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電気自動車が巻き起こす問題

先週述べたプラチナが電気自動車の普及により需要が減るということを、昨日の株式会社コモディティーインテリジェンスの週刊ゴールドに詳しく書いた。このABN AMRO銀行によるレポートでは、電気自動車の割合は2040年に6割になるという。この場合のプラチナ価格はディーゼル車の衰退により500ドルまで落ちるという。しかし、燃料電池車が3割普及した場合はプラチナ価格は2300ドルにまで上昇するという。燃料電池車は現在のディーゼル車に使われているプラチナ量の5倍必要だからだという。
4つのシナリオがあるが、どれになるかわからないので、プラチナ価格もショートすべきかロングすべきか不明となる。

この論文の過程で出てくるもう一つの問題点には、電気自動車の技術開発がある。走行距離が一回の充電で500キロ走れば合格である。だがそれには高性能のリチウムイオン電池が必要であり、その資源は偏在している。リチウムイオン電池は他の二次電池と比べて高電圧、軽量、メモリー効果が無いなどの特性を持つ。その主流はリチウム―コバルト二次電池で、リチウムと共に希少金属のコバルトを必要とする。コバルトは、コンゴ民主共和国に多い。一方リチウムは下図のように、チリを筆頭に、豪州、アルゼンチン、中国、ポルトガル等に点在している。現在までに確認されている世界全体のリチウム埋蔵量は990万トン、身採掘分も含めると2300万トンと膨大で、将来のリチウム需要が年3〜5%増加しても200年分以上の埋蔵量があるという。リチウム資源の供給源は、大陸内塩湖・かん水や海水といった水圏資源と、リチウムに富む鉱物を採掘する地圏資源とに大別される。

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こうした資源は既に各国の取り合いになり、リチウム価格は過去最高水準まで上昇している。日本経済新聞の記事によれば、英豪資源大手リオ・ティントや日本企業も権益獲得を進めており、世界的な争奪戦が激しさを増しそうだ。
 「EV時代に備え、リチウム資源を押さえろ」。中国国有自動車大手、北京汽車集団の徐和誼董事長の号令で幹部はチリへと通う。資源開発に影響力を持つチリ産業開発公社(CORFO)との交渉に着手し、リチウム生産から電池製造、EV組み立てまでを含めた産業振興策を提案した。
 中国EV最大手、比亜迪(BYD)もチリでの展開に布石を打つ。現地メディアによると、地域統括会社幹部が「リチウムで現地企業との協業を模索しており、直接投資も計画している」と発言。中国リチウム大手の成都天斉実業集団もチリのリチウム世界大手、SQMに2%出資した。
中国は世界のリチウムの4割以上を消費しているとされるが、米地質調査所(USGS)によると、リチウム資源の埋蔵量は全体の2割どまり。リチウムを確保したい中国勢は、半分を占めるチリなど、全体の3分の2が集中する南米に矛先を向ける。

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 南米では塩湖に含まれるリチウムを天日干しにして採取する手法で時間がかかる。一方、オーストラリアでは鉱石から精製する仕組み。南米の手法よりも効率がよいため、埋蔵量は1割にとどまるものの、生産量では世界最大の4割を占める。中国企業の資源獲得も南米と同時に進む。
 独BMWとEVの合弁生産の交渉を始めた長城汽車は、豪のリチウム鉱山を開発するピルバラ・ミネラルズへの3.5%出資を決めた。2018年に採掘が始まるリチウム鉱物の引き取り権が狙いだ。天斉実業も豪でリチウムを生産するタリソン・リチウムを買収するなどの動きが広がる。
 リチウム獲得競争の引き金になったのは、中国の自動車政策だ。中国政府は4月、EVなどの新エネルギー車(NEV)の販売台数について、16年の50万台から25年に700万台まで増やす中長期計画を発表した。
 9月末には19年から自動車メーカーに一定比率のNEVの製造販売を義務付ける規則を導入すると発表した。調査会社の富士経済は、16年に1兆4千億円だったNEVなど環境対応車向けの世界の電池市場は25年に6兆6千億円になると予測する。
 商機を見いだすのは中国企業だけではない。SQMを巡っては、医薬品などを手掛ける興和(名古屋市)がグループで同社の2%強の株式を保有し、リオ・ティントも出資を狙っているとされる。豊田通商はアルゼンチンでリチウム権益を持ち、阪和興業はメキシコでリチウム生産を計画するカナダ企業に出資した。
 中国の金属相場を調査する亜洲金属網によると、リチウム取引で指標となる中国国内の炭酸リチウムの価格は11月中旬に1トン15万9千元(約270万円)まで上昇。投機資金の流入で高騰した16年4月のピークを越えて過去最高を更新した。
 リチウムに代わる次世代電池の開発が進むが、実用化は20年以降とみられる。EVシフトが一気に進むここ数年はリチウム資源の争奪戦が続く。

さて、リチウム資源だけではない。電気自動車になれば発電需要が増える。
ガソリン車やディーゼル車の新規販売を2040年以降禁止すると表明した英国だが、それにより発生するであろう電力不足を防ぐためには、巨額の資金を投じ、新たな発電所、電力供給ネットワーク、そして電気自動車(EV)充電スポットなどの整備を図る必要がある。技術的には、今後20年間に走り始める数百万台のEVに電気供給することは可能だ。余剰電力の大きい夜間に充電するようドライバーを説得できるならば、インフラ投資コストも低めに抑えられるだろう。

特に課題となるのは送電網だ。全体で15%、ピーク時で最大40%の増加が見込まれる電気需要に対応するには、さまざまな技術が必要となる。

「これは難問だ。発電能力や送電網の強化、充電施設に対して多大な投資が必要となる」とコンサルタント会社ウッドマッケンジーのエネルギー市場アナリスト、ヨハネス・ウェッツェル氏は語る。

これを日本に置き換えると、日本の自動車が全て電気自動車に置き代わった場合、日本の電力需要は約10%増加するという試算がある。クリーンエネルギーということでガソリン車を止めるので、この電力を火力発電や石炭発電で賄うことは本末転倒である。従って再生エネルギーか原子力発電ということになる。英国でも新たな発電設備を整備する必要があるので、日本でも原子力をどうするかという問題は福島以降充分討議されるべき課題となるだろう。

次回は電気自動車の普及についてOPECはどう考えているかを見てみる。

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