- 2011-08-04 (Thu)17:15
- 近藤雅世
- その他
来週8日月曜日からコメが上場される。本上場までの期間は二年の試験上場であり、この間に出来高が少ないと上場廃止の憂き目に会う。このことについて、少し考えてみたい。
自民党政権下で農林省は、1969年以来長い間減反政策を取ってきた。これは当時パン食の普及によりコメの需要が減少してきたので、生産を制限してコメ価格を高く維持しようとする政策だった。
その結果コメは高い価格が維持され、海外産に比べて割高なので、輸出競争力は無くなった。政府は海外からの圧力により、安い輸入米を買い入れては放出せず、価格を維持し続けた。価格が高くなったコメの需要は減少し続け、ますます減反せざるを得なくなるという悪循環を産んだ。その結果、日本の耕地放棄地は、埼玉県に匹敵する39万ヘクタールに及んでいる。生産量が減少する農家は収入が少なく、跡継ぎが都会に出て働くようになり農村部は高齢化していった。
日本の農業の衰退は、食料自給率を下げ、41%まで減少した。中国では「食料自給率95%を死守せよ」と大号令を政府が掛けている。お隣、韓国では、27%の食料自給率を海外生産も含めて65%にしようと、韓国企業73社が中国やインドネシア等18カ国に進出し、小麦粉等計約2万4000ヘクタールの農地を耕作している。
その一方で、OECDの統計によれば、日本の農業補助金は欧州の約2倍、米国の約5倍となっている。(農家総収入に占める補助金額の比率は日本は49%、EUは27%、米国は10%)
民主党はその目玉政策の一つとして「戸別所得補償制度」というコメ等の農家を対象に全国平均の生産費と販売費の差額を元に補てんする制度を決めた。欧州で、米国やカナダからの農産物輸入の脅威から自国を守るために、麦等の価格を下げながら農家に直接補助金を出す制度を1992年に導入し、その後環境に配慮した農作業をしていることを補助金の支給条件にするなど、制度改革を行いつつ成功を収めていることを見習ったものである。
民主党はコメについては減反に協力する農家だけを所得補償の対象にし、補償に頼らないと決めた農家は、コメを好きなだけ作ることができるようにしている。この「所得補償制度」に対しては賛否両論がある。ばら撒きに過ぎないとか、新たに参入した企業をどう育てるのかの視点が無い、意欲のある農家の成長を鈍らせる等の意見もある。
こうした議論の中ではっきりしてきたことは、結局日本の農業を再生させるためには、日本の農業の競争力を付けさせるしかないということだ。
計画経済の下では、保護された産業は競争が排除され、そのために生産性の向上やコストダウン、売れる物を作るという企業努力が損なわれる。作れば買い上げてくれるし、減反政策では作らなければお金がもらえるのだ。
そうしたぬるま湯に長く浸かっていると、グローバリゼーションという海外からの荒波を受けた時、産業は押し流されてしまう。海外からの荒波を阻止しようとすると、関税障壁という高い防波堤を築く必要がある。それは貿易摩擦を産み、日本の他の商品の輸出が他国との競争に敗れるという、広い意味での国民の不利益が生まれる。そうした中で保護された産業は徐々に腐っていく。
厳しいようではあるが、産業はいたずらに保護すべきではなく、時には競争上裏に起き、切磋琢磨させて産業力を高めて行くのが正攻法であろう。
企業は、自分の作った商品の価格をコントロールしたがる。政府もその産業を保護するために商品価格を一定の枠内で維持しようとする。しかし、これは産業を保護する政策であって、裏返せば消費者に負担をさせる政策である。
日本人は、日本のコメと味が変わらないカリフォルニア米や豪州米を輸入することを禁じられ、はるかに高い価格の国産米を食べることを強いられてきた。強いられると他の物を自由に選択するのが消費者である。
産業を強くするのは、価格を統制して産業を保護下に置くことではない。コメ農家は生産性を高め、品質を改良することにより、世界に通用する味と価格で勝負すべきである。
日本の市場に、72年ぶりにコメが上場される。
仮にこれが試験上場だけで、誰も取引せずに上場廃止となれば、日本のコメ農家は再び封建時代に戻るだろう。農協が再び価格を支配すれば、海外の安い価格のコメを横目に見た消費者は日本産のコメから一層消費離れが進むかもしれない。消費者あっての生産者であることを忘れてはならない。
そうした事態が起きないように、どうしてもコメの上場は成功させねばならない。そのためには、農協を始め多くの生産者がコメ市場に参加し、流通業者と、消費者の代表たる投資家が、最も公平で適正な価格を市場を通じて発見せねばならない。
