商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > マーケット全般 > 市場とは何か その25

市場とは何か その25

筆者が初めて市場を見学したのは、マレーシアの錫市場であった。1987年のことだ。商社の鉛・亜鉛・錫チームリーダーとしてマレーシアから錫を買い付けに行った時のことだ。驚いたことに、市場とは名ばかりで、細長いテーブルがあって、時間が来ると数人がそこに立って取引を行う。立ったままでお互いに名指しあって口々に叫んでいる。現地語なので全くわからなかったが価格と数量を取引していることだけは伺い知れた。要は市場とは市場関係者が一定の時間に一定の場所に集まって取引する場所のことなのだということを体感した。これは大阪の淀屋の軒先で自然発生したコメ市場でも同じであり、ロンドンのコーヒーショップから始まったLondon Metal Exchange(LME)でも同じである。鉛・亜鉛・錫チームを卒業して移った貴金属チームではこのLMEにおける日本で唯一のリングメンバーであるトライランドメタルを管理管轄した。LMEは、大きな部屋に丸いリングが床に描かれ、それを囲んで13人のディーラーが椅子に座る。各セッションの最初の数分は静かだが、残りの数分になると突然全員総立ちで相手を指さして大声で叫びあう。椅子の後ろに立った記帳係がどのディーラーとそのセッションの銅やアルミ地金をいくらで何ロット売ったり買ったりしたかを互いの身振りを観察しながら記帳し、怒号の瞬間が終わると相手先とその契約内容を調合する。また、ロンドンのロスチャイルド銀行の中にある黄金の間では、楕円形のテーブルを置いた小さな部屋に5人の銀行員が座り、昔ながらの黒い卓上電話を片手に本店と会話しながら5人の間で金の取引を行う。ディーリングそのものは、始まると扉を閉められてしまうので想像の姿であるが、こんな小さな部屋で世界の金価格は決められていた。それがロンドンフィキシング価格であった。東京商品取引所のゴムの市場も壮観であった。階段状の部屋に円形に商品取引員の場立ちの人が座り、立ち合い時間が始まると舞台中央に陣取った立会人が価格を唱え、場立ちが一斉に手を振る。それをバードウォッチのように売り枚数と買い枚数を数えて、売りが何枚、買いが何枚と唱える。数量の違いを取った〜という大声で叫ぶ取引員が現れ、その帳場の帳尻は合うことになる。これは板寄せ手法と呼ばれ、日本独自の取引方法であった。現在のハイフリークエンシー売買など入る余地のない取引で、価格構成に不正な方法が入りにくく、ザラバ方式と異なり時間優先の原則が存在しないため発注時間の有利、不利が無く、さらに、証券取引所の競売買(オークション)方式である板寄せとは異なり、売り手と買い手の注文枚数が完全一致したところで約定値段となるため、世界中の取引所取引の中で最も価格の透明性が高い(ガラス張り)取引だと言えた。しかし、時間を短縮する時代の波は市場をザラバ方式に移し、今ではコンピューターの中でマッチングが瞬時に行われるのが市場となった。そうした変遷が良いことなのか悪いことなのかわからないが、かっての市場は既視感のあるダイナミックさを体感できる場であったと言える。

Home > マーケット全般 > 市場とは何か その25

キーワードで検索
リンク
Feeds
1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311

Page Top