商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > マーケット全般 > 香港について(その10)

香港について(その10)

前回香港の話題の最後といいながら、横道に逸れてしまった。今回こそ最後の話題で『取引は信用第一である』というエピソードだ。筆者は非鉄金属部門の代表として香港に駐在していた。香港には非鉄金属総商会という団体があり、その董事長はセントラルの小さなビルの二階に、小汚いオフィスを構える劉(ラオ)さんであった。赴任当初から日本から来る訪問者の大半は彼のところに連れて行き、香港の非鉄金属事情などをヒヤリングする相手であった。劉さんからもいくつかのオッファーをもらった。その一つが、北朝鮮産の亜鉛地金の日本向け輸出取引であった。それを本店につなぐと、買うことになった。
当時マカオに北朝鮮の代表部があり、おそらく劉さんはそこから取引をつないだものであろう。無事に日本向けのデリバリーが終り、当時亜鉛価格が急騰していたので、本店は大いに利益を上げたものである。
劉さんは、めったに日本人のオフィスに来ることは無い。ところが、ある日突然劉さんが私のオフィスに訪ねてきた。珍しいこともあるものだと応対すると、にこにこと笑いながら世間話の後で、『ところで近藤さん、あなたはあの北朝鮮の亜鉛地金を買った時に、その後亜鉛価格が上がると思っていたか』と問うてきた。若くて勢いのあった私は、胸を張って、それは天下の大商社です。世界中に情報網を持っており、おかげ様であの取引では大きな儲けを挙げさせていただきました。と返答し、劉さんは「ああそうですか、それは良かった」とにこにこと笑ってそのまま帰っていった。しかし、その後の5年間、劉さんは二度と私においしい話はくれなかった。いつも日本からの来客があるたびに会いにいくので、にこにこと応対してくれ、また、劉さんの弟が管轄する少量のスクラップの取引は続いていたが、大口の案件は私が香港を去るまでいただけなかった。そこで身に染みて知ったのは、香港華僑と取引する場合は、お互いに儲けを分け合わないといけないという厳しい原則があるということである。自分だけが儲けてはいけないのである。ましてや人を騙して儲けた場合は、その人は村八分に会い信用を失うことになる。ひとたび一人の華僑からは相手にされなくなると、他の華僑からも相手にされなくなるのである。それは私がいかに日本を代表する企業に勤めていようと関係ない、個人の話しであった。華僑が取引するのは、企業相手ではなく、個人対個人の取引であった。私が勤める企業の問題ではなく、私が信用できる人間かというのが判断基準であった。それに気づいたのは、もう香港を離れる頃であった。もし、劉さんに対してあんな大口をたたかずに、利益は折半という華僑との取引の大原則を守っていれば、私は香港駐在時代にもっと更に大きな実績を上げることが出来たであろう。

Home > マーケット全般 > 香港について(その10)

キーワードで検索
リンク
Feeds
1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311

Page Top