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プラチナ価格は燃料電池車の販売動向次第 

  • 2015-06-02 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
本日の週刊ゴールドに書いたことであるが、プラチナの将来の価格について強気のレポートが二つあったので、掲載した。ただし、どちらも燃料電池車が今後売れることが大前提だという。一つの記事は南アのアングロプラチナムのCEOがプラチナの将来は燃料電池にかかっていると述べているものである。この記事には燃料電池車が売れずに、電気自動車やハイブリッド車等に変わると欧州の自動車触媒用プラチナ需要が頭打ちとなり、年間100トン強が70トン強まで減少するという。逆に燃料電池車が今後の自動車の主流になれば、2050年までに自動車触媒用のプラチナ需要だけで、200トンを超える需要が見込まれるという。現状のディーゼル車に使われるプラチナの5〜10倍を使用するためだという。

もう一つのレポートはトヨタが燃料電池車を米国でも商業販売を始めたことを述べ、電気自動車との競争でどちらが勝つかを述べている。電気自動車の欠点は二つあり一つは走行距離が一回の充電で約400キロしか走れないが、燃料電池車は一回の水素充填で500〜600キロ走行できるという。もう一つの電気自動車の欠点はバッテリーが寒冷地や極端に暑い地域では機能が劣化する点であるという。その点燃料電池は気温による劣化は無いという。問題は、充電気スタンドと水素スタンドのどちらのインフラが早く整うかであるという。またリチウムイオン電池に使うリチウムはチリに8割の資源が偏在し、燃料電池の水素と酸素の化学反応を促進するプラチナ触媒に使われるプラチナは南アとロシアに偏在する点である。
このレポートでは既存の自動車触媒には一台あたり3〜7gのプラチナが使われているが、燃料電池には1台当たり30gのプラチナが必要となり、燃料電池車が主流になれば10倍近くのプラチナ需要が創出されるという。従っていまのプラチナ価格は安いが、いずれ高騰する可能性を十分秘めているとしており、金とプラチナは過去28年間で2011年と12年等ほんのわずかな期間だけ金価格がプラチナ価格を上回っただけで、現在のプラチナ価格は安過ぎるという。それもこれも、取引高が少ないためであるが、燃料電池車し第では、取引高が少ないだけにプラチナ価格は急騰してもおかしくないという。


株式会社 コモディティー インテリジェンスでは毎日発行している週刊ゴールド(月)週刊経済指標(火)週刊穀物(水)週刊原油(木)週刊テクニカル分析または週刊CX(金)週間展望(金)月二回のコメ(第二・第四木曜)の単号(一枚)売りを始めました。詳しくは弊社サイトをご覧ください、(http://commi.cc/)

プラチナ価格予測とファンドの建て玉の動き

  • 2015-04-07 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
本日の週刊ゴールドにグラフ入りで書いてあることであるが、バークレイズキャピタルによれば、今年2015年のプラチナ価格は平均1239ドルであるという。またパラジウム価格は平均805ドルであるという。直近のNYプラチナ価格は1154.5ドル、NYパラジウム価格は746.2ドルなので、今後これよりは上昇すると見ているが、2009年7月以来の安い水準になるという。ただ、プラチナの現物需給は▲9.7トンの供給不足が続くという。プラチナ価格が低迷するのは、中国の宝飾品需要が景気減速で落ち込み、プラチナ需要が悪くなっているためだという。そう言われれば、中国の海関総署によるプラチナ輸入通関統計によればは2月は2.84トンとなり、前月の5.30トン、2014年の月間平均6.37トンを大幅に下回っている。またパラジウムも2月の中国の輸入量は1.03トンと1月の1.42トン、前年月間平均の、1.97トンを下回っている。中国は国策で大気汚染対策を最重要課題の一つに挙げているので、触媒向けの減少というよりは、プラチナ・パラジウムの宝飾品需要が減退しているものと思われる。

 米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した3月31日までの週の大口建玉(ファンドの建玉)は、顕著な動きとしては以下があった。

<取組高> 取組高が最も多い銘柄は、原油の263万枚で先週から+3万枚増、次いでトウモロコシの180万枚で前週と変わらず、砂糖の110万枚の+4万枚増、大豆の99万枚の1万枚増となる。金は▲9万枚減の57万枚、小麦は+5万枚増の55万枚である。金融商品では10年物米国債が▲28万枚減の323万枚、5年物米国債が▲10万枚減の212万枚、長期米国債が▲1万枚減の57万枚と国債が多く、ユーロは5千枚増の59万枚であるが、円は▲2万枚減の20万枚、S&P500は変わらずの16万枚である。

