- 2014-09-02 (Tue)10:12
- 近藤雅世
- 経済動向
商品価格は全般的に低迷している。逆に言えば、何かのきっかけがあれば価格を上げたがっている状況である。ただ、その何かのきっかけがなかなか無い。あり得るのは地政学的リスクの緊張が高まったり、ハリケーンが襲来するなどの天候異変が生じることであるが、メキシコ湾には日本時間9月2日午前7時時点では「Five」と称される熱帯低気圧がメキシコユカタン半島に向かっているだけである。米国は今日も平穏無事な天候である。
地政学的リスクは、イスラエルはガザ地区のハマスと期限なしの停戦協定が締結され一段落した。
シリアとイラクの国土の3分の1を占領した「イスラム国」は「IS」と名を変えて、勢力を拡大している。当初5000人と言われたアルカイダ系の残党は、刑務所を開放して囚人を仲間に入れたり、シリアの反アサド政権の勢力から6000人を調達したりして、今や5万人になったという。またイラクのモスルの中央銀行を襲って獲得した資金を豊富に持っており、今のところ勢力は拡大しているようである。米国は空爆を始めたが、大きな成果は上げられないでいる。ロイター電によれば、イスラム国の戦闘員の多くは、米軍による空爆のターゲットになりやすい武装車両を捨て、住民の中に紛れ込もうとしている。恐ろしい存在であることに変わりはないものの、以前に比べるとかなり慎重に行動するようになっているという。米軍がイラクでの空爆に踏み切って約3週間。同国最大のダムであるモスル・ダムは、イラク軍とクルド人民兵組織がイスラム国から奪還した。また8月31日には、数千人の住民がイスラム国によって包囲されていた北部都市アメルリもイラク軍が制圧下に置いた。イスラム国を撃破するには、隣国シリアでの拠点に対する空爆もほぼ確実に必要だが、現地では米情報機関の活動が手薄であることから、多くの民間人が巻き添えになるリスクもある。アサド政権を認めていないオバマ米大統領は、反アサド政権と言う意味では「イスラム国」と立場を同じにしており、複雑な中東情勢は一筋縄の解決は難しい模様である。
ウクライナでは、1日にウクライナと親ロシア派の協議がベラルーシの首都ミンスクで行われ、捕虜交換等が成立し、5日に二度目の会議が開催されることとなった。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ南部および東部の「国家としての地位(statehood)」に関する緊急会合の開催を呼びかけた。ウクライナ政府軍は親ロシア派と戦闘を行っているが、ロシア軍は装甲車両等がウクライナ領に侵入している衛星写真が米国によって公開されている。ウクライナ東部には工業地帯やチェルノブイリ原子力発電所の残骸があり、ウクライナ政府としては、手放せない一帯である。ドイツメルケル首相は、ウクライナポロチェンコ大統領に対して、連邦制の導入を提案しており、双方の落としどころはこうした自治州を作ることではなかろうか。
北アフリカのリビアでは、イスラム系の勢力が首都を支配下に置いて独自の政権運営を始めたのに対し、対立する勢力が主導する暫定政府は、首都トリポリから東に1000km離れたとブル区に政治機能を移し、9月1日、議会を開いて新たに首相を指名した。リビアでは、こうして対立する政治勢力にそれぞれの武装勢力が肩入れする形で、ことし7月以降、国内各地で戦闘が激しくなっている。ただ、1年余り輸出できなかったリビアの輸出が再開され、少なくとも貯まっていた在庫の輸出は行われるようになっている。リビアは2012年末には日量150万バレルを生産していたが、今年7月の生産量は、43万8千バレルに落ち込んでいる。
以上の主要紛争地域では、解決の糸口が模索されているが、対立は激化する様相となっている。ただ世界大戦になるような問題ではなく、局地的な戦闘で紛争が拡大する様相は無い。それが、商品価格に対する地政学的リスクとしては弱いものとなっている。
低迷する商品価格は、それぞれに需給の緩和を抱えつつ、今週は数々の経済指標が公表されるため、それに細かく反応するであろうが、大きな動きを作り出すには何かのきっかけが必要とされている。
地政学的リスクは、イスラエルはガザ地区のハマスと期限なしの停戦協定が締結され一段落した。
シリアとイラクの国土の3分の1を占領した「イスラム国」は「IS」と名を変えて、勢力を拡大している。当初5000人と言われたアルカイダ系の残党は、刑務所を開放して囚人を仲間に入れたり、シリアの反アサド政権の勢力から6000人を調達したりして、今や5万人になったという。またイラクのモスルの中央銀行を襲って獲得した資金を豊富に持っており、今のところ勢力は拡大しているようである。米国は空爆を始めたが、大きな成果は上げられないでいる。ロイター電によれば、イスラム国の戦闘員の多くは、米軍による空爆のターゲットになりやすい武装車両を捨て、住民の中に紛れ込もうとしている。恐ろしい存在であることに変わりはないものの、以前に比べるとかなり慎重に行動するようになっているという。米軍がイラクでの空爆に踏み切って約3週間。同国最大のダムであるモスル・ダムは、イラク軍とクルド人民兵組織がイスラム国から奪還した。また8月31日には、数千人の住民がイスラム国によって包囲されていた北部都市アメルリもイラク軍が制圧下に置いた。イスラム国を撃破するには、隣国シリアでの拠点に対する空爆もほぼ確実に必要だが、現地では米情報機関の活動が手薄であることから、多くの民間人が巻き添えになるリスクもある。アサド政権を認めていないオバマ米大統領は、反アサド政権と言う意味では「イスラム国」と立場を同じにしており、複雑な中東情勢は一筋縄の解決は難しい模様である。
ウクライナでは、1日にウクライナと親ロシア派の協議がベラルーシの首都ミンスクで行われ、捕虜交換等が成立し、5日に二度目の会議が開催されることとなった。ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ南部および東部の「国家としての地位(statehood)」に関する緊急会合の開催を呼びかけた。ウクライナ政府軍は親ロシア派と戦闘を行っているが、ロシア軍は装甲車両等がウクライナ領に侵入している衛星写真が米国によって公開されている。ウクライナ東部には工業地帯やチェルノブイリ原子力発電所の残骸があり、ウクライナ政府としては、手放せない一帯である。ドイツメルケル首相は、ウクライナポロチェンコ大統領に対して、連邦制の導入を提案しており、双方の落としどころはこうした自治州を作ることではなかろうか。
北アフリカのリビアでは、イスラム系の勢力が首都を支配下に置いて独自の政権運営を始めたのに対し、対立する勢力が主導する暫定政府は、首都トリポリから東に1000km離れたとブル区に政治機能を移し、9月1日、議会を開いて新たに首相を指名した。リビアでは、こうして対立する政治勢力にそれぞれの武装勢力が肩入れする形で、ことし7月以降、国内各地で戦闘が激しくなっている。ただ、1年余り輸出できなかったリビアの輸出が再開され、少なくとも貯まっていた在庫の輸出は行われるようになっている。リビアは2012年末には日量150万バレルを生産していたが、今年7月の生産量は、43万8千バレルに落ち込んでいる。
以上の主要紛争地域では、解決の糸口が模索されているが、対立は激化する様相となっている。ただ世界大戦になるような問題ではなく、局地的な戦闘で紛争が拡大する様相は無い。それが、商品価格に対する地政学的リスクとしては弱いものとなっている。
低迷する商品価格は、それぞれに需給の緩和を抱えつつ、今週は数々の経済指標が公表されるため、それに細かく反応するであろうが、大きな動きを作り出すには何かのきっかけが必要とされている。
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