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史上最高値を付けた金はまだ上がる。

  • 2010-05-12 (Wed)18:41
  • 近藤雅世
5月11日、昨年12月3日の1218.30ドルを超えて1235.20ドルを付け、史上最高値を5ヶ月ぶりに更新したが、金価格はまだ上がると思う。その理由は三つある。一つは、ユーロ圏のソブリンリスクは未だ終わっていないということ。二つ目は米国の金融不安も未だあるということ、三番目は中国の物価が上昇しつつあり、インフレヘッジの買いが今後もあるだろうということ。つまり、ユーロは安くなるし、ドルも不安定、通貨全体が大量にばらまかれたためもあって、価値が減価しており、その分商品価格、なかでも貨幣としての価値を持つ金を安全資産として買う動きが加速すると思われる。
ギリシャは、1100万人のうち1割の110万人が公務員という公務員天国であり、リストラを懸念することなくのんびり生活できる。また定年退職しても、年金が働いているときの73%、一説には96%保証されるというし、55歳から年金が出るという。また、帳簿に載らない税金逃れの資金がGDPの25%もあるといわれ、徴税吏のそでの下がまかり通る中で、国民は、税金の3分の1を支払い、3分の1を徴税吏に支払い、3分の1を懐に入れると言われる税金天国である。こうした社会風土を政治家が公約したところで、緊縮財政を採ることはできないだろう。だからなかなか財政赤字はなくならない。そうなるとどうなるかというと、
(続く)
ギリシャに貸し込まれた資金が焦げ付いて返済されなくなるということである。5月の国債償還資金はユーロ諸国とIMFからの融資により何とか手当てがついたが、この資金も3年後には返さねばならない。その利子は10%以上の民間資金よりは低いとは言え5%である。1100億ユーロ借りれば単純計算では165億ユーロとなる。これは今年のギリシャのGDPの9%に当たるが、返済資金の減少も考慮すれば7%程度に相当するという。つまり借りた資金の利息だけで、GDPの7%になってしまう。今後3年間に返済すべき国債の償還は約700億ユーロあり、今後の財政赤字が縮小されたとしても、ギリシャに貸した金は恐らく返ってこないだろう。となれば誰もギリシャに新たな融資は渋るようになる。従って、近い将来もう一度ギリシャ危機は再燃し、その時にはフランスやドイツ、イギリスといった国々の金融機関が破綻するのではないかと思う。そうなるとその金融機関にお金を貸すのは渋くなる。こうした連鎖が金融を縮小し、景気も悪化させ、ユーロを安くする。ユーロが安くなると思えば資産をユーロ建てからドル建てや他の通貨にかえようとする。

しかし、ドルも不安である。
10日ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)は、2010年1-3月期(第1四半期)決算で115億ドル(約1兆725億円)の純損失を計上した。今回で12四半期期連続の赤字である。ファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)とフレディーマック(連邦住宅抵当公庫)の発行するMBS(住宅ローン担保証券)は、5.5兆ドルに上る。両社の資産は、1.4兆ドルしかない米連邦準備制度理事会(FRB)は、両社が発行したMBSを1兆ドル超買い支えていた。しかしそれも、FRBの総資産が2.3兆ドル、自己資産は2360億ドルしかないので、MBSの買い支えも3月末で打ち切らざるを得なかった。

ファニーメイは08年12月以降債務超過となっており、フレディーマックはかろうじて債務超過は免れているが、自己資本は極めて薄く、貸し倒れによる赤字体質から抜け出せていない。米国政府は2社が発行する優先株の引き受けによる資本注入を繰り返しており、今回も米国政府はファニーメイから84億ドルの追加出資の要請を受けた。しかし、半官半民の同社に対する支援には限界がある。だが世界中の中央銀行や機関投資家が両社のMBSを保有しているので、これをデフォルトにするわけにはいかない。

昨年140行倒産した米国の金融機関は5月7日までの4ヶ月79行倒産し、昨年以上の勢いである。こうした米国の綱渡り的金融事情からドルは長期的には安くなるだろう。ユーロもドルもだめなら金である。
金はまだまだ高くなる。

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