<買い残> 買い残が多いのは、原油前週比+2千枚増の53万枚、トウモロコシの▲3万4千枚減の34万枚、天然ガスの+1万3千枚増の24万枚、金の▲4千枚減の18万枚、+4千枚増の大豆の18万枚、小麦の▲1万21千枚減の10万枚であり、金融商品では、2年物米国債の+9千枚増の41万枚、5年物米国債の▲3千枚減の38万枚、+1万6千枚増の10年物国債の38万枚である。

<売り残> 売り残が多いのは、前週比+1万8千枚増の天然ガスの47万枚、原油の▲1万5千枚減の26万枚、トウモロコシの▲2万4千枚減の268万枚、砂糖の+4千枚増の26万枚、大豆の+8千枚増の18万枚、小麦の▲5千枚減の16万枚、金の▲1万8千枚減の9万枚で、金融商品では、米10年物国債の▲5千枚減の47万枚、5年物国債の▲2千枚減の40枚、2年物国債の▲3万7千枚減の27万枚、ユーロの▲4千枚減の27万枚、長期米国債の変わらずの9万枚、円の▲5千枚減の9万枚である。
<ネット買い残> ネット買い残が多い商品は、原油の前週から+1万7千枚増加して26万枚、金の+1万千枚増加の8万9千枚、トウモロコシの+1万枚増の7万78千枚、ガソリンの+1枚増の6万3千枚、銀の+9千枚増の4万1千枚、金融商品ではドルの+2千枚増の7万3千枚、2年物国債の+4万5千枚増の14万枚、S&P500の▲2千枚減の8千枚である。
ネット買い残がマイナスなものは、天然ガスの前週比▲6千枚減の▲22万枚、小麦の▲6千枚減の▲5万3千枚、砂糖の▲1万3千枚減の4万8千枚、金融商品では長期米国債の+2千枚増の▲4万7千枚、円の変わらずの▲4万7千枚である。

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ジョンソン・マッセイ社のプラチナ需給予測

  • 2014-12-01 (Mon)
  • 近藤雅世
  • 白金
Jhonson Mattey社のプラチナ需給予測は先週発表されたが、これと10月に公表されているGFMSのプラチナ需給を対比すると以下となる。なお、先週金曜日に弊社が発行した『週間展望』に書いたプラチナの記事は数字と内容が少し間違っていたのでお詫び申し上げる。こちらをご覧いただきたい。詳細の表は本日発行した週刊ゴールドに書いてある。

結論から言えば、JMはGFMSよりも厳しい需給を予測している。GFMS社が2014年の鉱山生産は144トンと見ているのに対し、JMの鉱山生産見通しは159トンと多く、スクラップを合わせた供給はGFMSの193トンに対しJMは230トンと多く見積もっている。しかし、需要はGFMSの222トンに対しJMは265トンと多く、需要から供給を差し引くと、GFMSは2014年▲29トンの供給不足としているが、JMは▲35トンの供給不足と見ている。
先週間違えてしまったのは、JMは2014年の需要は2013年の需要より▲7トン少なく見積もっているが、それでもGFMSの見積もりよりも多いという点であった。GFMSは前年より+15トン需要が増加すると見ている。JMは供給が減ることに合わせてレーショニングのように需要も減ると見ているので、GFMSのよりも弱気なのかと勘違いしてしまった。
JMは投資需要が▲18トン減少すると見ているが、今年前半のストライキ中にETFは売れており、11月27日時点で74トンの残高がありそれほど減ってはいない。いずれにせよ供給量の15%もの需給アンバランスが生じており、在庫から調達されるとしても在庫(仮にあるとして)はほとんど無くなると思われる。ちなみに2015年はGFMSは引き続き▲20トンの供給不足が続くとしている。
また12月から燃料電池車が販売されるが、これには一台当たり30〜50グラムのプラチナが使われると日本経済新聞には書いてあり、それが本当なら、これまでの10倍以上の(これまでは排気量1000cc当たり2グラムの自動車触媒用プラチナ需要と言われている)プラチナ需要が出てくることになる。
まだ次世代自動車がハイブリッド車なのか、クリーンディーゼル車、電気自動車、燃料電池車なのかはわからないが、プラチナ触媒需要が減少することは今のところ中国やインドの公害問題絡みても考えられない。
商品の需要は経済指標同様、厳密に調査することはできなく、需要を公表する企業の恣意的な思惑が入ることは十分にある。JMが鉱山会社寄りではなく、自動車メーカー寄りにスタンスを変えているなら、プラチナ価格を抑える方向でレポートは描かれる。そうした恣意性を排除しても、プラチナ需給はタイトであることに変わりは無いだろう。金価格と連動して動いている現在のプラチナ価格は市場機能を果たしていないように思うのは私だけであろうか。米国ではプラチナとパラジウム価格の公表値を巡って訴訟が発生している。

