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過去の記事 - 2017 / 02 -

メキシコが南米からトウモロコシ調達に動いた

メキシコ農業大臣は2月16日農業使節団をアルゼンチンとブラジルに派遣してトウモロコシの調達に当たらせると述べた。これまでメキシコはトウモロコシを100%米国から輸入しており、米国にとっては、トウモロコシ輸出量の約4分の1を占める最大の顧客である。
米国農務省が昨年11月末に公表した米国農産物貿易概要によると、2017年穀物年度の農産物輸出高予想は1340億ドル、農産物の最大の輸出国は中国で、2017年度は218億ドル(約16%)、次いでカナダの213億ドル(約16%)、メキシコは第三位の183億ドル約(約14%)である。トランプ大統領は、メキシコに壁を作ると述べてメキシコ大統領との会見がキャンセルされ、険悪なムードになった代償として、トウモロコシの最大の顧客を失おうとしている。これぞ貿易戦争であり、一方を立てれば他方が立たないという問題である。
トランプ大統領は、機械や鉄鋼等の労働者の歓心を買おうとしているが、農民に対する政策は聴いたことがない。米国は世界最大の農業大国であるが、農業人口は1.6%、農産物生産額はGDPの約1%である。これを少ないというのか機械や鉄鋼の労働者の方がだいじというのかよくわからないが、トランプ大統領が就任直後に離脱したTPPも米国の農民にとっては輸出拡大のチャンスだった。TPP締結により環太平洋諸国の農産品輸入税が減税される機会だったからだ。おそらく農民は不満をもっているのではないかと思われる。

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トランプ政権の動向と金価格

1月20日大統領に就任したトランプ氏は、矢継ぎ早に大統領令を出して世界を混乱に陥れた。これは同氏一流の交渉術から来ているようだ。最初に相手を恫喝するなど、驚かしておいて後で妥協し、あたかも優しい人であるような印象を与え、取引を有利に進めようという方法である。これは一度だけの取引が多い不動産業者特有のやり方なのであろう。通常の取引では信用が最も大切なことなので、いいかげんな言動で、誠実さを疑われれば、取引はうまくいかない。だから、世界の人々にトランプ氏は非常識だという印象を与えるのであろう。また、大統領の経済ブレーンの中核を担う国家経済会議(NEC)の委員長ゲーリー・コーン氏や財務長官のスティーブン・ムニューチン氏は元ゴールドマンサックスの社長やパートナーである。証券会社というのも、信用という用語からは迂遠な業種なのかもしれない。
トランプ大統領は最近三つの譲歩を行っている。一つは1月27日に発したイスラム圏7カ国の市民の入国を一時禁止した大統領令に対して米連邦控訴裁判所は9日、その是非を裁判所が検討している間は実施すべきではないとの判断を示した。判事3人の全員一致だった。これに対して最高裁まで争うと息巻いていたホワイトハウスは、一転して司法判断を受け入れた。
二つ目は中国との関係を修復するために選挙中、トランプ氏は中国に対して戦闘的な対応を貫き、当選後には外交儀礼を逸脱して台湾の蔡英文総統との電話会談した。台湾を孤立させる「一つの中国」の原則については交渉の余地があると述べ、為替政策で中国に譲歩を求める際の交渉材料にするかもしれないと見られていた。だが9日習近平中国国家主席との電話会談で、米中関係を支えてきた一つの中国政策を支持することを確認、現状を受け入れた。米政権当局者によると、その狙いは中国側との関係をリセットすることだという。中国は胸をなでおろしていることであろう。
最後は安部首相との日米首脳会談で、それまで主張してきた日本への要求を一切出さず、もっぱら日米の蜜月関係を演出した。筆者は安部首相の行動を支持している。トランプ氏が昨年11月8日に当選したときに、世界中が驚きあきれるなかで、安倍首相は即座に「心からお祝い申し上げる」と述べており、10日後にはトランプ氏の自宅を訪れている。そして今回のゴルフ談義も、何が話されたかはわからないが、その内容よりも世界中からその態度や行動を懸念されている新大統領との間で、いち早く日本が強いパイプを築いたことは世界中に報じられた。トランプ政権にとっても、恰好のPRだったであろう。清濁併せ呑むのが政治家の信条であるなら、まさに、安倍首相の行動は一国の政治を預かる宰相として、迅速で適切な行動だった私はと思う。
トランプ政権に反発しているのは、ドイツ、メキシコ、イランであるが、最初の二つの国は総選挙や大統領選挙をすぐそこに控えている。ドイツのメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は、最新の世論調査では、2010年以降初めてマーティン・シュルツ氏率いる中道左派の社会民主党(SPD)に首位の座を譲っている。
さて、金価格を占うためには、どうしてもトランプ政権の動向を追う必要がある。先週末の2月10日、トランプ大統領が2〜3週間以内に驚異的な税制改革を公表すると述べて、株価が急騰し、金価格は下落した。今年は、米国連邦債務の対国内総生産(GDP)比が過去最高に達する見通しだ。そのため、財政赤字を膨らませないで減税や財政支出拡大という公約を果たすことは極めて難しいだろう。どんな財源があるのか見ものであるが、考えられる税収増の手段の一つとして、企業債務に関する利息費用を課税対象から控除する制度の廃止がある。共和党が主張してきたことである。株式配当は課税対象だが、負債利息は非課税というアンバランスにより米国企業が負債への傾斜を促したことを是正するという名分がある。しかし、減税の対価として有利子負債の多い大企業やレバレッジの高い新興企業が打撃を受けることは避けられないため、実現には大きな反発を招くだろう。とにかく2〜3週間待つしかないが、株式市場が有効と認める減税案であれば、株価は一層上がり、金価格は下がるだろう。逆に財源が解決されていない案であれば、議会との折衝があるため、簡単に実現するとは思えない。その場合は、株式の失望売りに伴う金への投資増となるかもしれない。
本日フリン米大統領補佐官(安全保障問題担当)が辞任した。こうしたドタバタを見るとまだまだトランプ政権の足元は固まっていないようだ。金価格にはまだチャンスがある。

