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過去の記事 - 2013 / 11 -

豪州で干ばつ

今年は米国でもインドでも十分すぎるほどの雨が降り、干ばつの知らせはなく、むしろウクライナやブラジルで豪雨のニュースがあったほどである。
ところが、現在豪州で干ばつのようである。豪州北東部のQueensland州の65%において干ばつ宣言が出され、牧草が枯れてしまったため家畜の飼育が困難となり、若い牛や豚が市場に出荷されているという。そのため現在は家畜の値段が下がっているが、やがて豪州産肉の価格は上昇するものと見込まれる。家畜農家は資金繰りに困り、廃業するところも出ているという。この干ばつは豪州の歴史始まって以来のひどさであるようだ。2010年から12年にかけてQueensland州は平年以上の雨に恵まれた。そのため家畜の飼育頭数は増加し、1970年代以降で最大となっていた。しかし、2012年から13年にかけての雨季は雨量が少なく、夏(北半球の冬)はたいへん暑かった。そのため同州の65%で2013年末の夏場を待たずに干ばつ宣言が出され、夏に向かってさらにその度合いは深まるとみられている。あまりに広大な地域が干ばつになっているため、家畜の餌を他から買うことができず、若いまま出荷を迫られているという。その価格は運賃にも満たないほどの安さになっているという。わずかに生えている牧草も栄養不足なため、干し草や飼料用穀物価格は高騰している。
また、通常家畜の屠殺はNew South Wales州で行われるが今年は大量の家畜が屠殺用に持ち込まれるため、Victoria州や南部豪州にまで運ばれているという。2013年の1月〜9月の家畜の屠殺量は過去10年平均の9%多いという。その43%が牛で、2012年の40%増になっているという。そのため価格はkg当たり50セントも安くなっている。

この干ばつの影響がどれだけ世界の穀物価格に影響を与えるか今のところ不明であるが、少なくとも今後の豪州産牛肉価格は値上がりするものと思われ、それは牛肉価格を押上げ
それが穀物価格へも影響を及ぼす可能性がある。

11月5日までの週のファンドの建て玉

先週末11月5日までの週のファンドの建て玉が米国商品先物取引委員会(CFTC)から公表され、これで10月初めの政府閉鎖の影響は完全に無くなった。1ヶ月前の10月1日と11月5日のファンドの建て玉を比較してみると、取組高が大きく減ったのは大豆と原油であり、それぞれ▲18万2千枚、▲14万1千枚である、次いで小麦が▲8万2千枚、。増加したのは10年物米国債が42万4千枚、5年物米国債は19万8千枚増、2年物米国債が7万5千枚である。商品ではトウモロコシの取組高増が最も多く、18万5千枚増。砂糖が6万9千枚増であった。

ネット買い残では砂糖が6万3千枚増、小麦が5万枚増、5年物米国債が3万枚増、日本円が3万枚増、15年物米国債が2万1千枚増、大豆油が2万1千枚増、金が1万8千枚増、原油が1万3千枚増であり、ネット買い残が減少したのは、10年物米国債が▲14万7千枚減、ユーロが▲2万7千枚減、ヒーティングオイルが▲2万4千枚減、トウモロコシが▲1万8千枚減、天然ガスが▲1万5千枚減であった。

11月5日時点でネット買い残が一番多いのは、砂糖の22万3千枚、金の11万6千枚、大豆の10万9千枚、原油の7万8千枚、ガソリンの3万8千枚、プラチナの3万7千枚、大豆ミールの3万1千枚、15年物米国債の3万3千枚、5年物米国債の3万枚、パラジウムの2万8千枚、銀の2万4千枚、2年物米国債の1万1千枚となる。
売り越しになっているのは、天然ガスの▲15万9千枚、10年物米国債の▲14万3千枚、トウモロコシの▲11万8千枚、5年物米国債の▲7万6千枚、日本円の▲6万1千枚、コーヒーの▲1万8千枚、ヒーティングオイルの▲1万8千枚である。

