- 2014-07-01 (Tue)11:44
- 近藤雅世
- 白金
『プラチナは供給が▲70トン不足し、需要増と合わせると▲98トン、昨年の生産量の55%の供給不足の異常事態となる。』
先週ようやくプラチナ鉱山ストライキが終了した。1月23日から122日目である。しかし、鉱山各社が述べているように、生産はすぐには復旧しない。南アフリカ共和国のプラチナ鉱山は地底1000mにある。鉱脈は僅か2センチメートルの幅でお椀上に存在する。それをカンテラを付けた工夫が削岩機で上下1mの土を掘りだして地上に上げる。地上では製錬所で浮遊選鉱や化学処理を行い、溶鉱炉でニッケル分を飛ばしてバケツ一杯の鉱石となる。その鉱石を精製設備に運び、塩酸と硝酸等の溶液に溶かしてプラチナを析出して机の上に乗る豆腐大の5kg塊を作る。触媒用はこれを丸い塊にしたスポンジと呼ばれる粒状にする。
地下1000mはとても暑い。ベンチレーターというクーラーのお化けが無いと暑くて死んでしまう。また地下水がわき出ているので、これも排水ポンプで処理する必要がある。発電機が止まれば真っ暗になってしまうので、これも死につながる。1000mを20分ほどかけて上下する井戸のつるべ状の滑車と箱が無いと、地上には歩いては帰れない。地中の空気も地上から新鮮なものを送る必要がある。こうした労働環境下では、電気が止まれば大事故になる。
毎年数人鉱山では死者が出ているが、これは主に落盤事故によるものだ。しかし、電気が止まれば数千人の死者が出る大惨事になる。ストライキの前に労働者は銅電線をはがして持ち出しているようであり、配線を十分修復しないと危なくて作業はできない。
だから鉱山会社は正常稼働までに3ヶ月を要すると述べている。仮に2ヶ月で点検が終わり、稼動できるとすると、8月末であるから、ストライキ開始から約219日の操業停止となる。
2013年世界のプラチナ生産量は178トンで、その72%に当たる128トンが南アで生産された。今年も同じペースで生産できたと仮定して、128トンの219日/365日=77トンである。つまり、今年の生産量は、77トン減産となる。厳密には、上位3社以外にAquarious社とNortham Platinum社等があるため、▲70トン程度の減産となる。
一方需要は昨年は197トンであった。厳密には261トンの需要からスクラップによる供給の64トンを差し引いた数量である。中国が世界最大の需要国で24%を占めるが、その78%は宝飾品向け、つまりブライダル用のリング向けである。自動車触媒需要は5%しかなく、欧州の66%、日本の51%、米国の35%よりかなり少ない。そうした自動車触媒需要抜きで、中国は2013年前年比18トンの需要増となっている。結婚需要は堅調であり、自動車触媒は大気汚染の関係から増加傾向にあるとすれば、少なくとも今年も18トンの需要増にはなるだろう。欧州の自動車触媒需要は昨年40トンであったが、自動車需要はかなり悪かった。ところが、昨年9月以降欧州の新車登録台数は9か月連続で前年比像となっている。おそらく自動車触媒需要は50トン以上になるだろう。すると両地域だけで需要増は、28トンである。
生産が▲70トン減少し、需要が+28トン増加すれば、需給ギャップは今年より、98トン拡大する。昨年は▲18トンの供給不足が今年は▲98トン、生産量の55%不足するということになる。
計算上はとてつもない供給不足であり、プラチナで物を作るということは諦めねばならないほどである。需要が減少すれば、当然価格は下がるが、もしどうしてもプラチナでなければ、作れないものがあるとすれば、需要は減らない。
自動車触媒は、酸化還元反応を促進する物質はプラチナグループメタル以外にない。これは戦後一貫して触媒メーカーが探し求めた結果である。そうなれば車は電気自動車か燃料電池車に移行せざるを得ない。最近のこうした動きに拍車がかかっているのは、何も環境汚染のせいではない。ガソリンや軽油を燃やせば、必ず毒ガスが発生し、それを無害化するにはプラチナ族金属が必要不可欠なのだ。
更に問題は、これだけ長く生産が止まるとプラチナ鉱山は軒並み赤字となる。赤字だとリストラや生産性の悪い鉱山は閉鎖せざるを得ない。そこで再び労働問題が発生するであろうが、それはさておいても、鉱山の生産量は上記シミュレーション以上に足りなくなる可能性が大きいのである。
どう考えても、プラチナ価格は今後上昇して、余分な用途は代替品を見つける手立てを考えてもらう以外にないようである。