インパラで再びストライキ発生

  • 2014-07-08 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
IMPALA社で再びストライキ発生
世界第二位の南アフリカのプラチナ鉱山Impala Platinum Holdings Ltd.では、7月4日そのMarula鉱山で、2,000人の鉱山労働者がストライキに入ったと述べている。5ヶ月に及ぶストライキが6月24日に解決して2週間もたたないうちに再びストライキが生じている。Limpopo地方にある同社のMarula鉱山では年間70,000オンス〜80,000オンス(2.1トン〜2.5トン)のプラチナを生産している。ここの労働者は主にThe National Union of Mineworkers(NUM)に属しており、Association of Mineworkers and Construction Union, (AMCU)が同社とAnglo American Platinum Ltd.及びLonmin Plc.の7万人の労働者を巻き込んで5ヶ月にわたって行ったストライキの時に、同鉱山は操業していた。NUMは昨年2年間の賃金交渉を妥結していた。まだ組合側からは要求がだされていないが、AMCUの妥結内容並みに賃上げすることが目的ではないかと推測される。

パラジウム価格は高い
7月第1週の貴金属価格は上昇している。しかし、金や銀の上昇は小さく、プラチナやパラジウムの上昇は大きい。中でもパラジウムの上昇は最も大きくなっている。7月第1週の金価格は0.26%上昇し、銀は0.91%上昇した。しかし、プラチナは1.63%、パラジウムは2.65%上昇している。
7月4日までの価格を一年前から比較すると、金は9.46%上昇し、銀は8.74%上昇しているのに対し、プラチナは9.41%、パラジウムは20.86%上昇している。

リースレート
5月末からのリースレートは、プラチナは6ヶ月物や1年物のリースレートが5月末に上昇したが、6月中旬から再び少し下がっているが、パラジウムは5月末から上がりっぱなしである。まだ驚くほど高くはなっていないが、現物の需給が徐々に締まってきていることを示しているものと思われる。

パラジウムの鉱山在庫
上記の需給は、消費側の手持ち在庫が減っているという話であるが、生産者側のパラジウムの在庫は統計上も減少している。もともとロシアからの供給にはスイスに保管されていた旧ソ連邦時代の在庫からの販売が、2007年頃には3分の1を占め46.3トンもあった。その後スイスの在庫はどんどん減少し、2013トンにはわずか3.1トンになっている。2013年、ロシアの供給が世界の42%を占めているが、南アの割合も増加しており、37%になっている。これは、南アの生産量が増えたわけではなく、南アもロシアも生産量は横ばいで、ロシアの在庫からの供給がどんどん少なくなり、おそらく今年はゼロに近いためであろう。
今後プラチナの需給はタイトになると思われるが、それ以上にパラジウムの需給はより一層タイトになるだろう。

プラチナは70トン不足し、需要増と合わせると98トン供給が足りない。

  • 2014-07-01 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
『プラチナは供給が▲70トン不足し、需要増と合わせると▲98トン、昨年の生産量の55%の供給不足の異常事態となる。』

先週ようやくプラチナ鉱山ストライキが終了した。1月23日から122日目である。しかし、鉱山各社が述べているように、生産はすぐには復旧しない。南アフリカ共和国のプラチナ鉱山は地底1000mにある。鉱脈は僅か2センチメートルの幅でお椀上に存在する。それをカンテラを付けた工夫が削岩機で上下1mの土を掘りだして地上に上げる。地上では製錬所で浮遊選鉱や化学処理を行い、溶鉱炉でニッケル分を飛ばしてバケツ一杯の鉱石となる。その鉱石を精製設備に運び、塩酸と硝酸等の溶液に溶かしてプラチナを析出して机の上に乗る豆腐大の5kg塊を作る。触媒用はこれを丸い塊にしたスポンジと呼ばれる粒状にする。