ここ数週間で買いが続いているのは小麦が3週連続で買われ、米国債が短期を中心に買われている。逆に10年物国債は売られている。NY金や原油は買いと売りが交互に出ており方向感の無い動きである。トウモロコシは売りが続いて最後に買いがあり、逆に大豆は買いが続いて最後に売りが来ている。砂糖は、7週間大量に買われたが最後の2週間は少量売られている。

こうしてみると、ファンドは商品にはそれほど資金を入れておらず、砂糖や小麦等割安感のあったものだけに大量に資金を入れ、原油や金等大型の商品には投資に迷っている様子がうかがえる。トウモロコシが売られて大豆が買われて、最後に反対になっていたが、先週の需給報告を見ておそらく再び大豆が買われたものと思われる。

裁定取引

ファンドの建て玉の分析を書こうと思ったが、米商品先物取引委員会(CFTC)は政府閉鎖の後遺症からか先週金曜日までに公表しているのは10月22日の週までの建て玉であった。それを分析始めたらすぐに、これはその後大幅に変わっているという感じがしたので、分析を中止した。本来は翌29日のものが先週末に公表されているはずであるが、どうやら22日から29日までの間に大幅な建て玉の変化があったものと予感させられる。
本日の株式会社コモディティーインテリジェンスの週刊経済指標で、グラフを載せてあるが、東京市場と米国市場の歪みが大きくなっている。金と原油は、東京市場が下がり過ぎであり、米国市場と為替の円安分を足したもの以上に下がっている。従って論理的には東京買いのニューヨーク売りが成立する。
また逆にシカゴのトウモロコシとシカゴ大豆は大幅に下落しているが、東京市場はそれほどまでには下落していない。つまりこちらは東京農産物価格が高過ぎるかシカゴ市場が安すぎるということになる。
具体的に数字で言えば、シカゴコーンは今年の1月4日に比べて11月1日は62.8、▲38.2%下落している。しかし、東京トウモロコシは94.9と▲6.1%しか下がっていない。その差は32.1%である。円安が有るからといっても、同期間の円安幅は12.0%である。つまり東京トウモロコシは、20.1%下がり切っていない。この場合は東京トウモロコシ売りのシカゴコーン買いが成立する。
アービトラージ(裁定取引)は最も手軽に出来てリスクが少ない取引である。間違えてはいけないのは、東京を売るだけでは片手落ちであるということだ。裁定取引は2市場間の歪みを利益化する取引であり、一方だけを取引するのでは裁定にはならない。両市場同時に取引し、また反対売買も同時に行って利益化することを裁定取引という。決してシカゴで買ったものを東京で売るのではなく、シカゴ買いのシカゴ売り、東京売りの東京買いで、少なくともどちらかで利益が出て、余程運が悪くなければ股裂きに会うことはないという理論である。しかし、必ずしも絶対ではない。その昔LTCMというノーベル経済学賞を受賞した学者が創設したファンドは、理論的には絶対に勝てる取組みで股裂きに遭って沈没した。股裂きとは買った市場の価格が下がり、売った市場の価格が上がるという、理論的にはあり得ないことが起きることである。建て玉が自分の資金以内であれば、少々の間股裂きにあっても耐えられるが、大金で大きな建て玉をしていれば評価損失に耐えられない。
金や原油はNY市場に比べて東京市場の方が下げ幅が大きい。NY金は▲20.3%下がっている。為替は12.0%円安であるので、東京金の理論値は▲8.3%である。ところが、東京金は89.5と▲10.5%安であるので、理論値よりも2.2%多く下がっている。約90円多い。しかし、だから東京金は割安なので買いだということは間違いである。正解は東京市場で東京金を買い同時にニューヨーク市場でNY金を売るという手続きが必要になる。買った東京金をニューヨークに持ち込むのではない。それぞれに理論値に近づくはずだという概念である。こうしたアービトラージを多くの人が仕掛けるために安い東京金価格は上がり、高いNY金価格は下がるだろうという憶測である。市場が発達し、流動性が増し、だれでもどこでも同じ画面で取引ができるようになりさえすれば、資金はひとつのブローカーに預けておいて、こうしたリスクの限定された裁定取引で収益を挙げる機会が増えるはずだ。

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