キャップが取れた金

金価格にとって一つの足かせが外れた。それは3月14〜15日に予定されるFOMC(公開市場委員会)での利上げがなさそうであるという点だ。先週公表された雇用統計で賃金上昇率が鈍化し、イエレン議長は1月31日〜2月1日のFOMCでは利上げについてのコメントを控えた。市場では3月に利上げがある確率は2割前後になっている。
トランプ大統領が無謀な大統領令を乱発して議会がこれに反発し、トランプ政策による景気浮揚策に赤信号が出るとしても、利上げがあると金価格は頭が重かった。しかし、利上げが6月までないとすれば、トランプ大統領次第で金価格は大化けする可能性が残されている。各種論文で、大統領を罷免する手続きや、大統領令が議会の承認なくして有効かどうか、温暖化対策のパリ協定は大統領が拒否することはできるのか、あるいは、司法が大統領令をどれだけ拘束できるのかなどの議論や論点が公表されているが、世界中で新大統領を歓迎しないムードが出ているようだ。
ただ、米国民の中にはまだ多くのトランプ信者がいるようで、マスコミや世界の論調とのギャップを感じる。移民流入拒否についてもロイターの調査では49%が賛成だという。世論調査そのものの正確性も昨年以来問われているが、トランプ大統領を頼もしく思っている人々もいるものと思われる。彼らが期待する生活の向上や、景気回復、賃金の上昇等が成就すればトランプ人気は再び沸騰するだろう。いずれにせよ、米国民は良識があると期待できるので、彼らがトランプ大統領の手腕を正当に評価するだろう。
ワールドゴールドカウンシルのレポートによれば、インドは廃貨の影響を受け、また中国は10月の国慶節での金宝飾品需要は悪かったが、12月に、春節を迎えるための宝飾品製作用の金地金需要は良かった。しかし、中国政府が銀行に対する輸入の外貨割り当てを制限したため、旺盛な金の需要を供給が賄えなかったという。いずこも政治が金(きん)を動かしている。
新年早々にスタンダードバンク等が弱気な金価格見通しを出していたが、1200ドルを超えた今、政治動向次第では利上げのキャップが取れた金は上値を追う可能性があるように思われる。

