- 2014-11-17 (Mon)20:10
- 近藤雅世
- 金
NY金価格は先週末24.1ドル高と大きく反発した。スイスにおいて11月30日スイス中銀が資産の5分の1、20%を金準備保有することを義務付ける国民投票が行われるためである。
スイスの金保有量は現在1040トンで世界第7位、スイス中銀の資産の8%であり、義務付けられた割合を満たすためにはスイス中央銀行は、5年以内に金を少なくとも1500トン買い増す必要があるとアナリストは推計している。これによってスイスの金準備が2500トンを越え、米国、ドイツに次世界第3位となる可能性がある。国民一人当たりの金保有量では128グラムとなり、これは国家が保有する金の量だけであり、家庭で保管されている金地金や金貨は入らない。ドイツは42グラム、イタリアは40グラム、フランスが28グラム、アメリカは26グラムとスイスの128グラムは他国を大きく上回っている。
戦後、スイスは諸外国とは異なり、国の復興資金を金でまかなう必要がなかった。安定した経済力と財政力の強さから、スイス国立銀行は金準備の量をさらに増やすことに成功。1945年には1,194トンだった金準備は、20年後の1965年に2,703トンにまで増加している。
70年代に国際通貨基金(IMF)が取り決めた協定により、自国の通貨での金の公定価格制が、大半の国で廃止され、金は国際通貨制度の中でその歴史的な意味を失った。しかしスイスはその後も金への投資を続けた。1999年に行われた連邦憲法改正に伴い、やっとスイスは金の束縛から解放されることになる。憲法改正後、スイス国立銀行は初めて金準備の一部売却を許された。それまで金準備は、神聖不可侵とされていた。
その後、金準備の一部を売却すべきだと政界のあらゆるサイドから圧力が掛かった。もはや金信仰は時代錯誤だと思われるようになっていた。インフレの不安要因もない中、金の価格は過去20年来、下降の一途をたどった。もちろん利息など全く付かない。スイスは何の利益も生み出さないお宝を後生大事に抱えているのでは、と疑問を持つ人も多かった。
その結果、1999年にスイス政府と連邦議会はスイスが保有する金準備の半分以上を放出すると決定。金が既に国内の通貨政策の中での役割を失ったかのように思われたからだ。2000年〜05年、そして2007年〜09年にスイス国立銀行は1,550トンもの金を売却した。初回の売却は過去数十年間で金の価格が最も低い時点での出来事だった。そして、スイス国立銀行に残された金はわずか1,040トンとなった。
2008年〜12年、金融危機や新興国からの需要の増加に伴い、金の価格は記録的に高騰した。金の価値が再び上がったことで、スイス国立銀行の金売却を、後の祭りと悔やむ声もあちこちで聞かれた。 危機に備え、為替に左右されないスイスの足場を固めるには、金は最も適した財産保全だと確信した右派の政治家らが2012年に立ち上げた「スイスの金を救うイニシアチブ」は、スイス国立銀行に再び金準備の保有量を増やすよう要求している。
要するに、戦前は金を信奉するあまり多くの金を購入してきたスイスが、70年代以降の金価格下落で、最も安い時期に金を売却してしまい、その反省から金は常に購入すべきだという主張が「スイスの金を救うイニシアチブ」の意見である。
スイスは、フラン相場の上限を1ユーロ≒1.20スイスフランで維持している。スイスの主要な輸出市場であるユーロ圏の単一通貨に対し、フラン高が進行するのを防ぐためだ。スイス中銀は通常、ユーロ安・フラン高が進むとユーロ買いを実施して相場を維持している。このため、「スイスの金を救うイニシアチブ」構想が実現すると、保有資産を売却してユーロを買う中銀の能力が制限され、金融政策の実施が妨げられる。この構想は、一定の金準備保有を義務付けるだけでなく、中銀の金売却も禁じている。構想に賛成派はスイス中銀の政策に対する信認が高まると同時に、フランの価値を守ることができると主張、最新の世論調査では賛否が拮抗している。
可決には26ある州の過半数の賛成表が半分以上を占めることが必要となっている。
金価格にとって、11月30日にスイスの資産の20%を金で保有しなければならないという法律が国民投票によって可決されるなら、当然金価格は高騰するだろう。また、逆になれば短期的に下落する可能性がある。
