- 2009-08-19 (Wed)17:28
- 近藤雅世
- ゴム
東京工業品取引所のゴム(RSS3号)は8月14日の214円を天井に今日の日中取引では192.7円まで21.3円下落している。自動車の販売が少し回復し、タイヤ需要もようやく底を打った感があるが、それらを先取りして上がっていたゴム価格は反落傾向にある。
大きな原因は二つあり、中国のゴム在庫が急激に増加していることと、米国が米国は中国のタイヤ製品に対して特別セーフガードを実施を検討していることである。今回の特別セーフガードは、オバマ政府が中国に対して初めて発動する緊急輸入制限である。
今年4月20日にアメリカ国際貿易委員会(ITC)が、全米鉄鋼労働組合の要請に応じて、今回の特別セーフガードの発動を提案したことに始まる。全米鉄鋼労働組合は、中国からのタイヤ製品の輸入は、2004年から2008年の間に数量ベースで215%、金額ベースで295%増加し、輸入の急増で米国のメーカーは雇用削減を余儀なくされたとしている。
これに対し、ITCは6月18日、中国産のタイヤの輸入が大幅に増加し、米国市場を混乱させる可能性があるという考えを示した。6月29日米国の国内タイヤ製造業の労働者に対する救済措置の建議を出し、それによると、3.5%から4%までの現行関税に上乗せして、中国製タイヤに対しては今後3年間にわたって関税が追加されることになる。この関税率は、1年目は55%、2年目は45%、3年目は35%。
7月14日ITCは裁定報告書と救済措置の実施建議をアメリカ通商代表部(USTR)に提出した。8月7日、この措置についての公聴会がワシントンで開かれ、24日までに、USTRは中国との話し合いを終え、9月2日までにオバマ大統領にこの建議を提出する予定。オバマ大統領は9月17日までにセーフガードを最終的に発動するかどうかを、決定することになっている。
中国ゴム工業協会タイヤ分会の蔡秘書長を団長とする中国タイヤ業界の代表団は8月3日から8日の日程で訪米し、特別セーフガード発動を見送るよう要請するため、商務省、財務省、労務省などを訪れた。また、中国タイヤ業界は中国政府に対し、「米国から多く輸入している大豆や豚肉などにも高関税を課し、対抗すべきだ」と訴えている。具体的な提案が固まり次第、中国商務部に書面で要請する考えという。
中国政府は、米政府が中国産タイヤ製品に対する特別関税措置の発動を検討している問題で、近くワシントンにZhong Shan商務次官を派遣することを明らかにした。Zhong商務次官は訪米中に国務省、財務省、商務省、通商代表部の幹部らと会談し、中国のタイヤ製品に関税をかけることは、結果的に米国の自動車メーカーと消費者の負担増大につながるとして、特別関税措置の導入をしないよう説得する。
2000年から2007年まで、原料ゴムの値上がりがタイヤメーカーの収益を圧迫した。世界的な金融危機とそれに続く個人消費の低迷により、自動車販売が極端に落ち込み、グッドイヤーをはじめとする米国タイヤメーカーの経営は、破綻寸前まで追い込まれている。
グッドイヤー・タイヤ&ラバーが30日発表した4〜6月(第2四半期)決算は、2億ドルを超える赤字。前年同期は7500万ドルの黒字だった。売上高は25%減の39億ドル。グッドイヤーは2月、経費節減に向け生産能力を今後2年間で1500万〜2500万本縮小すると発表。2008年通年のタイヤ販売は1億8450万本だった。同社は4〜6月に約1700人を削減し、年初来の人員削減数は約5500人に達している。 (つづく)
大きな原因は二つあり、中国のゴム在庫が急激に増加していることと、米国が米国は中国のタイヤ製品に対して特別セーフガードを実施を検討していることである。今回の特別セーフガードは、オバマ政府が中国に対して初めて発動する緊急輸入制限である。
今年4月20日にアメリカ国際貿易委員会(ITC)が、全米鉄鋼労働組合の要請に応じて、今回の特別セーフガードの発動を提案したことに始まる。全米鉄鋼労働組合は、中国からのタイヤ製品の輸入は、2004年から2008年の間に数量ベースで215%、金額ベースで295%増加し、輸入の急増で米国のメーカーは雇用削減を余儀なくされたとしている。
これに対し、ITCは6月18日、中国産のタイヤの輸入が大幅に増加し、米国市場を混乱させる可能性があるという考えを示した。6月29日米国の国内タイヤ製造業の労働者に対する救済措置の建議を出し、それによると、3.5%から4%までの現行関税に上乗せして、中国製タイヤに対しては今後3年間にわたって関税が追加されることになる。この関税率は、1年目は55%、2年目は45%、3年目は35%。
7月14日ITCは裁定報告書と救済措置の実施建議をアメリカ通商代表部(USTR)に提出した。8月7日、この措置についての公聴会がワシントンで開かれ、24日までに、USTRは中国との話し合いを終え、9月2日までにオバマ大統領にこの建議を提出する予定。オバマ大統領は9月17日までにセーフガードを最終的に発動するかどうかを、決定することになっている。
