- 2009-06-10 (Wed)10:53
- 近藤雅世
- 金
東京金価格は3千円を超えて少し足踏み状態となっています。しかし、私は未だ強気を維持しています。以前は株価が上昇する局面では金が売られて株を買う資金が捻出されるだろうという見方から一時的に下がる可能性があると言ったこともありましたが、今日のところは強気です。相場ですから、短期的な手仕舞い売りによる下押しはあると思いますが、今の情勢では下値は押し目買いではないかと思います。その理由は以下です。
1. インフレの予感
これは既に言い古されていることですが、世界各国が景気浮揚のために大量の国債を発行し、財政投融資を行って景気対策をしているためです。国債の発行というのは通貨の増刷に他なりません。通貨が世の中にあふれると通貨の価値が下がって物の価値つまり物価が上昇します。先週ジム・ロジャーズも米国政府は紙幣を印刷しすぎていると批判し、やがて通貨危機が訪れることを予言しています。こうした投資家はインフレを予感して商品を買っています。CFTC(米国商品先物委員会)の建て玉を見ると、4週間から5週間ほとんどの商品で買いが増加しているのが見て取れます。原油価格が上昇しているのも、石油が足りないからではなく、在庫が増えようが減ろうが、金融資本が債券や株を買う感覚で原油先物を買っているから70ドルを超えてきたのです。
こうしたインフレヘッジの商品買いは、ますますインフレを加速し、デフレだと安心していた人々をあっという間に物価高の世の中に運びます。企業の売上高が上昇したり、賃金が上がることは値下げするときよりは人々の抵抗が少ないのです。だからインフレはデフレよりも人々に受け入れやすいと言えましょう。従ってここ当分商品価格はどちらかといえば買い有利となるでしょう。
2. ドル安
米国の長期金利が上昇しています。このことは二つの原因があります。一つは将来長期金利は上がるだろうと思う人が多いこと。つまり上記のインフレを予感する人が多くなっているためです。もう一つは、米国債が次から次へと発行されるため消化不良に陥り、買い手が少なくなっているためです。米国政府高官は米国債を買ってもらうために世界各地に飛んで営業を行っています。ガイトナー財務長官は、中国に行き国債購入を継続するように要請しています。いまや中国は世界一の米国債のバイヤーとなっています。しかし、国内から外貨準備を米国債ばかりでなく、金や他の資産で持つように批判が出ています。そのため温家宝首相は、米ドルに対する不信の表明する発言をし、金を従来の600トンから1014トンに増やしました。これを見て米国政府は、あわててちょうどGM危機の最中でしたが、ガイトナー財務長官を中国に派遣しました。またオバマ大統領はサウジアラビアを始めとする中近東諸国を歴訪しましたが、この目的の一つは、原油価格の上昇を容認する代わりに米国債を購入して欲しいと要請したものと推測されます。なぜこのように米国債の売れ行きに関心が高いのでしょうか?
それは、米国債が売れ残ると、価格が下落し、それは長期金利の上昇を意味します。長期金利が1%上がると、米国政府の利払いが約1700億ドル増加するのです。今年度の米国の財政赤字は1兆8千億ドル、来年は1兆2千億ドルとオバマ大統領は述べています。しかし長期金利が1%上がっただけで、それが1割ずつ増えるのです。財政赤字が増加するということは国債価格が下がり、ドル安となりがちです。するとまた長期金利が上昇するというイタチゴッコになります。だから何としてでも米国債を誰かに買ってもらわねばなりません。日本のバブルが崩壊した時は同じ状況だったのですが、日本には国民の貯蓄がありました。そこで日本が国債を大量発行して借金したとき、その主な貸し手は国民の貯蓄でした。ところが米国は外国からの借金に頼らざるを得ない体質なのです。
長期金利は上がると住宅ローン金利が上昇し、せっかく戻り始めた住宅購入にまた冷や水が浴びせられます。また長期金利の上昇は短期金利にも影響を及ぼし、企業の借り入れなどの利息負担が増加することにもなります。だから国債が売れないということは米国経済の景気回復が遅れることにもなります。
短期金利といえば、米国のFFレートは現在ゼロ〜0.25%と非常に低くなっています。これを借り入れてブラジルレアルやインドルピーなど新興諸国の高金利の通貨を買ってその国に投資するという取引が増えています。どこかで聞いたことはありませんか?そう、円キャリートレードのドル版です。ドルを借りてブラジルレアルを買うときにドル売りとなります。だから現在ドルは世界的にドル安になっています。短期的なドル高はあるとしても基調はドル安でしょう。ドル安は金高につながります。
少し長くなりましたが、最後にもう一つだけ金価格が上がる要因
3.ユーロ安
今朝の日経新聞に載っていますが、先週ラトビアの国債の入札が失敗しました。スタンダード&プアーズ社がバルト三国の一角を占めるラトビアの格付けをジャンク債並みのBB+に落としたからです。このためラトビアは短期資金の借り入れができなくなり資金不足に陥りました。企業で言えば倒産目前です。ここに一番多く貸し付けているのはスウェーデンなので、北欧諸国の信用度合いも急落しています。隣のポーランドは私は大丈夫と力説していますが、ベアスターンズも今期は黒字だとCEOが叫んでも、口座解約が相次ぎ、つまり取り付け騒ぎが起きると一気につぶれてしまうのが信用に成り立った経済の特質です。黒字でも信用が無くなればつぶれるということです。
こうして今、ドルも安いが、ユーロも安い状況になっています。お金持ちの資金は行き場に困ってさて、どうするでしょう?
