商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > マーケット全般 > 市場とは何かその14

市場とは何かその14

 日本のコメ先物市場の役割
2011年8月8日上場された日本のコメ市場は、大阪堂島商品取引所に場所を移されて細々と試験上場を7年間続けている。そろそろ、その命運も尽きそうである。その昔、『赤いダイヤ』という梶山季之著の本が小豆取引について書かれたことがある。その冒頭場面で主人公は冬の房総半島の海に足をつけて、その年の夏の北海道帯広地帯の天候を予測し、冷夏になりそうだと買いを入れるという非常に印象深い場面がある。穀物等の商品投資を行う場合、その生育状況は価格変動要因として大きな意味を持つ。トウモロコシや大豆の場合は、米国中西部や南米のブラジルやアルゼンチンの耕作地帯に雨が降るかどうかが大きな問題となる。ことに、北米の7月上旬の気候は生育に大きく影響する。それは、雄蕊と雌蕊が受粉する時期であるからで、7月4日前後の2週間に降雨が無くて干ばつとなると受粉できず、実がならないことになる。シカゴ商品取引所のブローカーは天気予報に耳を澄まし、米国中西部の天候に一喜一憂する。
 日本のコメの場合は水田耕作なので、干ばつの被害というものには無縁である。しかし、洪水となると水田が一気に押し流されて大きな減収となる。毎年九州や中国地方などに洪水の被害を及ぼす。中でも2015年9月の栃木県の洪水では河川が増水して田畑が水没してしまった。この時日本のコメ市場は高騰した。2015年9月2日の10,890円/キロが10月30日には12,100円まで+1,160円、+10.6%上昇している。投資家はテレビ中継で、栃木県の河川が氾濫して電柱が水の中から突き出ている映像を見れば、コメを買いに出ることは十分可能であった。こうしたエキサイティングな場面は、他の商品や株式投資にあるだろうか? 日本で作られている作物だからこそ得られる市場への臨場感である。
 また日本人にとってコメは消費量が減ったとはいえ未だに主食である。消費者は、コメの値上がりリスクに保険を掛けるために、先物市場のコメを積極的に買うべきである。スーパーマーケットのコメ価格が高騰した場合、先物で買っているコメが収益を産んで利害は相殺される。
 さらにコメ生産農家は、江戸時代の商人のように、コメ先物市場で生産しているコメを売却すべきである。生産者は自分が生産しているものの需給を肌身で感じている。今年は不作だから価格が上がりそうなのか、豊作だから価格は下がりそうなのかをどこかの時点で感じて、豊作になりそうであれば、先物市場で生産量の一部を売却し、価格下落リスクをヘッジすべきである。これは米国のみならず、ブラジルのコーヒー農園でも、豪州の小麦農家、中国東北部のトウモロコシや大豆農家ですら当たり前に行っている保険つなぎである。
 日本の場合は農協が農家から買い上げる前渡し金という制度が農民のコメ価格を決めている。名前は前渡し金であっても、その後の清算は無い。農協は集めたコメを独自の采配で売却する。こうしたコメ価格の不透明性にコメ仲買業者は不信感を抱き、政府は何度もコメ流通市場というものができて公正な価格を形成しようと努力してきた。しかし、現物市場であるため、供給者の農協が意のままに価格を操ることができる。買い手が多数で売り手が独りの場合、売り手の方が強い。従って、今では大阪堂島商品取引所のコメ価格を支持しているのは、もっぱらコメ仲買業者である。一部の農民は農協ではなく直接販売したり、輸出を手掛ける先鋭な農家もあるが、その規模は小さく、農協は依然としてコメの独占供給体制を保持している。当然、農協は先物市場には参入しない。自分で価格を決められる方が有利であるからだ。ということは、毎日コメを買っている消費者にとって、コメ価格は不利に決められているということである。豊作でもコメ価格は下がらず、一方で実際のコメ生産者の手取りは少ない。だから農家はもうからないコメの生産をやめて補助金がたっぷり出る飼料用コメや野菜等の作物を作り始めている。コメの消費量は毎年減少していることも、また、政府の莫大な補助金が農政にばらまかれている現状も、なかなか変わらない。

Home > マーケット全般 > 市場とは何かその14

キーワードで検索
リンク
Feeds
1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311

Page Top