- 2011-06-06 (Mon)15:28
- 近藤雅世
- 原油
サウジアラビアは原油価格上昇が世界の景気後退に影響するとして、原油価格を100ドル以下に引き下げるために6月8日のOPEC総会で増産を決議するよう湾岸諸国に働きかけている。OPEC諸国は、公式の原油生産枠を、2008年12月に日量2,484万バレルに引き下げてから、一度も変更していない。IEA(国際エネルギー機関)は5月19日緊急声明によりOPECに増産を促した。だが、ジョーンズIEA事務次長は5月24日の記者会見で、OPEC内部の政治的な動向を考えると、生産枠引き上げを6月に決断するのは難しいだろうと発言している。原油価格がある程度調整していることもあって、今回の総会における原油生産枠の引き上げ観測は、市場にはほとんど出てきていなかった。しかし、米業界誌エナジー・インテリジェンスが、6月1日「OPECは日量最大150万バレルの生産枠引き上げについて協議する予定で、100万バレルの引き上げで合意する可能性が高い」と伝えた。6月2日には、サウジアラビアのヌアイミ石油相が訪問先のポーランドで、原油の需給状況に照らして必要があれば増産する用意があると表明。OPECは常に余剰生産能力を抱えており、現在は日量300〜350万バレルであることも明らかにした。4月のOPECの生産量(イラクを除く)は2633万バレルで、生産枠を149万バレル上回っている。リビアは2月以降134万バレル減産し4月の生産量はわずか24万バレルになっているが、サウジアラビアは約30万バレル、UAEは15万バレル、クウェートは11万バレル増産している。IEA等は2011年の原油需要が落ち込むと予想しており、サウジアラビアが危惧するのは、OPECがイランなどの主張通りに生産枠を据え置きとすれば、OPECは原油価格が100ドル台を維持したいと望んでいると示すことになり、原油需要のさらなる冷え込みの恐れが強まることである。OPEC総会における原油増産の決議は、実際の生産量とは異なるので、単なる言葉の問題に過ぎないが、原油価格を冷やす心理的な影響はあるだろう。
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