ハネムーン

 トランプ政権はいよいよ世界で物議を醸しだしてきた。移民の入国禁止の大統領令を出した途端、英国ではトランプ大統領の招待拒否の投票が100万人を超え、イランも敵対している。国内でもグーグルやマイクロソフト、ネットフリックス、アマゾン等が移民の入国禁止措置に反対意見を述べ、国務省職員も反対の署名を集めている。反対したためにFIREされた女性職員もいる。サリー・イエーツ米司法長官代理である。米金融業界からも批判の声が上がり、イスラム過激派ISは米国はISに宣戦布告したと自己の戦いを正当化している。マケイン上院議員は、共和党幹部でありながらトランプ氏と対決するという。
トランプ政権はいわゆる4月末までの「ハネムーン期間」と呼ばれる最初の100日を無事乗り切ることができるかが焦点となっている。最大の山場は、連邦債務残高の上限(米国債の発行枠)の適用一時停止期間が切れる3月15日である。オバマ前大統領は、2011年、13年、15年とたびたびこの法律に悩まされ、議会との対立で何度も米国債の債務不履行の危機に立たされた。財源不足で有効な経済対策を打ち出せなかったという苦い経験がある。15年い降、今年の3月までは大統領選挙があるために、この問題は棚上げされているが、3月以降は再び有効となる。トランプ大統領は議会で多数を占める共和党選出ということで、議会との折り合いは悪くはないはずである。しかし、米国上院の共和党は52人、民主党は48人でその差は4人でしかない。共和党から民主党の提案に賛成する議員が3人出れば共和党案は否決されるという僅差である。トランプ氏はツイッター等一方的な発言は得意であるが、政治家という人種はもっぱらディベートが仕事である。果たしてトランプ氏が強権や押しの強さではなく、理詰めや誠心誠意の説得力で、議員に自分の案を賛成させることができるかという力量が試される。トランプ氏の主な政策のうち、法人税を35%から15%に引き下げるなどの、減税政策には、総額6兆ドルの資金が必要となる。グラフはブッシュ(Jr.)大統領とオバマ大統領の月次財政赤字の動きを示したものである。(グラフ米国の財政赤字)

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これを見ると、ブッシュ大統領の時代に財政赤字は大きく膨らんでいる。これはアフガン戦争やイラク侵攻を行ったためである。この時でも月間の赤字は最大1.3兆ドルであった。オバマ大統領は共和党の財政均衡論者の議員の強い要求に応えて、月間3千億ドル規模まで財政赤字を減らしている。今後も同様な緊縮財政を共和党が求めるとすれば、6兆ドルに及ぶ減税や、それに続くインフラ投資の資金等は一体どこから出すのであろうか。トランプ大統領は、インフラ投資は民間の資金で賄うと述べているが、一般道路建設に私企業が金を出すとは思えない。1月23日付の日本経済新聞Quickニュースによれば財務省が1兆ドルのプラチナコインを発行し、それを米連邦準備制度理事会の政府口座に預け入れて紙幣を引き出すという、いわゆるヘリコプターマネーの導入もあり得ると書いてある。現在米国株価はトランプ政策に対するユーフォリア(幸福感)に酔い痴れ2万ドルを超える史上最高値を付けているが、政策が絵に描いた餅となりそうなら、株価急落は避けられないだろう。金価格にとっては上げ材料であろう。

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