商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > 過去の記事 > 2019 / 01

過去の記事 - 2019 / 01 -

プラチナとパラジウム2

 プラチナは主にディーゼル車に、パラジウムは主にガソリン車に使われるというが、それは割合の問題であって、どちらか一方だけが使われるわけではない。  

ガソリン車は、ガソリンを点火プラグで燃焼させる。一方ディーゼル車は軽油を圧縮して自然発火させる。10年ほど前はどちらも将来の有力自動車内燃エンジンであった。自然発火させるディーゼル車の方が地球温暖化ガスの排出量は少ないという論文もあった。

ところが2015年フォルクスワーゲンは排ガス規制を逃れるソフトウェアを搭載していたとされ、世界で一斉に捜査が行われ、結局同社は米国に1兆5千億円の課徴金を支払うことになった。さらに欧州では高等裁判所が一定地域のディーゼル車の乗り入れを禁止する判決を下した。また、アウディーの前会長は排ガス処理不正にかかわった疑いでドイツ検察当局に逮捕された。三菱自動車の不正もそうであるが、排気ガスの正常化はどの自動車会社も行っている。そして当然のことながら、排気ガスの処理は問題なく行われている。問題は、その報告を怠ったり、改ざんしたという手続き上のミスである。当事者は懸命に排気ガスは正常化されていると訴えていたが、世間はそう見なかった。そのためディーゼル車の売れ行きは見る間に落ち込み、ディーゼル車が多かった欧州車は凋落していった。

 そうなると当面はパラジウムを多く使うガソリン車の独壇場である。しかし、ガソリン車もいずれ電気自動車にその地位を譲ることになるだろう。バッテリーの開発により長時間走行が可能になるかどうかが今後の課題である。筆者は、商社マン時代鉛亜鉛錫チームの長をしたことがあり、全国のバッテリーメーカーを訪問したことがあるが、すでにあらゆる金属の電位差は調査されつくしており、電池の材料はほとんど目新しいものはなかった。そんな中でソニーがリチウムイオン電池を開発した。リチウムという素材は、水と猛烈に反応して爆発を起こす。ソニーの工場では何度も事故が起こったが、それを克服して生産することに成功した。

 それでも皆さん携帯のバッテリーは未だに毎日充電しないといけない不便さを感じておられるはずだ。電池の世界は限界に達しており、何らかのブレークスルーが必要とされるが、テスラやパナソニック、中国企業等が現在しのぎを削って開発競争を行っている。

 その一つに燃料電池がある。燃料電池は上記のような電池とは違ってそれ自らが発電所である。100年以上前イギリスの学者が水の電気分解を逆に行えば電気が生じることを発見している。水を電気分解すれば水素と酸素が出るが、水素と酸素を混ぜれば発電できることを実験して成功した。酸素は空気そのものなので、原料は水素を造ればよい。以前水素スタンドは爆発するという迷信があったが、すでに世界中のガソリンスタンドに水素ステーションができているが、爆発は起きていない。燃料電池は、以前から発電所には必ず装備されていた。
電気は溜めることができない。夏場の猛暑などでクーラー需要が多くなると電力需要が昼間だけ多くなる。通常の水力や火力発電だと、その時間帯の必要電力量を発電し続けていなければならない。その瞬間だけ発電タービンを回すことはできないため、最大発電量にあわせてタービンは回されることになる。そうした無駄な発電を避けるために燃料電池は有効である。なぜならオンオフが効くからだ。電力需要が上がってきたら燃料電池を稼働させれば良いということで、世界の発電所には必ず燃料電池が装備されていた。(以下次号)

プラチナとパラジウム1

パラジウム価格がプラチナ価格の1.5倍に上がり、金の価格も追い抜いてしまった。NYパラジウム価格は1月14日1297.3ドルの高値を付け、一時的にNY金の1291.3ドルを抜いた。またNYプラチナ価格は802.5ドルなので、パラジウム価格はプラチナ価格の1.6倍になった。

