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香港について(その1)

香港は市場の権化である。筆者は英国の統治下の香港に6年間住んだことがある。中国返還前で、天安門事件を香港のテレビで見て、町が騒然となるのを見てきた。
中国について、多くの人が十人十色の表現をするのを、多くの中国帰りの日本人を接待しながら聞いていた。視覚障害者が象を触って印象を語るのと同じで中国には数多くの側面がある。
私の肌で感じたこと香港は、自由で何でもできる市場であり、才覚さえあれば大金持ちになるチャンスがゴロゴロと転がっている所であった。小平は毛沢東が大きな政治的な誤りを犯すところを周恩来と共に、黙って見守ってきた人であり、たいへんな慧眼の持ち主であり、毛沢東亡き後は四人組を葬り、「黒猫でも白猫でもネズミを捕る猫は良い猫だ」と言い放ち、金持ちになれるのなら、遠慮なく金儲けをしなさいという社会主義とは思えないようなスタンスの政治家であった。それだけ当時の中国は疲弊しており、個人所得が低かったため、まずは人民が金持ちになることが喫緊の課題だと思ったのであろう。そこで、小平は深圳や天津等に経済特区を作り、資本主義の企業を優遇して誘致した。そんな中で99年の租借期限が切れる香港とマカオを中国に返還されることになっても、『一国二制度』という賢明は妥協的な措置で、自由で市場の権化である香港を生かす政策を採った。小平は香港の存在意義を見事に見抜いていた。
中国人に香港の役割とは、中国の企業や地方政府が、代表者を香港に送り込み、本土から輸出する商品のキックバックを香港に落とすという役割を担った。中国本土の幹部が香港を訪問すると両手に余る家電製品等を持って帰った。香港本土の共産党幹部にとって、香港はなくてはならない商売の仲介地であった。当時は中国本土の企業と直接取引をするよりは、香港経由で資本主義の法制度の下で中国と取引した方が、外国人にとってははるかにやりやすかった。そのため、世界の巨大な商人が寄り集まる場所となり、香港をハブとして中国や韓国、北朝鮮、フィリッピン、マレイシア等との大規模な取引が行われていた。華僑の膨大で安全なネットワークにより信用のおける取引が香港では行われていた。

またもう一つの大きな香港の役割は、所得税が最大16%までの累進課税であり、香港の税務署にはほとんど人がいないので、香港の人々はほとんど税金を払っていなかった。筆者の駐在中に、所得税が18%から16%に引き下げられたので、香港政庁の人になぜ低い税率を下げるのか聞いた所、税率を下げれば下げるほど税収が増えて、香港政庁はその予算を使いきれないと優雅なことをおっしゃった。それだけ、世界中から香港に資金が集まってほぼ無税の収益を享受していたものである。香港の人はどんなに貧乏な人でも当時の金で2千万円のキャッシュは誰もが持っていると言われたものである。彼らの考える利益というのは、日本人がイメージするものとは一桁単位が異なる。筆者は独りで、全世界の非鉄金属の駐在員の誰よりも多くの収益を上げていた。それだけ大きな利益の商売のチャンスがある土地であった。(以下次号)

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