- 2009-08-26 (Wed)17:42
- 近藤雅世
- 金
ワールドゴールドカウンシルによれば、2009年第2四半期の金の需要は、前年同期比71トン(▲9%)減であったという。中でも宝飾用需要は116トン(▲22%)減であった。一方、第1四半期と比べると、宝飾品は61トン(+17%)増であるが、ETFは第1四半期の465トンから57トンに408トン(▲88%)減少し、投資需要は377トン(▲63%)減であった。金の生産量は33トン増の622トンと横ばいであるが、、スクラップは価格にあわせて増加しており、第1四半期の566トンほどではなかったが、334トンの供給となっている。金価格が950ドルを超えてくると金の需要はしぼみ、逆にスクラップの供給が多くなるという傾向にあり、ことにインドやトルコではその傾向が強い。国別で見ると、インドは前年同期比66トン減の109トンになってしまい、トルコも22トン減、ベトナムの14トン減やサウジアラビアの7トン減が目立つ。一方前年同期がわずかの9トンに激減した欧州は65トンと回復し、また、中国は9トン増の90トンとなっている。ちゅうごくは世界一の金生産国であるとインドに次いで世界第二位の金輸入国になった。
こうした金の需給は価格にはあまり反映されない。穀物などの商品価格であればこれだけ需要が落ち込めば価格は急落するはずである。しかし、金や原油などの金融商品化した商品価格は、モノの需給では動かされなくなっている。それでは需給を無視しても良いかというと、微妙なニュアンスで需給状況は価格に影響してくる。それが現在では金価格上昇の足かせとなって働いている。金価格が950ドルを超えるには相当なエネルギーが必要であるように見受けられる。金融危機の再燃や、物価の上昇、あるいは株価の暴落などがリスクが発現しなければ、金価格が千ドルを超えて上昇する牽引力にはならないだろう。インドは9月から祭礼シーズンに入る。需要は増えるかもしれないが、上記の需給で価格が下がらなかったように、その程度の需要増では価格を引き上げるには力不足であろう。インドの買いが価格を上げるなら、毎年秋には金価格が上昇するはずだが、そうした季節要因は金価格に見られない。従って、しばらくの間は金融情勢をにらみながら900ドルの下の方で金は居座るのではないだろうか。