スイスの金保有量は現在1040トンで世界第7位、スイス中銀の資産の8%であり、義務付けられた割合を満たすためにはスイス中央銀行は、5年以内に金を少なくとも1500トン買い増す必要があるとアナリストは推計している。これによってスイスの金準備が2500トンを越え、米国、ドイツに次世界第3位となる可能性がある。国民一人当たりの金保有量では128グラムとなり、これは国家が保有する金の量だけであり、家庭で保管されている金地金や金貨は入らない。ドイツは42グラム、イタリアは40グラム、フランスが28グラム、アメリカは26グラムとスイスの128グラムは他国を大きく上回っている。
戦後、スイスは諸外国とは異なり、国の復興資金を金でまかなう必要がなかった。安定した経済力と財政力の強さから、スイス国立銀行は金準備の量をさらに増やすことに成功。1945年には1,194トンだった金準備は、20年後の1965年に2,703トンにまで増加している。
70年代に国際通貨基金(IMF)が取り決めた協定により、自国の通貨での金の公定価格制が、大半の国で廃止され、金は国際通貨制度の中でその歴史的な意味を失った。しかしスイスはその後も金への投資を続けた。1999年に行われた連邦憲法改正に伴い、やっとスイスは金の束縛から解放されることになる。憲法改正後、スイス国立銀行は初めて金準備の一部売却を許された。それまで金準備は、神聖不可侵とされていた。
その後、金準備の一部を売却すべきだと政界のあらゆるサイドから圧力が掛かった。もはや金信仰は時代錯誤だと思われるようになっていた。インフレの不安要因もない中、金の価格は過去20年来、下降の一途をたどった。もちろん利息など全く付かない。スイスは何の利益も生み出さないお宝を後生大事に抱えているのでは、と疑問を持つ人も多かった。
その結果、1999年にスイス政府と連邦議会はスイスが保有する金準備の半分以上を放出すると決定。金が既に国内の通貨政策の中での役割を失ったかのように思われたからだ。2000年〜05年、そして2007年〜09年にスイス国立銀行は1,550トンもの金を売却した。初回の売却は過去数十年間で金の価格が最も低い時点での出来事だった。そして、スイス国立銀行に残された金はわずか1,040トンとなった。
2008年〜12年、金融危機や新興国からの需要の増加に伴い、金の価格は記録的に高騰した。金の価値が再び上がったことで、スイス国立銀行の金売却を、後の祭りと悔やむ声もあちこちで聞かれた。 危機に備え、為替に左右されないスイスの足場を固めるには、金は最も適した財産保全だと確信した右派の政治家らが2012年に立ち上げた「スイスの金を救うイニシアチブ」は、スイス国立銀行に再び金準備の保有量を増やすよう要求している。
要するに、戦前は金を信奉するあまり多くの金を購入してきたスイスが、70年代以降の金価格下落で、最も安い時期に金を売却してしまい、その反省から金は常に購入すべきだという主張が「スイスの金を救うイニシアチブ」の意見である。
スイスは、フラン相場の上限を1ユーロ≒1.20スイスフランで維持している。スイスの主要な輸出市場であるユーロ圏の単一通貨に対し、フラン高が進行するのを防ぐためだ。スイス中銀は通常、ユーロ安・フラン高が進むとユーロ買いを実施して相場を維持している。このため、「スイスの金を救うイニシアチブ」構想が実現すると、保有資産を売却してユーロを買う中銀の能力が制限され、金融政策の実施が妨げられる。この構想は、一定の金準備保有を義務付けるだけでなく、中銀の金売却も禁じている。構想に賛成派はスイス中銀の政策に対する信認が高まると同時に、フランの価値を守ることができると主張、最新の世論調査では賛否が拮抗している。
可決には26ある州の過半数の賛成表が半分以上を占めることが必要となっている。
金価格にとって、11月30日にスイスの資産の20%を金で保有しなければならないという法律が国民投票によって可決されるなら、当然金価格は高騰するだろう。また、逆になれば短期的に下落する可能性がある。
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