先週ようやくプラチナ鉱山ストライキが終了した。1月23日から122日目である。しかし、鉱山各社が述べているように、生産はすぐには復旧しない。南アフリカ共和国のプラチナ鉱山は地底1000mにある。鉱脈は僅か2センチメートルの幅でお椀上に存在する。それをカンテラを付けた工夫が削岩機で上下1mの土を掘りだして地上に上げる。地上では製錬所で浮遊選鉱や化学処理を行い、溶鉱炉でニッケル分を飛ばしてバケツ一杯の鉱石となる。その鉱石を精製設備に運び、塩酸と硝酸等の溶液に溶かしてプラチナを析出して机の上に乗る豆腐大の5kg塊を作る。触媒用はこれを丸い塊にしたスポンジと呼ばれる粒状にする。
地下1000mはとても暑い。ベンチレーターというクーラーのお化けが無いと暑くて死んでしまう。また地下水がわき出ているので、これも排水ポンプで処理する必要がある。発電機が止まれば真っ暗になってしまうので、これも死につながる。1000mを20分ほどかけて上下する井戸のつるべ状の滑車と箱が無いと、地上には歩いては帰れない。地中の空気も地上から新鮮なものを送る必要がある。こうした労働環境下では、電気が止まれば大事故になる。
毎年数人鉱山では死者が出ているが、これは主に落盤事故によるものだ。しかし、電気が止まれば数千人の死者が出る大惨事になる。ストライキの前に労働者は銅電線をはがして持ち出しているようであり、配線を十分修復しないと危なくて作業はできない。
だから鉱山会社は正常稼働までに3ヶ月を要すると述べている。仮に2ヶ月で点検が終わり、稼動できるとすると、8月末であるから、ストライキ開始から約219日の操業停止となる。
2013年世界のプラチナ生産量は178トンで、その72%に当たる128トンが南アで生産された。今年も同じペースで生産できたと仮定して、128トンの219日/365日=77トンである。つまり、今年の生産量は、77トン減産となる。厳密には、上位3社以外にAquarious社とNortham Platinum社等があるため、▲70トン程度の減産となる。
一方需要は昨年は197トンであった。厳密には261トンの需要からスクラップによる供給の64トンを差し引いた数量である。中国が世界最大の需要国で24%を占めるが、その78%は宝飾品向け、つまりブライダル用のリング向けである。自動車触媒需要は5%しかなく、欧州の66%、日本の51%、米国の35%よりかなり少ない。そうした自動車触媒需要抜きで、中国は2013年前年比18トンの需要増となっている。結婚需要は堅調であり、自動車触媒は大気汚染の関係から増加傾向にあるとすれば、少なくとも今年も18トンの需要増にはなるだろう。欧州の自動車触媒需要は昨年40トンであったが、自動車需要はかなり悪かった。ところが、昨年9月以降欧州の新車登録台数は9か月連続で前年比像となっている。おそらく自動車触媒需要は50トン以上になるだろう。すると両地域だけで需要増は、28トンである。
生産が▲70トン減少し、需要が+28トン増加すれば、需給ギャップは今年より、98トン拡大する。昨年は▲18トンの供給不足が今年は▲98トン、生産量の55%不足するということになる。
計算上はとてつもない供給不足であり、プラチナで物を作るということは諦めねばならないほどである。需要が減少すれば、当然価格は下がるが、もしどうしてもプラチナでなければ、作れないものがあるとすれば、需要は減らない。
自動車触媒は、酸化還元反応を促進する物質はプラチナグループメタル以外にない。これは戦後一貫して触媒メーカーが探し求めた結果である。そうなれば車は電気自動車か燃料電池車に移行せざるを得ない。最近のこうした動きに拍車がかかっているのは、何も環境汚染のせいではない。ガソリンや軽油を燃やせば、必ず毒ガスが発生し、それを無害化するにはプラチナ族金属が必要不可欠なのだ。
更に問題は、これだけ長く生産が止まるとプラチナ鉱山は軒並み赤字となる。赤字だとリストラや生産性の悪い鉱山は閉鎖せざるを得ない。そこで再び労働問題が発生するであろうが、それはさておいても、鉱山の生産量は上記シミュレーション以上に足りなくなる可能性が大きいのである。
どう考えても、プラチナ価格は今後上昇して、余分な用途は代替品を見つける手立てを考えてもらう以外にないようである。
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