中国ゴム工業協会タイヤ分会の蔡秘書長を団長とする中国タイヤ業界の代表団は8月3日から8日の日程で訪米し、特別セーフガード発動を見送るよう要請するため、商務省、財務省、労務省などを訪れた。また、中国タイヤ業界は中国政府に対し、「米国から多く輸入している大豆や豚肉などにも高関税を課し、対抗すべきだ」と訴えている。具体的な提案が固まり次第、中国商務部に書面で要請する考えという。
中国政府は、米政府が中国産タイヤ製品に対する特別関税措置の発動を検討している問題で、近くワシントンにZhong Shan商務次官を派遣することを明らかにした。Zhong商務次官は訪米中に国務省、財務省、商務省、通商代表部の幹部らと会談し、中国のタイヤ製品に関税をかけることは、結果的に米国の自動車メーカーと消費者の負担増大につながるとして、特別関税措置の導入をしないよう説得する。
2000年から2007年まで、原料ゴムの値上がりがタイヤメーカーの収益を圧迫した。世界的な金融危機とそれに続く個人消費の低迷により、自動車販売が極端に落ち込み、グッドイヤーをはじめとする米国タイヤメーカーの経営は、破綻寸前まで追い込まれている。
グッドイヤー・タイヤ&ラバーが30日発表した4〜6月(第2四半期)決算は、2億ドルを超える赤字。前年同期は7500万ドルの黒字だった。売上高は25%減の39億ドル。グッドイヤーは2月、経費節減に向け生産能力を今後2年間で1500万〜2500万本縮小すると発表。2008年通年のタイヤ販売は1億8450万本だった。同社は4〜6月に約1700人を削減し、年初来の人員削減数は約5500人に達している。 (つづく)
オバマ大統領の決断によっては、この問題はタイヤだけでなく、広く米中間の貿易戦争や保護主義の動きにつながる可能性がある。
世界的な景気回復局面から、自動車も補助金の助けを借りて販売が上向き、日本のタイヤメーカーの生産も、ようやく底を脱して上向いてきた。そのため東京ゴム価格は7月13日の153円から8月13日には209.9円と、一ヶ月の間に56.9円約37%も急上昇してきた。おそらくセーフガードの問題は米国向タイヤ輸出に影響を与え、その分日中のゴム需要が落ちるだろう。従ってゴム価格は調整局面に入ると思われる。
景気の先行きは必ずしも安心できない。自動車や米国の住宅販売も政府の補助金が切れる年末あたりには再度落ち込むという見方も強い。17日米ミシガン大学消費者マインド指数が予想外の下落を見せ米国株価は2%、上海は3.3%下落した。米国労働指標についても、米国の失業保険は26週間で打ち止めとなる。7月の失業率が6月の9.5%から9.4%に下落したのは、失業者が減ったのではなく、失業保険の申請者が減ったのだという解釈がある。同様に、非農業就業者数の減少が6月の▲443千人から▲247千人に減ったという数字は、実際には完全に失業して、職も無く失業保険も無い人々がこれらの統計から除外され、見かけ上の減少だという。
こうした景気の回復の幻想を打ち砕く指標が投資家に警戒感を抱かせ、株価の調整が出ているが、商品についても同じ動きが出ると思われる。9月17日にオバマ大統領がセーフガードを発動するかどうかは、一つの試金石となるだろう。米中間の貿易全体に軋み(きしみ)が出ると、お互いに保護主義的政策が採られ、世界景気全体に及ぼす影響は大きいと思われる。
世界的な景気回復局面から、自動車も補助金の助けを借りて販売が上向き、日本のタイヤメーカーの生産も、ようやく底を脱して上向いてきた。そのため東京ゴム価格は7月13日の153円から8月13日には209.9円と、一ヶ月の間に56.9円約37%も急上昇してきた。おそらくセーフガードの問題は米国向タイヤ輸出に影響を与え、その分日中のゴム需要が落ちるだろう。従ってゴム価格は調整局面に入ると思われる。
景気の先行きは必ずしも安心できない。自動車や米国の住宅販売も政府の補助金が切れる年末あたりには再度落ち込むという見方も強い。17日米ミシガン大学消費者マインド指数が予想外の下落を見せ米国株価は2%、上海は3.3%下落した。米国労働指標についても、米国の失業保険は26週間で打ち止めとなる。7月の失業率が6月の9.5%から9.4%に下落したのは、失業者が減ったのではなく、失業保険の申請者が減ったのだという解釈がある。同様に、非農業就業者数の減少が6月の▲443千人から▲247千人に減ったという数字は、実際には完全に失業して、職も無く失業保険も無い人々がこれらの統計から除外され、見かけ上の減少だという。
こうした景気の回復の幻想を打ち砕く指標が投資家に警戒感を抱かせ、株価の調整が出ているが、商品についても同じ動きが出ると思われる。9月17日にオバマ大統領がセーフガードを発動するかどうかは、一つの試金石となるだろう。米中間の貿易全体に軋み(きしみ)が出ると、お互いに保護主義的政策が採られ、世界景気全体に及ぼす影響は大きいと思われる。
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