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ECBも失業率低下もリビアに消された

  • 2011-03-07 (Mon)14:26
  • 近藤雅世
先週欧州で、2011年のインフレ見通しが2.3%と上方修正され、インフレ上限の2.0%を超えたため、ECBトリシェ総裁は記者会見で「強い警戒(strong vigilance)」との言葉を使い、4月の理事会での利上げを「あり得る(possible)」と表現した。今回ここまでインフレ警戒トーンが高まるとの予想はマーケットにはほとんどなかったため、ユーロは対ドルでは1.38 台半ばから1.3976 まで一気に上昇、対円も113 円台半ばから115 円台まで上昇した。独2 年債利回りも前日比24bps 上昇し、マーケットは利上げ前倒しを覚悟した。金利が上昇するなら金価格は下落する。また先週末には、米国の2月の労働指標が公表され失業率は8.9%に9.0%から改善し、非農業就労者人口は、ほぼ予想通りの192千人増となった。(予想は196千人:1月は36千人を63千人に修正)労働指標の好転は、米国景気の回復を示唆し、景気回復は株価の上昇、金価格の下落を招く。ところが、金価格は12.2ドル高の1428.6ドルとなった。二つの下落要因を押しのけての上昇は、リビア情勢という地政学的リスクの影響である。北海ブレント価格4月限は117.17ドル(7日午後2時)NYMEX4月限は106.14ドルである。2月16日の84.99ドルから21.15ドルの上昇となっている。リビアでは、反体制勢力が革命評議会を結成、カダフィ大佐との対決姿勢を明確にした。NATO軍がリビア上空を飛行禁止区域に指定して軍事介入するかどうかが注目される。サウジアラビアでは3月11日のデモの呼びかけに向けて、サウジアラビア内務省は5日、「全ての抗議活動やデモは禁止されている」との声明を出した。 声明は「サウジの法や伝統に照らし、全ての抗議活動を禁じる」と強調。社会の安定を乱す行為は、治安部隊がいかなる手段を使っても阻止すると強く警告した。サウジはイスラム教スンニ派の中でも最も厳格で、政治的なデモや集会は禁止している。だが、シーア派住民が多い東部で2月中旬以降、小規模デモが散発的に発生。今のところ強硬手段はとっていないが、これ以上は容認しない姿勢を示した格好だ。湾岸産油国ではデモがバーレーンとオマーンに及んだ。湾岸諸国の盟主であるサウジに本格波及すれば、湾岸の君主制国家が不安定化し、原油の 安定供給への懸念も高まる。サウジは総額350億ドル超の緊急経済対策を打ち出し懐柔を図っているが、強硬策も示し、デモを阻止する考えだ。これらの情勢がどうなるか次第では金価格も原油価格も大きく動くであろう。

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