- 2011-06-23 (Thu)13:43
- 近藤雅世
- 金
ギリシャでは、パパンドレウ首相は、評判が悪かったパパコンスタンティヌス財務相を環境相に更迭する内閣改造を行い、6月21日155票対137票で可決承認された。これを受けてNYダウ平均株価や日経平均株価は上昇した。しかし、本当に楽観的になって良い者だろうか?
ギリシャは、昨年5月に1100億ユーロの金融支援をEUとIMFから受けた。この融資の実行は3カ月おきに協議して決定されてきた。これまで530億ユーロが融資され、今回は第5次融資の120億ユーロの決定が遅れている。この融資は7月15日のギリシャ国債返済期限までに実行されなければギリシャはデフォルトになる。しかし今週欧州財務相会議では融資実行を保留している。それは、ギリシャが財政改革や国有資産売却等を盛り込んだ法案を可決することが条件となっているからだ。
ギリシャ国会は300議席、過半数は151議席である。与党全ギリシャ社会主義運動(社会党)と第2位の野党新民主主義党(社会民主党)の間は4議席の差しかないという。それが今回155票の賛成が出たことに、6月28日に予定される財政緊縮法案等の可決の見通しがついたと、欧米の証券市場は胸をなでおろしたのだ。
しかし、仮に6月28日法案が可決されて緊縮財政が行われても、120億ユーロは9月までの資金繰りしか持たず、その後1000億〜1450億ユーロの新たな資金がギリシャ国債の借り換えのために必要となる見込みで、第二次融資が現在話合われ始めている。
これらの資金は返済のあてがあるのだろうか? IMFの融資条件は各国の拠出額に準じたクォータ制となっているが、すでに昨年の300億ユーロですらギリシャは3,000%のクォータとなっており、さらに貸しこめば6,000%となってしまし、融資条件を完全に逸脱する。もう一つの融資ルールである、1年以内の借入の返済は自力で行うことという項目もギリシャには当てはまらない。既に10年債で18%、2年債では30%を超える金利となっている資金を借りれば高利貸しから融資を受けるようなもので、返済の目途は立たないだろう。
ギリシャ国民にとって、第1四半期のGDPは▲5.5%であり、失業率はこの1年で4割悪くなり16%となっている。若年失業者が急増し、公務員給料は下がる中で、観光収入程度しかないギリシャの過去の負債は帳消しにしていただいた方がありがたい。
それではなぜ欧州各国が毎日頭を突き合わせて話し合っているかというと、ギリシャのデフォルト(債務不履行)により、どれだけ欧州から米国の金融機関が傷を負うか、その傷に耐えられるかという問題である。フィッチはどの金融機関がいくらの損害を被るかを公表したが、ギリシャ国債の3割を保有するギリシャ国内の金融機関は軒並み危機状態になるものと思われる。
7割を保有する海外の金融機関で一番多いのはドイツであるが、先週メルケル首相は民間も負担をするべきだと発言、これはドイツ国民の声を反映したものであろうが、その背景にはドイツの金融機関はなんとかこの不良債権を耐え抜くことができると計算できたものと見られている。一方フランスのサルコジ大統領は、民間負担はだめだと強硬に主張し、結局民間はボランタリーに負担するという文言に妥協された。この背景にはフランスの銀行は危ないという認識があると想像される。
今の状況は、ギリシャが借金が返せなくて徳政令になるが、その貸し手は民間からどんどん政府に移し替えられている。ところがドイツ国民をはじめとするEUの市民は、なぜギリシャの優雅な生活のツケを我々が汗して稼いだ金で肩代わりしなければならないのかという不満が渦巻いている。さらに悪いことに、ギリシャに徳政令が出れば、ポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリアが、私の借金もチャラにしてくれと言いだすに違いない。そうした負担を民間の金融機関も負担するとなれば、足腰の弱い金融機関は、取り付け騒ぎが起きる可能性がある。
米国のサブプライム問題の時もベアスターンズ証券は月曜日には健全であったものが、火曜日から始まった取り付け騒ぎで木曜日には倒産し、日曜日にはJPモルガンのものになってしまった。
わずか1週間で1923年から90年以上続いた大証券会社が消えてしまった。これは、信用が失墜し、取り付け騒ぎがおきると、たとえ黒字であっても預金者や投資家が資金を引き出すことにより存続が不可能になるという金融機関特有の性格があるためだ。
同様な雲行きが欧州の金融機関全体を覆い始めた。ギリシャのデフォルトは既定の事実である。あとはそれがいつ、どのような方法で発生し、誰がそのツケの負担をするかが問われている。
そういう状況下では、欧州金融機関にユーロ建てで持っている資産の保有者は、いち早く逃げ出すだろう。米国もギリシャ国債のCDS(クレディットデフォルトスワップ)を大量に販売しており、大きな傷を負う。日本か?それとも米国債か?そして、一部の資産を安全きわまりない金にすることは目に見えている。
