- 2010-05-06 (Thu)14:56
- 近藤雅世
- 金
最近は、ギリシャ問題が右往左往しており、商品価格もなかなか定まった方向性を持っていません。
ギリシャのソブリンリスクは5月は乗り切りましたが、数年以内に再びデフォルト、あるいはリスケジュール(返済繰延べ)となる可能性が高いと思われます。その問題は、2001年にデフォルトを起こしたアルゼンチンが、元本を70%削減した上で、償還期日を30年先まで引き延ばしたのと同様な可能性があるということです。これは欧州金融機関に相当なダメージを与えるはずです。
ドイツは、欧州向けの輸出で潤ってきましたが、統一通貨ユーロの特典を独り占めにしてきたツケが回ってきたようです。独り勝ちでは勝負は長続きできません。負けた人にお金を貸してゲームを続けるとしても、また貸したお金を奪い続けるのでは、いずれゲームにならなくなってしまうでしょう。
既に、4月11日450億ドルの支援を決めたドイツとIMFは、それでは足りないことに気付き、5月2日、今後3年間で1100億ユーロまで支援資金を増額しました。ユーロ16カ国が800億ドル、IMFが300億ドルです。この資金で5月のギリシャ国債償還の目処は立ちました。しかし、ギリシャが増税や歳出削減で、ほぼ公約通りに財政赤字を削減できたとしても、現在実質国内総生産(GDP)比8.1%と予想される今年の財政赤字は、2013年までに対GDP比4.9%へと徐々に低下することが期待されているだけです。これは今後3年間の同国の財政赤字が約500億ユーロになることを意味しています。同国は、2013年5月までに約700億ユーロの債務償還を迎え、仮にギリシャがほぼ公約通りに財政赤字を削減できたとしても、総額では最低1200億ユーロの資金調達が必要となる思われます。
しかも、ギリシャでは、ストライキで死者が出るほど、増税や賃金引下げに対する国民の強い不満が表れており、本当に財政赤字を削減できるかは非常に疑問だという声が出ています。
そして、今や欧州経済危機はギリシャのみならず、ポルトガルやスペインにも飛び火し、ユーロという統一通貨の存続さえ危ぶまれています。20%の失業率を抱えるスペインは、経済再建の道程はギリシャ同様困難を極めるでしょう。
ジム・ロジャーズは、ユー ロは15〜20年以内に「死せる通貨」になると宣告しました。
(つづく)
ギリシャのソブリンリスクは5月は乗り切りましたが、数年以内に再びデフォルト、あるいはリスケジュール(返済繰延べ)となる可能性が高いと思われます。その問題は、2001年にデフォルトを起こしたアルゼンチンが、元本を70%削減した上で、償還期日を30年先まで引き延ばしたのと同様な可能性があるということです。これは欧州金融機関に相当なダメージを与えるはずです。
ドイツは、欧州向けの輸出で潤ってきましたが、統一通貨ユーロの特典を独り占めにしてきたツケが回ってきたようです。独り勝ちでは勝負は長続きできません。負けた人にお金を貸してゲームを続けるとしても、また貸したお金を奪い続けるのでは、いずれゲームにならなくなってしまうでしょう。
既に、4月11日450億ドルの支援を決めたドイツとIMFは、それでは足りないことに気付き、5月2日、今後3年間で1100億ユーロまで支援資金を増額しました。ユーロ16カ国が800億ドル、IMFが300億ドルです。この資金で5月のギリシャ国債償還の目処は立ちました。しかし、ギリシャが増税や歳出削減で、ほぼ公約通りに財政赤字を削減できたとしても、現在実質国内総生産(GDP)比8.1%と予想される今年の財政赤字は、2013年までに対GDP比4.9%へと徐々に低下することが期待されているだけです。これは今後3年間の同国の財政赤字が約500億ユーロになることを意味しています。同国は、2013年5月までに約700億ユーロの債務償還を迎え、仮にギリシャがほぼ公約通りに財政赤字を削減できたとしても、総額では最低1200億ユーロの資金調達が必要となる思われます。
しかも、ギリシャでは、ストライキで死者が出るほど、増税や賃金引下げに対する国民の強い不満が表れており、本当に財政赤字を削減できるかは非常に疑問だという声が出ています。
そして、今や欧州経済危機はギリシャのみならず、ポルトガルやスペインにも飛び火し、ユーロという統一通貨の存続さえ危ぶまれています。20%の失業率を抱えるスペインは、経済再建の道程はギリシャ同様困難を極めるでしょう。
ジム・ロジャーズは、ユー ロは15〜20年以内に「死せる通貨」になると宣告しました。
(つづく)
さて、こうした事態は商品価格にどのような影響を与えているでしょうか?
金の場合は、ユーロ圏のソブリンリスクの高まりは、欧州金融機関の金融不安を呼び起こし、それが金高の要因となります。ユーロ安・ドル高は、ドルベース金価格の下落方向への影響が少しはあるものの、グラフで見られるように、最近ではユーロ安ドル高が金安に繋がっていません。従って、ユーロ圏の不安心理は、中長期的には金価格を上昇させるものと思われます。
一方、景気の回復に合わせて上昇してきた原油価格は、依然としてNYダウ平均株価と0.89の高い相関を保っています。(2010年1月4日〜5月5日)4月の米国自動車販売が前年同月比20%改善し、米サプライマネジメント協会 (ISM)が発表した4月の製造業景況指数は60.4と、前月の59.6から上昇し、3月の個人消費支出(PCE)は前月比0.6%増加するなど、景気動向がや消費消費の高まりが見られれば、株価同様、原油価格も上昇気運となります。しかし、欧州危機が景気の悪化をもたらすという意味ではネガティブに働き、また、ユーロ安のドル高も、ドルベースのNY商品価格一般を下げる方向に動きます。86ドル辺りに高値抵抗線があり、景気上昇要因も、原油価格にはすでに相当織り込み済みでもあります。
こうして、ユーロ圏のソブリンリスクは、どちらかというと金価格を上げ、原油やその他の商品価格を横ばいか下げる方向に働くでしょう。
金の場合は、ユーロ圏のソブリンリスクの高まりは、欧州金融機関の金融不安を呼び起こし、それが金高の要因となります。ユーロ安・ドル高は、ドルベース金価格の下落方向への影響が少しはあるものの、グラフで見られるように、最近ではユーロ安ドル高が金安に繋がっていません。従って、ユーロ圏の不安心理は、中長期的には金価格を上昇させるものと思われます。
一方、景気の回復に合わせて上昇してきた原油価格は、依然としてNYダウ平均株価と0.89の高い相関を保っています。(2010年1月4日〜5月5日)4月の米国自動車販売が前年同月比20%改善し、米サプライマネジメント協会 (ISM)が発表した4月の製造業景況指数は60.4と、前月の59.6から上昇し、3月の個人消費支出(PCE)は前月比0.6%増加するなど、景気動向がや消費消費の高まりが見られれば、株価同様、原油価格も上昇気運となります。しかし、欧州危機が景気の悪化をもたらすという意味ではネガティブに働き、また、ユーロ安のドル高も、ドルベースのNY商品価格一般を下げる方向に動きます。86ドル辺りに高値抵抗線があり、景気上昇要因も、原油価格にはすでに相当織り込み済みでもあります。
こうして、ユーロ圏のソブリンリスクは、どちらかというと金価格を上げ、原油やその他の商品価格を横ばいか下げる方向に働くでしょう。
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