これは既に言い古されていることですが、世界各国が景気浮揚のために大量の国債を発行し、財政投融資を行って景気対策をしているためです。国債の発行というのは通貨の増刷に他なりません。通貨が世の中にあふれると通貨の価値が下がって物の価値つまり物価が上昇します。先週ジム・ロジャーズも米国政府は紙幣を印刷しすぎていると批判し、やがて通貨危機が訪れることを予言しています。こうした投資家はインフレを予感して商品を買っています。CFTC(米国商品先物委員会)の建て玉を見ると、4週間から5週間ほとんどの商品で買いが増加しているのが見て取れます。原油価格が上昇しているのも、石油が足りないからではなく、在庫が増えようが減ろうが、金融資本が債券や株を買う感覚で原油先物を買っているから70ドルを超えてきたのです。
こうしたインフレヘッジの商品買いは、ますますインフレを加速し、デフレだと安心していた人々をあっという間に物価高の世の中に運びます。企業の売上高が上昇したり、賃金が上がることは値下げするときよりは人々の抵抗が少ないのです。だからインフレはデフレよりも人々に受け入れやすいと言えましょう。従ってここ当分商品価格はどちらかといえば買い有利となるでしょう。
2. ドル安
米国の長期金利が上昇しています。このことは二つの原因があります。一つは将来長期金利は上がるだろうと思う人が多いこと。つまり上記のインフレを予感する人が多くなっているためです。もう一つは、米国債が次から次へと発行されるため消化不良に陥り、買い手が少なくなっているためです。米国政府高官は米国債を買ってもらうために世界各地に飛んで営業を行っています。ガイトナー財務長官は、中国に行き国債購入を継続するように要請しています。いまや中国は世界一の米国債のバイヤーとなっています。しかし、国内から外貨準備を米国債ばかりでなく、金や他の資産で持つように批判が出ています。そのため温家宝首相は、米ドルに対する不信の表明する発言をし、金を従来の600トンから1014トンに増やしました。これを見て米国政府は、あわててちょうどGM危機の最中でしたが、ガイトナー財務長官を中国に派遣しました。またオバマ大統領はサウジアラビアを始めとする中近東諸国を歴訪しましたが、この目的の一つは、原油価格の上昇を容認する代わりに米国債を購入して欲しいと要請したものと推測されます。なぜこのように米国債の売れ行きに関心が高いのでしょうか?
それは、米国債が売れ残ると、価格が下落し、それは長期金利の上昇を意味します。長期金利が1%上がると、米国政府の利払いが約1700億ドル増加するのです。今年度の米国の財政赤字は1兆8千億ドル、来年は1兆2千億ドルとオバマ大統領は述べています。しかし長期金利が1%上がっただけで、それが1割ずつ増えるのです。財政赤字が増加するということは国債価格が下がり、ドル安となりがちです。するとまた長期金利が上昇するというイタチゴッコになります。だから何としてでも米国債を誰かに買ってもらわねばなりません。日本のバブルが崩壊した時は同じ状況だったのですが、日本には国民の貯蓄がありました。そこで日本が国債を大量発行して借金したとき、その主な貸し手は国民の貯蓄でした。ところが米国は外国からの借金に頼らざるを得ない体質なのです。
長期金利は上がると住宅ローン金利が上昇し、せっかく戻り始めた住宅購入にまた冷や水が浴びせられます。また長期金利の上昇は短期金利にも影響を及ぼし、企業の借り入れなどの利息負担が増加することにもなります。だから国債が売れないということは米国経済の景気回復が遅れることにもなります。
短期金利といえば、米国のFFレートは現在ゼロ〜0.25%と非常に低くなっています。これを借り入れてブラジルレアルやインドルピーなど新興諸国の高金利の通貨を買ってその国に投資するという取引が増えています。どこかで聞いたことはありませんか?そう、円キャリートレードのドル版です。ドルを借りてブラジルレアルを買うときにドル売りとなります。だから現在ドルは世界的にドル安になっています。短期的なドル高はあるとしても基調はドル安でしょう。ドル安は金高につながります。
少し長くなりましたが、最後にもう一つだけ金価格が上がる要因
3.ユーロ安
今朝の日経新聞に載っていますが、先週ラトビアの国債の入札が失敗しました。スタンダード&プアーズ社がバルト三国の一角を占めるラトビアの格付けをジャンク債並みのBB+に落としたからです。このためラトビアは短期資金の借り入れができなくなり資金不足に陥りました。企業で言えば倒産目前です。ここに一番多く貸し付けているのはスウェーデンなので、北欧諸国の信用度合いも急落しています。隣のポーランドは私は大丈夫と力説していますが、ベアスターンズも今期は黒字だとCEOが叫んでも、口座解約が相次ぎ、つまり取り付け騒ぎが起きると一気につぶれてしまうのが信用に成り立った経済の特質です。黒字でも信用が無くなればつぶれるということです。
こうして今、ドルも安いが、ユーロも安い状況になっています。お金持ちの資金は行き場に困ってさて、どうするでしょう?
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