地下1000mはとても暑い。ベンチレーターというクーラーのお化けが無いと暑くて死んでしまう。また地下水がわき出ているので、これも排水ポンプで処理する必要がある。発電機が止まれば真っ暗になってしまうので、これも死につながる。1000mを20分ほどかけて上下する井戸のつるべ状の滑車と箱が無いと、地上には歩いては帰れない。地中の空気も地上から新鮮なものを送る必要がある。こうした労働環境下では、電気が止まれば大事故になる。

毎年数人鉱山では死者が出ているが、これは主に落盤事故によるものだ。しかし、電気が止まれば数千人の死者が出る大惨事になる。ストライキの前に労働者は銅電線をはがして持ち出しているようであり、配線を十分修復しないと危なくて作業はできない。

だから鉱山会社は正常稼働までに3ヶ月を要すると述べている。仮に2ヶ月で点検が終わり、稼動できるとすると、8月末であるから、ストライキ開始から約219日の操業停止となる。

2013年世界のプラチナ生産量は178トンで、その72%に当たる128トンが南アで生産された。今年も同じペースで生産できたと仮定して、128トンの219日/365日=77トンである。つまり、今年の生産量は、77トン減産となる。厳密には、上位3社以外にAquarious社とNortham Platinum社等があるため、▲70トン程度の減産となる。

一方需要は昨年は197トンであった。厳密には261トンの需要からスクラップによる供給の64トンを差し引いた数量である。中国が世界最大の需要国で24%を占めるが、その78%は宝飾品向け、つまりブライダル用のリング向けである。自動車触媒需要は5%しかなく、欧州の66%、日本の51%、米国の35%よりかなり少ない。そうした自動車触媒需要抜きで、中国は2013年前年比18トンの需要増となっている。結婚需要は堅調であり、自動車触媒は大気汚染の関係から増加傾向にあるとすれば、少なくとも今年も18トンの需要増にはなるだろう。欧州の自動車触媒需要は昨年40トンであったが、自動車需要はかなり悪かった。ところが、昨年9月以降欧州の新車登録台数は9か月連続で前年比像となっている。おそらく自動車触媒需要は50トン以上になるだろう。すると両地域だけで需要増は、28トンである。

生産が▲70トン減少し、需要が+28トン増加すれば、需給ギャップは今年より、98トン拡大する。昨年は▲18トンの供給不足が今年は▲98トン、生産量の55%不足するということになる。

計算上はとてつもない供給不足であり、プラチナで物を作るということは諦めねばならないほどである。需要が減少すれば、当然価格は下がるが、もしどうしてもプラチナでなければ、作れないものがあるとすれば、需要は減らない。

自動車触媒は、酸化還元反応を促進する物質はプラチナグループメタル以外にない。これは戦後一貫して触媒メーカーが探し求めた結果である。そうなれば車は電気自動車か燃料電池車に移行せざるを得ない。最近のこうした動きに拍車がかかっているのは、何も環境汚染のせいではない。ガソリンや軽油を燃やせば、必ず毒ガスが発生し、それを無害化するにはプラチナ族金属が必要不可欠なのだ。

更に問題は、これだけ長く生産が止まるとプラチナ鉱山は軒並み赤字となる。赤字だとリストラや生産性の悪い鉱山は閉鎖せざるを得ない。そこで再び労働問題が発生するであろうが、それはさておいても、鉱山の生産量は上記シミュレーション以上に足りなくなる可能性が大きいのである。

どう考えても、プラチナ価格は今後上昇して、余分な用途は代替品を見つける手立てを考えてもらう以外にないようである。

南アフリカで20万人規模の新たなストライキ発生

  • 2014-06-10 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
6月6日付のトムソンロイターの記事によると、南アフリカ共和国の金属労働者組合(NUMSA)の指導者らは5日、20万人余りの組合員により、7月初めに賃上げ要求ストライキに突入すると発表した。

また、5カ月目に入った白金鉱山のストを主導する南ア鉱山労働者・建設組合連合(AMCU)のマサンワ代表は、賃上げ要求で譲歩しない姿勢を明言しており、労使紛争で打撃を受けた南ア経済をさらに圧迫しそうだ。

NUMSAはベル・エクイップメントやスコー・メタルズなどの企業に対し、年間15%の賃上げを求めている。アービン・ジム書記長は「過去の経験から結論すると、ストは避けられない」と述べ、組合員との協議で次の行動方針を決める意向を明らかにした。

