商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > > 中国で金融不安勃発

中国で金融不安勃発

  • 2013-06-25 (Tue)12:38
  • 近藤雅世
先週19日水曜日に起こったことは、米国連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場委員会(FOMC)を終えたバーナンキ議長が記者会見の席上で、金融緩和のための毎月850億ドルの債券買い取りを年内に縮小し、来年には終了するという、金利操作ではない非伝統的金融を来年1月までの自分の任期中に終了させる道筋を作る意欲を示したことである。この発言は世界を動かした。米国株式市場は、DOW平均株価が火曜日の15318.23ドルから金曜日の14799.40ドルまで▲518.83ドル、▲3.4%下落させ、その一方で、10年物米国債金利を+0.36%、+16.3%押し上げた。ドルインデックスは、+18.22%上昇して世界的なドル高となり、ドル円も▲2.57円2.7%円安となった。BRICs諸国の株価はロシアロイターが▲68.34▲5.2%下落したのを筆頭に、ブラジルボベスパが▲2408.90▲4.9%、香港株価が▲962.57、▲4.5%、上海B株▲6.749、▲2.7%、インドセンセックスが▲449.04、▲2.3%下落した。つまり、バーナンキ議長の発言は、米国債を買わせ、長期金利を押し上げ、景気の悪化を意識させて米国株を下落させ、ドルを借り入れて世界の市場に投資するドルキャリートレードで世界の新興市場投資を行っていた資金を解約して米国に還流させている。ゴールドマンサックスは新興国投資ブームは終わったと述べている。資金が米国に戻ることによりドルを世界的に強くさせ、新興国通貨は軒並み安くなり、今後の新興国諸国の景気悪化を予感させている。

最も気がかりなのは中国の金融不安である。中国では不動産ブームにより土地価格が上昇し続けており、地方政府や不動産ディベロッパーがこの機会を逃すまいとして住宅開発を急いだ。地方政府自身は融資を受けることを禁じられているため、融資平台(プラットフォーム)という別組織を造り、そこに、金融機関から融資させ土地開発に当たっていた。最近では中国の大企業が高い金利を取れるというので、金融機関から融資を受けてそれを融資平台等不動産関連組織に転貸しするという影の銀行(シャドウバンキング)が横行していた。
ところが、先週中国の銀行間取引市場である短期市場で異変が起きた。それまで潤沢に資金を提供していた外国企業が一斉に資金を引き揚げ始めたため、短期金利が高騰したのだ。短期金利の指標となる上海銀行間取引金利(SHIBOR)翌日物は8日、9.581%まで上昇。2007年に算出を始めてから最も高くなった。金利が急騰し始めたのは6月6日からで、8日は急騰前の5日と比べると4.958%上昇した。更に20日SHIBORは1日で7%跳ね上がり、翌日物が13.444%を付けた。短期金利は2週間で3倍近い水準に跳ね上がったことになる。銀行の中では資金繰りに窮し、翌日物金利30%で資金の借り入れを求める銀行もあるという。そんな中で、中国のエバーフライト銀行が、銀行間貸し出しでデフォルトした。短期金利が上昇しているのは、銀行間で信用不安が拡大しているからだ。貸し付ける相手がいつ倒産するかわからなければ、貸し手は少なくなり、借入金利は上昇する。借入できなかった銀行は倒産する。金融機関の信用リスクを判断する指標としての中国の信用保証料率、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)保証料率は21日、1.335%まで上昇し、昨年6月以来約1年ぶりの水準となった。英米格付け会社フィッチ・レーティングスが地方政府の隠れ債務の存在を理由に中国国債の格付けを引き下げた。同社は、貸出債権や私募債などを小口化した「理財商品」と呼ばれる中国の金融商品の足元の残高は13兆元(約210兆円)とみている。「理財商品」とは正規のルートでの調達が難しくなった不動産会社や地方政府などが、通常の銀行の融資規制を介さずに資金を得る手段の1つだ。取引実態が不透明ないわゆる「影の銀行(シャドーバンキング)」問題の核心にあたる。しかし、仮に問題があっても銀行の不良債権などにはカウントされず、開示情報からは必ずしも伝わってこない。それが上海市場での短期金利急騰の一因でもあり、中国の金融システムへの漠然とした不安をかき立てている一因だ。中国でのマネー急拡大は経済統計からも推測される。銀行貸し出しに債券や信託、企業間の直接金融である「委託融資」などを加えた社会融資総量(広義の貸出金)は1〜3月期で6兆1634億元(約100兆円)に達している。中国内総生産(GDP)が前年同期比で7.7%増加する間、社会融資総量は同58%も増えており、中国の実体経済と金融取引の乖離(かいり)が広がっている。

