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市場とは何か その30

年初にフラッシュクラッシュが起きた。米国市場において新年の薄商いの中で、アップル社の販売が予想以下であったため、米国株価が急落し、ドル安/円高、豪ドル高、ポンド高、金高等が一瞬だが発生した。その後反落したとはいえ、一日の変動としては大きなものであった。こうした市場の瞬時の大幅な変動はコンピューターによるトレードが多くなるにつれ、今後も時折現れるだろう。AIによる判断は一律になりやすく、一方向に同時に大量の売りないし買いが発生し、類が友を呼ぶことになる。人間が気づいて反応するまでに、大きな損失が発生しやすくなっている。またネット取引業者等は一時的に多額の証拠金不足が生じることがあるものと思われる。2015年1月15日に生じたスイス中央銀行による為替介入の停止により、一日でスイスフランが2割以上暴騰した時、世界の多くの為替取引業者が倒産した。倒産した理由は、一日の大きな変動で巨額の損失を被った顧客が資金不足に陥り、予め顧客から預かっていた取引証拠金が不足してしまい、為替取引業者は損失を顧客から取り立てることができなかったためである。この場合のように、顧客の損失が多額になり証拠金が不足した場合でも、受託取引員はそれを顧客に成り代わって銀行間取引や取引所に対しては損失額を支払わなければならない。幸い今回は1日で騒動は終わったため、冷や汗をかいたのはたった一日だけであった。しかし、投資家はこうした価格のスパイクが起きた時の対処はいつもしておかねばならない。まず肝心なことは、商いが薄い時は一時的にポジションを整理して市場から撤退すべきである。ファンドマネージャーは11月のサンクスギビングホリデイからクリスマス・年初まで優雅に地中海等の温暖な場所でバカンスを採ることになっている。大手ファンドのファンドマネージャーはポジションを整理してスクウェアにしてから休暇を取ることが多い。11月末にファンドの決算期が多いのもそのせいだと思われる。こうした大手プレーヤーが市場からいなくなる時はボラティリティー。つまり価格変動は大きくなる。
もう一つ注意すべきは、大きなイベントがある直前にはポジションを整理すべきである。今週は米中貿易交渉が行われる。この結果がどうなるかは誰にもわからない。市場に好意的になるかどうかは一種の賭け事である。サイコロの目を占うギャンブルと投資が違うのは、サイコロの目は予想がつかないが、投資は先の見通しを立てることができる点にある。その意味で投資は決してギャンブルではない。いちかばちかの賭けをするのは投資とは呼ばないのである。

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