2015年以降はずっと金価格の方がプラチナ価格を上回っている。2018年4月13日の値差は415ドルに拡大している。
 
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2014年、世界のプラチナ生産の75%を占める南アですべてのプラチナ鉱山会社が約半年間に及ぶストライキが起きた。
当時のプラチナの生産量は2013年の243トンから2014年に221トンに▲22トン減少した。
通常世界の生産量が半年で約 ▲1割減少すれば、価格は急騰するところだが、プラチナ価格は予想に反して下落した。

当時プラチナのディーラー間では、プラチナの「地上在庫」が多いので、生産減は十分賄われるという「まことしやかな情報」が流れていた。そのため、投機家やディーラーがプラチナを買い続けても価格は下がる一方で、大きな損失を被った多くの市場参加者は、プラチナ市場から撤退した。

 折からそれまで唯一の世界の精細な需給情報を出していたJhonson Matthey(JM)社が需給の公表を取りやめた。これにより世界の需給状況の細かな動きは投資家の視界から消えることとなった。

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 当時、JM社は「地上在庫」なるものを公表していなかった。そもそも、「地上在庫」とは、自動車メーカーが保管しているプラチナ在庫のことを言い、それは門外不出の極秘情報であり、外部に漏れることはあり得ないことだった。要は、プラチナディーラーはそうした「まことしやかな情報」に踊らされたということになる。真実はともあれ、プラチナ価格はその後下がり続け、日本と米国のプラチナ先物市場は、需給の動きを反映しない細々とした市場に成り下がった。また日本の商社もこの頃から貴金属のディーリング事業から相次いで撤退している。

 それまでの東京商品取引所やNYMEXの価格は、出来高こそ他の商品市場より少なかったが、それなりに、世界のプラチナ価格の指標となり、需給を反映した市場であった。しかし、2015年以降のこれらの市場はレイムダック化し、売り手に圧倒された市場となっている。プラチナ価格は一般投資家が買っても値上りせず、一貫して下落圧力にさらされた市場となっている。

このプラチナ市場の崩壊は、プラチナ鉱山会社を疲弊させ、昨年南アのプラチナ鉱山の採算は軒並み赤字となり、いくつかのシャフト(縦抗)は閉鎖され、新規投資は控えられている。
 折から、フォルクスワーゲン社によるディーゼル車の排気ガス検査の偽造問題が生じ、そのために欧州ではディーゼル車の乗り入れ制限をする都市が現れ、それがディーゼル車の売り上げを急減させている。

2018年の1月〜3月のドイツの乗用車登録台数は前年同期比+4.0%増の87万8,611台となっているが、3月の販売を燃料別で見ると、ガソリン車は+9.3%増でシェア64.0%、ディーゼル車は▲25.4%減でシェア31.4%、ハイブリッド車(HV)+45.4%増の1万874台、電気自動車(EV)は+73.1%増の3,792台となっている。

プラチナにとっての向かい風は、今後の電気自動車化である。BP社によれば、現在世界に9億台の自動車があるが、そのうち1億4200万台が2025年までに電気自動車になるという。また2035年までに最大では4億5千万台が電気自動車化するというIEA(国際エネルギー機関)の予測もある。

 電気自動車化のスピードは今後の技術革新の進度にかかってくるが、いずれにせよ先進国や中国では排気ガスの出ない電気自動車が主流の時代となるだろう。


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 ただ、電気自動車にはバッテリーで動く電池車と水素を原料として発電しながら動く燃料電池車があり、後者には触媒または電極としてプラチナが現在の20倍を必要とするとされている。プラチナは高価格なので、代替材料の研究も行われており、今後のプラチナ需要の予測は難しい。

 いずれにせよ、現在のプラチナ市場は最悪の状態で、おそらくプラチナ価格は(確証は全くないが)自動車メーカーの息のかかったディーラーにより価格を押さえつけられ、少々の買いは売りつぶされる市場になっているのではないかと思われる。

 しかし、こうした10年〜20年の長期にわたる低迷は鉱山業界にはよくあることである。プラチナには、どうしても代替材料が見つからない触媒作用(プラチナ容器を通過する気体は酸化還元反応を惹起される)を有し、石油化学工業にはなくてはならない触媒物質である。また、自動車触媒としては、ガソリンを燃焼して出る排気ガスに含まれる猛毒ガスのHC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)、NOx(窒素酸化物)を酸化還元反応によりCO2などに無毒化する。あるいは、高温高圧化でも性質の変わらない素材はプラチナ以外になく、ガラス工場の設備素材や高炉の温度計、また、抗ガン剤などの工業用途があり、さらにダイヤモンドの指輪の台としては、金より純白なプラチナの方がよく似合い、ブライダル需要として手堅い宝飾品需要がある。こうした需要がある限り、南アの鉱山会社は合併などで整理されることはあっても、鉱山会社がなくなることはないだろう。いずれ需給を反映した価格が形成されるものと期待したい。ただそれはかなり時間がかかることかもしれない。

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