中国経済で最も大きな問題は過剰設備で、すべての市場参加者を困惑させているという。中国経済の成長もかつては需要主導だったが今や供給主導だ。需要がついてこないので、それで国内総生産(GDP)が伸びてもいいことはないという。HSBCの屈宏斌チーフエコノミストは「製造業は内外の需要低迷と在庫増に直面している」とコメントしている。

上海市から南西に約150キロメートル。ウォルマート黄龍店(浙江省杭州市)が中核テナントとして入る大型商業施設は閑散としていた。1階部分は10店近い店舗がシャッターを閉めたままで、営業中の店舗にもほとんど顧客がいない。「午前7時半に開店していて、今日は午後になっても売上高がゼロ。うちは10年前からここで商売しているけれど、去年からずっと赤字だよ」。同店舗内で女性向け宝飾品を販売する男性店主はこう打ち明ける。

先週から金融市場は混乱しているが、更にこの事態に拍車をかけているのは中国政府の態度である。金利の急上昇で短期市場が混乱に陥っているにもかかわらず、人民銀行は20日に手形発行で市場から20億元(約300億円)の資金を吸収。実質的に金融引き締め姿勢を鮮明にしている。英HSBCが20日発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が2カ月連続で節目の50を下回るなど、中国景気は減速傾向を強めている。それでも人民銀が金利上昇を容認したのは、取引実態が不透明な「影の銀行(シャドーバンキング)」に歯止めをかけるためだ。中国国務院は19日開いた常務会議で「貨幣量を合理的な範囲で保持する」と表明。マネーの急速な膨張に警戒感を示したばかり。「問題のある『影の銀行』を整理しようと考えている」(中国銀河証券の孫建波チーフストラテジスト)との見方が出ている。景気減速がみられるといつでも政府は成長が安定的になるような何らかの措置を導入した。だが、新政権は景気刺激よりも改革を優先することが明らかになった。

中国の流動性を測る重要な指標である7日物レポ金利は20日、2.7%と大幅に上昇し10.8%超に達した。これは資金繰りの厳しい銀行が最も高リスクの融資を回収せざるを得ないほど高い金利だ。銀行は人民銀に圧力を緩和するよう求めており、少数ながら利下げを予想していた投資家もいた。代わりに人民銀が命じたのは、習近平国家主席が今週打ち出した「(共産党内に対する)大衆路線教育」キャンペーンの徹底的な実施だった。このキャンペーンには毛沢東時代の政治路線や思想が反映されている。人民銀の周小川総裁は、習氏と良好な個人的関係にあるとされている。

かって、日本も不動産バブルが崩壊して長いデフレに陥った。米国はサブプライムローンという融資不適格者に対する融資を拡大して不良債権を積み上げ、世界的な不況を巻き起こした。その余波はアイルランドやスペインに伝染し、不動産業者への貸付が焦げ付いた銀行に対する政府の支援拡大により、政府自体の財政問題が発生し、欧州債務危機として世界を不景気に追い込み、スペインやギリシャの若年失業率は今でも50%を上回っている。こうした長期の不況を招いたのは、不動産バブルの破裂による不動産業者の倒産とそこに融資していた金融機関の不良債権問題であった。大き過ぎてつぶせない銀行等が倒産することを防ぐため政府や中央銀行が資本投入をし、金融機関の再編成を行い、欧州では銀行同盟等の連帯保証組織を作り、預金保険を整備し、金融機関の倒産する不安から市民を守る仕組みを整備中である。そうした措置が完了するまでには、長い時間がかかるだろう。

今中国が、日本、米国、欧州に続く第4の金融危機に直面しようとしている。

Home > > 中国で金融不安勃発

キーワードで検索
リンク
Feeds
1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311

Page Top