- 2011-05-12 (Thu)18:03
- 近藤雅世
- 金
昨夜サンワード貿易主催の銀座での「東日本大震災チャリティーゴールドサミット」でお話したことだが、銀価格は再び上昇することは無いと思っている。その根拠はバブルはなかなか再生しにくいと思うからである。それでは銀の高騰はバブルだったのか?
2010年の銀の供給は、32,870トンである。7割が鉱山生産、3割がスクラップ等である。一方、銀の工業用需要は15,160トン(46%)である。その他としては、写真フイルム用が2,261トン(7%)、宝飾品が5,194トン(16%)、銀食器が1,565トン(5%)、コインとメダルが3,151トン(10%)である。以上の実需で27,334トン83%を占める。これらの実需は、過去10年間全くと言ってよいほど増えていない。2001年の実需は27,172トンであり、2010年より162トン少ないだけである。
銀価格が上昇してきた理由は、銀の工業用用途が花開いたからだと言われている。太陽電池や半導体用に用途開発が目覚ましいという。その通りであろう。しかし問題はその量である。電子向けにはスパッタリングという手法で生産される。これは銀や金、プラチナ等の円盤を作り、それに電子ビームを照射して反対側の素材に貴金属の粒子を飛ばす方法である。プラチナはコンピューターのハードディスクに多用されているが、鉱山会社としてはそうした用途開発は数字にならない。需要が一ヵ月数百キログラムという単位だからだ。逆にこれほど高価格な素材でも使えるのは、それだけ薄膜にして使うからである。ちなみに5年前の2005年の銀の工業用需要は13,430トンであった。5年間で1,730トン(13%)しか増加していない。しかし、同期間に鉱山生産は19,822トンから22,889トンまで3,067トン(15%)伸びている。銀鉱山の生産の伸びは少ないと言っても、その程度の需要の伸びは十分カバーできる。つまり、銀の用途開発は成り物入りで喧伝されているが、実際に需給を動かすほどのインパクトは無いということである。
それでは、今年1月25日に2,681セントだったNY銀価格は、4月28日4,953.セントに2,272セント85%値上がったのはなぜだろうか?それは、投資用需要が急拡大したためである。この値上がりの前までに銀ETFは2006年3000トン程度だったものが、2010年末に1万トンを超えている。同じ期間に増加した金ETF残高は600トンから1500トンである。銀の増え方の方が金よりも大きい。それは銀の方が安いので、買いやすいためであろう。金が上がるなら銀価格も上がるだろうという思惑と、銀に貨幣価値を見出す見方もあるだろう。ただ、今年に入ってからの銀価格は先物主導の投機熱であった。
金と同様に、地政学的リスクや金融不安からの資産の逃避という意味合いもあるであろうが、金の場合の工業品比率は10%であるのに対し、銀は50%、プラチナは55%、銅に至っては95%である。逆に言えば、宝飾品と投資用は、金が90%、銀は、50%、プラチナは45%、銅は5%である。同じ貴金属の範疇でも、金以外は工業用途、つまり景気に価格が左右される割合は高い。
プラチナは2008年3月2300ドルを超えた。しかし、その後二度とその高みには戻れず、10月には752ドルまで68%下落した。ただ、その間5月に2234.9ドルまで一度だけ戻っている。ということは銀価格も2カ月後に再び40ドル程度までは戻る可能性が無いとは言えないが、当時は原油のバブルは7月まで続いたことを思えば、今とは違うような気もする。
いずれにせよ、需要と供給の側面で、火の無い所に立った煙は、再び息を吹きかけても、なかなか燃え上がらないと思う。銀の場合、32,870トンの供給の内27,334トンは実需であるが、残りの13%5,536トンが投資用である。つまり、実需がそれほど伸びないため、投資用需要の盛り上がりで価格は上昇してきた。もし投資用需要がこれまでと同様かそれ以上の盛り上がりを見せないとすれば、価格は下がらざるを得ず、ペーパーで所有している銀の買い手は反対売買で売り閉じないと利益は確定しないところに先物の怖さがある。