NUMSAがストに突入した場合、自動車部品供給や鉄鋼生産といった主要部門の足かせになる見込み。国営電力会社エスコムの発電所建設プロジェクトも中断する恐れがある。

一方、AMCUのマサンワ代表は、政府の調停で提示された賃上げ案の受け入れを拒否し、世界の白金生産量を40%落ち込ませている鉱山ストの終結期待を後退させた。 同代表はロイター通信に対し、月給1万2500ランド(約1200ドル)の要求は「やはり譲歩できない」と述べ、「組合員は断固とした姿勢にあり、われわれは退くつもりはない」と付け加えている。

プラチナ価格は上昇すると思う。5か月もストライキが続く状態で、空売りする投機家は二つの点で間違っている。一つは何もこれほどの大事態に「在庫がある」などというたわごとを信じて売り向かうことは無いということである。

もう一つは、こうした事態にもかかわらず価格が下がれば、二つの波及効果があるという点である。波及効果の一つは、南アのプラチナ鉱山が危急存亡の危機に陥るということである。生産が4割も止まり、在庫が無いのに市場価格は上がらないという事態であれば、どんな優良企業でも赤字になる。今年は南アのプラチナ鉱山はそろって大赤字になるだろう。中には操業を停止するところも出てくるかもしれない。投機家はそうなっても未だ売るつもりであろうか?

もう一つの波及効果は、東京商品取引所のプラチナ市場は、コーヒーや砂糖同様に取引が無くなってしまうということである。一般投資家は、自分の資金が増えることを望んで市場に参加する。このような事態に際して投資をしても、わけのわからない空売りに出会い、資産を何度も無くせば、商品先物取引はおかしいとの感覚を皆が持ち、正に市場には誰もいなくなる。投機家はこうした薄い市場を利用してささやかな利益を得るのではなく、もっと大きな市場で売買すれば良い。さもないと自分の寄って立つ基盤を自ら無くしてしまうことになりかねない。

5か月もストライキが続いて価格が上がらないというのは、明らかに市場がおかしい。そうした市場で儲けてもいずれ何もなくなるだろう。こうした事態には皆が買い支えて少なくとも困っている鉱山会社を助けるべきである。さもないとプラチナは今後更なる高値となり、現物市場も含めて市場そのものが崩壊してしまう。

南アのストライキ終結間近

  • 2014-05-13 (Tue)
  • 近藤雅世
  • 白金
南アフリカのプラチナ鉱山で動きがある。
LONMIN社は、鉱山労働者のうち強行派のAssociation of Mine Workers and Construction (AMCU)に対立する労働組合(National Union of Mine Workers (NUM)に対して、新たな賃金提案を出し、無料の電話回線を使って労働者からの問い合わせに応じ、一部労働者の出社により、5月17日から鉱山の操業を再開する準備に入ったという。最も力を入れているのは、AMCUが労働者を鉱山に行かせないような暴力をふるうことを避けるため、労働者の輸送等に最大の警備を行うという点であるという。2,012年夏には、AMCUがシャフトに入ろうとした労働者を射殺し、警官隊が導入されて打ち合いとなり数人が死亡する事件に発展している。
 ただ、労働者の間には、長引く無給のストライキから職場復帰を望む人が増えているといい、AMPLATSやIMPALAでもひそかに鉱山に通い始める労働者が増えているという。
それに対しAMCUはコメントを控えているが、給料だけで12500ランドの即時賃上げを要求していた態度を若干軟化させ、数年の賃上げ案も検討を始めているとのこと。
IMFによれば南アの失業率は24.4%とされ、4人に一人は失業している。鉱山に働けるのは恵まれた労働者であり、隣国モザンビークからは毎年大量の新規労働者が鉱山に押しかけている。そうした労働者が弱い立場の国でよくこれだけ長くストライキを続けられたと思われ、その背後には暴力による脅迫等相当な引き締めがあったものと思われる。南アの総選挙は5月7日に終了しており、ズマ大統領率いる与党「アフリカ民族会議(ANC)」が62%の得票率を獲得した。半面、貧困問題などへの不満も根強く、ヨハネスブルクのスラム街では総選挙後に抗議行動が発生し、政府が軍を投入する事態に発展したため、安定とは言い難いだ、それでもストライキの一つの目的は終わっている。
 こうした周囲の状況から考えると、南アのストライキは近日中に終わるのではないかと思われる。それなれば、通常ならプラチナ価格は暴落するところであるが、そもそもストライキを価格は織り込んでいないため、それほどの下げもなく、逆にショートしていた投機筋が買戻しにかかって上昇する可能性もある。
 また、プラチナの需給は、ストライキの影響を受けて供給不足になるものと思われるため、基調は強気で良いと思われる。

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