 プラチナもパラジウムも南アの鉱山で一緒に産出する。現在は地底1000mをモグラのように掘削してわずか1cmの鉱脈を探してその上下50cmの土を地上に掘りだす。その土を大きな鉄のボールがたくさん入ったキルンで粉砕し、粉末を化学薬品が入った貯槽に入れて沈殿させ、それを溶鉱炉に入れてニッケル純分を分離する。出来上がったバケツ一杯のプラチナ鉱石をヘリコプターに乗せて精製工場に運びここで硫酸や塩酸の入った溶液で溶かして析出させるとプラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウムなどのプラチナ族金属が精製される。数百トンの鉱石を掘り出して、作られたのがテーブルの上に乗る豆腐状の堅い塊である。これがプラチナインゴット、あるいはスポンジと呼ばれる丸い粒状の物質である。

 これらの用途は半分以上が自動車触媒である。なぜかわからないが、プラチナ族金属の側を通過した気体は激しい酸化還元反応を引き起こす。プラチナやパラジウム等は何ら変化がないのに、HとCの塊のガソリンを燃焼させて酸化してできるCO,NOx、HC等の猛毒ガスがプラチナ族金属に触れただけで
CO2に酸化されたり、N2やH2に還元され、無毒化される。自動車のエンジンをかけてその排気ガスを直接吸えば即死の猛毒ガスが排出されているが、エンジンのそばやマフラーに装着される触媒を通せば、こうして無毒化された排気ガスが出る。それでも二酸化炭素は地球温暖化の元凶とされ排出基準は毎年厳しくなっている。

 プラチナは主にディーゼル車に使われ、パラジウムは主にガソリン車に使われている。といっても勘違いされないように、ガソリン車でもプラチナとパラジウムやロジウム、イリジウム、セリウム等がペースト状(インク状)にして混ぜ合わさって、セラミックのハチの巣状に穴の開いた棒の表面に塗布されている。(以下次号)

市場とは何か その30

年初にフラッシュクラッシュが起きた。米国市場において新年の薄商いの中で、アップル社の販売が予想以下であったため、米国株価が急落し、ドル安/円高、豪ドル高、ポンド高、金高等が一瞬だが発生した。その後反落したとはいえ、一日の変動としては大きなものであった。こうした市場の瞬時の大幅な変動はコンピューターによるトレードが多くなるにつれ、今後も時折現れるだろう。AIによる判断は一律になりやすく、一方向に同時に大量の売りないし買いが発生し、類が友を呼ぶことになる。人間が気づいて反応するまでに、大きな損失が発生しやすくなっている。またネット取引業者等は一時的に多額の証拠金不足が生じることがあるものと思われる。2015年1月15日に生じたスイス中央銀行による為替介入の停止により、一日でスイスフランが2割以上暴騰した時、世界の多くの為替取引業者が倒産した。倒産した理由は、一日の大きな変動で巨額の損失を被った顧客が資金不足に陥り、予め顧客から預かっていた取引証拠金が不足してしまい、為替取引業者は損失を顧客から取り立てることができなかったためである。この場合のように、顧客の損失が多額になり証拠金が不足した場合でも、受託取引員はそれを顧客に成り代わって銀行間取引や取引所に対しては損失額を支払わなければならない。幸い今回は1日で騒動は終わったため、冷や汗をかいたのはたった一日だけであった。しかし、投資家はこうした価格のスパイクが起きた時の対処はいつもしておかねばならない。まず肝心なことは、商いが薄い時は一時的にポジションを整理して市場から撤退すべきである。ファンドマネージャーは11月のサンクスギビングホリデイからクリスマス・年初まで優雅に地中海等の温暖な場所でバカンスを採ることになっている。大手ファンドのファンドマネージャーはポジションを整理してスクウェアにしてから休暇を取ることが多い。11月末にファンドの決算期が多いのもそのせいだと思われる。こうした大手プレーヤーが市場からいなくなる時はボラティリティー。つまり価格変動は大きくなる。
もう一つ注意すべきは、大きなイベントがある直前にはポジションを整理すべきである。今週は米中貿易交渉が行われる。この結果がどうなるかは誰にもわからない。市場に好意的になるかどうかは一種の賭け事である。サイコロの目を占うギャンブルと投資が違うのは、サイコロの目は予想がつかないが、投資は先の見通しを立てることができる点にある。その意味で投資は決してギャンブルではない。いちかばちかの賭けをするのは投資とは呼ばないのである。

過去の記事

Home > 過去の記事 > 2019 / 01

1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311
キーワードで検索
Feeds

Page Top