銀価格は再び上昇することは無いだろうと思う。
2010年の銀の供給は、32,870トンである。7割が鉱山生産、3割がスクラップ等である。一方、銀の工業用需要は15,160トン(46%)である。その他としては、写真フイルム用が2,261トン(7%)、宝飾品が5,194トン(16%)、銀食器が1,565トン(5%)、コインとメダルが3,151トン(10%)である。以上の実需で27,334トン83%を占める。これらの実需は、過去10年間全くと言ってよいほど増えていない。2001年の実需は27,172トンであり、2010年より162トン少ないだけである。
銀価格が上昇してきた理由は、銀の工業用用途が花開いたからだと言われている。太陽電池や半導体用に用途開発が目覚ましいという。その通りであろう。しかし問題はその量である。電子向けにはスパッタリングという手法で生産される。これは銀や金、プラチナ等の円盤を作り、それに電子ビームを照射して反対側の素材に貴金属の粒子を飛ばす方法である。プラチナはコンピューターのハードディスクに多用されているが、鉱山会社としてはそうした用途開発は数字にならない。需要が一ヵ月数百キログラムという単位だからだ。逆にこれほど高価格な素材でも使えるのは、それだけ薄膜にして使うからである。ちなみに5年前の2005年の銀の工業用需要は13,430トンであった。5年間で1,730トン(13%)しか増加していない。しかし、同期間に鉱山生産は19,822トンから22,889トンまで3,067トン(15%)伸びている。銀鉱山の生産の伸びは少ないと言っても、その程度の需要の伸びは十分カバーできる。つまり、銀の用途開発は成り物入りで喧伝されているが、実際に需給を動かすほどのインパクトは無いということである。
それでは、今年1月25日に2,681セントだったNY銀価格は、4月28日4,953.セントに2,272セント85%値上がったのはなぜだろうか?それは、投資用需要が急拡大したためである。この値上がりの前までに銀ETFは2006年3000トン程度だったものが、2010年末に1万トンを超えている。同じ期間に増加した金ETF残高は600トンから1500トンである。銀の増え方の方が金よりも大きい。それは銀の方が安いので、買いやすいためであろう。金が上がるなら銀価格も上がるだろうという思惑と、銀に貨幣価値を見出す見方もあるだろう。ただ、今年に入ってからの銀価格は先物主導の投機熱であった。
金と同様に、地政学的リスクや金融不安からの資産の逃避という意味合いもあるであろうが、金の場合の工業品比率は10%であるのに対し、銀は50%、プラチナは55%、銅に至っては95%である。逆に言えば、宝飾品と投資用は、金が90%、銀は、50%、プラチナは45%、銅は5%である。同じ貴金属の範疇でも、金以外は工業用途、つまり景気に価格が左右される割合は高い。
プラチナは2008年3月2300ドルを超えた。しかし、その後二度とその高みには戻れず、10月には752ドルまで68%下落した。ただ、その間5月に2234.9ドルまで一度だけ戻っている。ということは銀価格も2カ月後に再び40ドル程度までは戻る可能性が無いとは言えないが、当時は原油のバブルは7月まで続いたことを思えば、今とは違うような気もする。
いずれにせよ、需要と供給の側面で、火の無い所に立った煙は、再び息を吹きかけても、なかなか燃え上がらないと思う。銀の場合、32,870トンの供給の内27,334トンは実需であるが、残りの13%5,536トンが投資用である。つまり、実需がそれほど伸びないため、投資用需要の盛り上がりで価格は上昇してきた。もし投資用需要がこれまでと同様かそれ以上の盛り上がりを見せないとすれば、価格は下がらざるを得ず、ペーパーで所有している銀の買い手は反対売買で売り閉じないと利益は確定しないところに先物の怖さがある。
銀価格は再び上昇することは無いだろうと思う。