自民党政権下で農林省は、1969年以来長い間減反政策を取ってきた。これは当時パン食の普及によりコメの需要が減少してきたので、生産を制限してコメ価格を高く維持しようとする政策だった。
その結果コメは高い価格が維持され、海外産に比べて割高なので、輸出競争力は無くなった。政府は海外からの圧力により、安い輸入米を買い入れては放出せず、価格を維持し続けた。価格が高くなったコメの需要は減少し続け、ますます減反せざるを得なくなるという悪循環を産んだ。その結果、日本の耕地放棄地は、埼玉県に匹敵する39万ヘクタールに及んでいる。生産量が減少する農家は収入が少なく、跡継ぎが都会に出て働くようになり農村部は高齢化していった。
日本の農業の衰退は、食料自給率を下げ、41%まで減少した。中国では「食料自給率95%を死守せよ」と大号令を政府が掛けている。お隣、韓国では、27%の食料自給率を海外生産も含めて65%にしようと、韓国企業73社が中国やインドネシア等18カ国に進出し、小麦粉等計約2万4000ヘクタールの農地を耕作している。
その一方で、OECDの統計によれば、日本の農業補助金は欧州の約2倍、米国の約5倍となっている。(農家総収入に占める補助金額の比率は日本は49%、EUは27%、米国は10%)
民主党はその目玉政策の一つとして「戸別所得補償制度」というコメ等の農家を対象に全国平均の生産費と販売費の差額を元に補てんする制度を決めた。欧州で、米国やカナダからの農産物輸入の脅威から自国を守るために、麦等の価格を下げながら農家に直接補助金を出す制度を1992年に導入し、その後環境に配慮した農作業をしていることを補助金の支給条件にするなど、制度改革を行いつつ成功を収めていることを見習ったものである。
民主党はコメについては減反に協力する農家だけを所得補償の対象にし、補償に頼らないと決めた農家は、コメを好きなだけ作ることができるようにしている。この「所得補償制度」に対しては賛否両論がある。ばら撒きに過ぎないとか、新たに参入した企業をどう育てるのかの視点が無い、意欲のある農家の成長を鈍らせる等の意見もある。
こうした議論の中ではっきりしてきたことは、結局日本の農業を再生させるためには、日本の農業の競争力を付けさせるしかないということだ。
計画経済の下では、保護された産業は競争が排除され、そのために生産性の向上やコストダウン、売れる物を作るという企業努力が損なわれる。作れば買い上げてくれるし、減反政策では作らなければお金がもらえるのだ。
そうしたぬるま湯に長く浸かっていると、グローバリゼーションという海外からの荒波を受けた時、産業は押し流されてしまう。海外からの荒波を阻止しようとすると、関税障壁という高い防波堤を築く必要がある。それは貿易摩擦を産み、日本の他の商品の輸出が他国との競争に敗れるという、広い意味での国民の不利益が生まれる。そうした中で保護された産業は徐々に腐っていく。
厳しいようではあるが、産業はいたずらに保護すべきではなく、時には競争上裏に起き、切磋琢磨させて産業力を高めて行くのが正攻法であろう。
企業は、自分の作った商品の価格をコントロールしたがる。政府もその産業を保護するために商品価格を一定の枠内で維持しようとする。しかし、これは産業を保護する政策であって、裏返せば消費者に負担をさせる政策である。
日本人は、日本のコメと味が変わらないカリフォルニア米や豪州米を輸入することを禁じられ、はるかに高い価格の国産米を食べることを強いられてきた。強いられると他の物を自由に選択するのが消費者である。
産業を強くするのは、価格を統制して産業を保護下に置くことではない。コメ農家は生産性を高め、品質を改良することにより、世界に通用する味と価格で勝負すべきである。
日本の市場に、72年ぶりにコメが上場される。
仮にこれが試験上場だけで、誰も取引せずに上場廃止となれば、日本のコメ農家は再び封建時代に戻るだろう。農協が再び価格を支配すれば、海外の安い価格のコメを横目に見た消費者は日本産のコメから一層消費離れが進むかもしれない。消費者あっての生産者であることを忘れてはならない。
そうした事態が起きないように、どうしてもコメの上場は成功させねばならない。そのためには、農協を始め多くの生産者がコメ市場に参加し、流通業者と、消費者の代表たる投資家が、最も公平で適正な価格を市場を通じて発見せねばならない。
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