だから金価格はまだ上がるだろう。
ギリシャは、昨年5月に1100億ユーロの金融支援をEUとIMFから受けた。この融資の実行は3カ月おきに協議して決定されてきた。これまで530億ユーロが融資され、今回は第5次融資の120億ユーロの決定が遅れている。この融資は7月15日のギリシャ国債返済期限までに実行されなければギリシャはデフォルトになる。しかし今週欧州財務相会議では融資実行を保留している。それは、ギリシャが財政改革や国有資産売却等を盛り込んだ法案を可決することが条件となっているからだ。
ギリシャ国会は300議席、過半数は151議席である。与党全ギリシャ社会主義運動(社会党)と第2位の野党新民主主義党(社会民主党)の間は4議席の差しかないという。それが今回155票の賛成が出たことに、6月28日に予定される財政緊縮法案等の可決の見通しがついたと、欧米の証券市場は胸をなでおろしたのだ。
しかし、仮に6月28日法案が可決されて緊縮財政が行われても、120億ユーロは9月までの資金繰りしか持たず、その後1000億〜1450億ユーロの新たな資金がギリシャ国債の借り換えのために必要となる見込みで、第二次融資が現在話合われ始めている。
これらの資金は返済のあてがあるのだろうか? IMFの融資条件は各国の拠出額に準じたクォータ制となっているが、すでに昨年の300億ユーロですらギリシャは3,000%のクォータとなっており、さらに貸しこめば6,000%となってしまし、融資条件を完全に逸脱する。もう一つの融資ルールである、1年以内の借入の返済は自力で行うことという項目もギリシャには当てはまらない。既に10年債で18%、2年債では30%を超える金利となっている資金を借りれば高利貸しから融資を受けるようなもので、返済の目途は立たないだろう。
ギリシャ国民にとって、第1四半期のGDPは▲5.5%であり、失業率はこの1年で4割悪くなり16%となっている。若年失業者が急増し、公務員給料は下がる中で、観光収入程度しかないギリシャの過去の負債は帳消しにしていただいた方がありがたい。
それではなぜ欧州各国が毎日頭を突き合わせて話し合っているかというと、ギリシャのデフォルト(債務不履行)により、どれだけ欧州から米国の金融機関が傷を負うか、その傷に耐えられるかという問題である。フィッチはどの金融機関がいくらの損害を被るかを公表したが、ギリシャ国債の3割を保有するギリシャ国内の金融機関は軒並み危機状態になるものと思われる。
7割を保有する海外の金融機関で一番多いのはドイツであるが、先週メルケル首相は民間も負担をするべきだと発言、これはドイツ国民の声を反映したものであろうが、その背景にはドイツの金融機関はなんとかこの不良債権を耐え抜くことができると計算できたものと見られている。一方フランスのサルコジ大統領は、民間負担はだめだと強硬に主張し、結局民間はボランタリーに負担するという文言に妥協された。この背景にはフランスの銀行は危ないという認識があると想像される。
今の状況は、ギリシャが借金が返せなくて徳政令になるが、その貸し手は民間からどんどん政府に移し替えられている。ところがドイツ国民をはじめとするEUの市民は、なぜギリシャの優雅な生活のツケを我々が汗して稼いだ金で肩代わりしなければならないのかという不満が渦巻いている。さらに悪いことに、ギリシャに徳政令が出れば、ポルトガル、スペイン、アイルランド、イタリアが、私の借金もチャラにしてくれと言いだすに違いない。そうした負担を民間の金融機関も負担するとなれば、足腰の弱い金融機関は、取り付け騒ぎが起きる可能性がある。
米国のサブプライム問題の時もベアスターンズ証券は月曜日には健全であったものが、火曜日から始まった取り付け騒ぎで木曜日には倒産し、日曜日にはJPモルガンのものになってしまった。
わずか1週間で1923年から90年以上続いた大証券会社が消えてしまった。これは、信用が失墜し、取り付け騒ぎがおきると、たとえ黒字であっても預金者や投資家が資金を引き出すことにより存続が不可能になるという金融機関特有の性格があるためだ。
同様な雲行きが欧州の金融機関全体を覆い始めた。ギリシャのデフォルトは既定の事実である。あとはそれがいつ、どのような方法で発生し、誰がそのツケの負担をするかが問われている。
そういう状況下では、欧州金融機関にユーロ建てで持っている資産の保有者は、いち早く逃げ出すだろう。米国もギリシャ国債のCDS(クレディットデフォルトスワップ)を大量に販売しており、大きな傷を負う。日本か?それとも米国債か?そして、一部の資産を安全きわまりない金にすることは目に見えている。
だから金価格はまだ上がるだろう。
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