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ドミノ倒しの欧州財政危機

イタリアの10年物国債の金利が7.2%まで上昇し、ドイツとの金利差が5.5%に達
したため、ギリシャの二の舞、あるいは欧州政府のドミノ倒しと恐れられている。
(ちなみにギリシャの10年物国債金利は33%に達している)

また、ポルトガルでは、8日、労働組合などが緊縮策に反対する大規模なストを
実行した。リスボンの鉄道は8割以上が止まり、市民生活は大混乱に陥った。同
国では失業率が20%を超えている。

こうした動きは、EUの存在そのものを脅かし、市場ではどこかの国でユーロの代
わりに自国通貨の印刷を開始したと噂されており、欧州を南北や東西で二分する
案までささやかれている。
イタリアは、ベルルスコーニ首相が辞任を表明したが、市場はそれほど反応しな
かった。仮にイタリアの国債の売れ行きが悪くなり、その資金繰りのためにEFSF
が支援するとなると、1兆ユーロでは不足するとの民間試算もある。ギリシャの
破綻の比ではないことは事実である。イタリアは、EUで三番目に経済規模が大き
く、GDPは1兆5560億ユーロ(EU圏の17%)ギリシャの2273億ユーロの約7倍であ
る。債務残高は1兆8428億ユーロでGDP比118.4%、ギリシャの債務残高は3293億
ユーロでGDP比144.9%である。
(ちなみに日本の債務残高は、1150兆8285億円なので、約10兆4620億ユーロに相
当する)
イタリアの脱税率はEU圏第二位で一位はギリシャである。

ただ、イタリアの基礎財政収支は黒字で、財政収支の対GDP比は▲4.0%とフラン
スの▲5.9%より良いという見方もある。
(日本でも、国債の購入者の95%は国内であり、日本は経常収支が黒字、消費税
が安いという点を評価されている)

さて、こうした債務危機の復活が商品価格にどのような影響を及ぼすであろう
か?昨日の米国市場では、
 欧州信用不安 ⇒ ユーロ安ドル高 ドル建て商品価格安
という構図になった。

実体経済的に最も影響を受けるのは、景気の悪化による資材需要の減少であろう。
欧州経済は間違いなく悪くなる。一つには来年6月までに自己資本比率を9%に保
たねばならない金融機関が総資産を圧縮するために貸し出しを抑制し、企業に返
済を迫る貸しはがしが起きるためであり、アジア諸国に5割以上のシェアを持つ
欧州金融機関は資金を引き揚げにかかるだろう。それは中国などの自動車需要の
減退に早くも現れ始めている。そうした景気の悪化は、これからであり、自動車
や建築関連需要が減退し、非鉄金属やゴム、原油価格は需要減から下落傾向とな
るだろう。

一方、世界的に再び金融緩和措置が取られるだろう。中国は消費者物価指数が少
し沈静化してきたため、引き締めから緩和に方向転換しており、米国ではバーナ
ンキ議長がQE3について否定していない。おそらく12月13日のFOMCでは債券の買
い取りなど何らかの金融緩和第三弾が実行されるだろう。

これは、第二弾同様金余り現象となり、商品市場に資金が投入される可能性があ
る。そうなれば、商品価格はインフレ気味に上昇するだろう。ただ、それは少し
先の話しである。

金を含めて商品価格は中期的には上昇すると思われる。ただ、上記の工業用品・
素材に関する商品価格は、頭の重い展開になるだろう。

こうした動きに隠れているが、トウモロコシと大豆の昨日公表された米国農務省
の需給報告は強気の内容であった。詳しくは来週水曜日の週刊穀物で分析するが、
今月も需要を減らさねば在庫が減り過ぎる状況であり、今後需要が減らないとた
いへんなことになる状況に変わりはない。大豆はブラジルの輸出量の方が米国を
凌駕する予想となっている。

需給的に言えば、トウモロコシと大豆は高くなるだろう。

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