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欧州のテーパリングは日本にも当てはまる

先週欧州で起きたことは日本にも当てはまる。ユーロ圏の景気拡大はすでに5年目に突入し、高止まりしていた失業率も(まだ高いが)低下に転じている。欧州中央銀行(ECB)の大胆な金融緩和やユーロ安が進行し、輸出の拡大が続いているだけでなく、最近では内需も底堅さを増している。低賃金ながらも雇用が増加したことで、個人消費が順調に拡大し、債務危機の鎮静化で行き過ぎた財政緊縮路線が軌道修正され、財政面での足枷も無くなってきた。金融緩和の効果浸透で企業の資金調達環境が改善し、設備投資も伸びを強めている。景気が腰折れする兆しはみられない。
 こうした中で6月初旬に行われたECB理事会では、これまで「下振れ方向にある」としていた景気のリスク判断を「上振れと下振れが拮抗している(中立)」に変更した。「政策金利は相当の期間、弁財と同じかそれを下回る水準にとどまる」との金融政策の先行きに関する指針(フォワード・ガイダンス)から「それを下回る」との文言を削除し、追加利下げの可能性を排除した。
 ECBはデフレ危機に対処するなか、2014年央に政策金利の一部をマイナス圏に引き下げ、2015年春には国債などの資産買い取り策を開始した。これまでのユーロ圏全体で2兆ユーロ(約250兆)近くの資金を供給し、少なくとも年内いっぱいは買い入れを継続することを約束している。ただ、景気の下振れリスクが後退してことを受け、来年には大規模な金融緩和からの「出口」を開始するのではないかとの見方が広がっている。先日の景気判断の引き上げはこうした地ならしの一環で、秋にも来年以降の段階的な緩和縮小(テーパリング)を決定するとの見方が有力視されている。

 こうした背景から先週のドラギECB総裁のポルトガルでの講演内容を受けてユーロドルは大きく跳ね上がった。ユーロドルは、6月20日の1.1133から6月29日には1.1439まで+0.306ユーロ、2.7%ドルに対して上昇した。ユーロ円で言えば124.05円から128.30円と+4.25円、+3.4%のユーロ高、円安である。
これは、いずれテーパリングがあるということやゼロ金利からの脱却が来年に行われるだろうという予想が、利上げを見込んで逸早くユーロ債券の長期金利を押し上げ、通貨ユーロを買う動きが広がったためである。

一方3日に発表された日銀短観では幅広い業種で業績改善が進んでいる様子がうかがえた。海外景気や個人消費の回復が背景にあり、2017年度の収益や設備投資の計画も堅調だ。機械や素材など大企業製造業の景況感改善が目立った。アジアからのIT(情報技術)やインフラ関連の需要が高まったほか、欧米の先行き不透明感がやや和らいだためだ。景気回復の裾野は中小企業や非製造業にも広がり、個人消費の回復や都市部の再開発で国内需要も底堅さを増している。日銀も「景気の好循環がはっきりしてきた」と強気な見方を示す。景況感が「良い」と答えた割合から「悪い」との回答割合を引いた短観の業況判断指数(DI)は全規模全産業でプラス12。2014年3月調査と並び、リーマン危機後で最高となった。
欧州も日本も消費者物価指数だけが目標を達成する見込みが無いが、景気の回復は実感できるものに変わっている。従って日銀も近い将来ECBやFRBに歩調を合わせ金融緩和の縮小やマイナス金利からの脱却を口に出す可能性がある。黒田総裁の発言次第では、欧州で起きた長期金利の上昇と円高が出現するかもしれない。

また本日付けの日本経済新聞グローバルOutlookで「30年目のブラックマンデー再来か」という記事が載っている。あり得るシナリオとして一読されたい。内容をかいつまんでいうと、1987年のブラックマンデーは、ベーカー米財務長官がシュレジンガー西独連銀副総裁と金融政策をめぐって対立し、マルクが急騰、米国の双子の赤字がドル売りを誘い、ドルが急落、米国株も急落したというもの。今月7日〜8日にかけてハンブルグで20カ国・地域首脳会議(G20)が開催されるが、トランプ大統領とメルケル首相が対立している。トランプ政権の経済運営への信認低下が双子の赤字と同等の効果を生み、ドル安となり、米国株が急落するかもしれないというシナリオである。

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