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過去の記事 - 2011 / 09 -

最近の商品情勢


9月23日、26日の急落から少し市場は落ち着いてきたように見える。金は1600ド
ルを超えて横ばい、原油は、80ドル前半で横ばい、トウモロコシは600セントの
後半で横ばいである。欧州ではドイツ議会が欧州安定化EFSF(欧州金融安定ファ
シリティー)の拡充法案を可決した。米国では失業保険申請者件数が雇用環境の
良否を判定する40万人を下回った。ただ、市場はそれで安心したわけではなく、
何よりも景気が低迷したままであることに苛立ちを覚えている。

国家の財政赤字と景気の悪化が一度に襲っているところに、現在の経済情勢の根
深さがある。更に、各国政府は捻じれ国会を背景とした弱い政権であることが、
物事を一層複雑にしている。

欧州金融危機は、ギリシャが借金を返済できなくなるとギリシャの証文を抱えた
多くの欧州の銀行や、ECBの資金繰りが苦しくなる。大きな不良債権を抱えて、
資金の穴が開くからだ。それを埋め合わせるためには資本の注入しかない。アイ
ルランドの例で見られるように、健全財政だったアイルランドは、銀行が不動産
関連の不良債権を抱えたために、出資・融資せざるを得なくなり、その資金が丸
丸財政赤字となって、あっと言う間にGDPの11%に上り、今度は国家そのものの
債券が紙くずになるという危険に襲われた。そのためEUとIMFが急遽資金援助を
したものだが、同じような事態が、イタリア、スペイン、あるいはフランスにも
生じるかもしれない。

EFSFは、そうした時のための資金提供を行うものであるが、飽くまで資金であり、
収益ではない。その場しのぎのお金はいずれ利子を付けて返さねばならない。

本当の解決というものは、ギリシャの国家収入が支出より多くなることである。
それには、企業や個人が金儲けをして利益を上げる必要がある。GDPであらわさ
れる経済成長は、今やほとんどの国が止まったままである。収入が増えないとこ
ろに借金ばかり増える状況である。これがどんどん進めば、一体どうなるのであ
ろうか?

リチャード・クー氏は口を酸っぱくして財政投資をするべきだと述べている。
緊縮財政は後回しにして、今は誰もお金を使いたがらないので、せめて政府がば
ら撒き財政を行うべきだと述べている。確かに、企業は、設備投資しても売れる
見込みが無いから投資をはばかっており、個人は明日の収入がどうなるかわから
ないので、消費を削っている。かっては日本の状況であったが、今や米国初め世
界中がそうなっている。唯一の頼りが中国やインドであったが、今ではそこにも
陰りが見える。

当分経済全体が沈滞する可能性が高い。つまり、価格はそれほど上がらないかも
しれない。しかし、商品先物取引というのは、株と違って売りからも自由に入れ
る。何も価格が上がらないことを嘆く必要はない。価格は動かないといってもあ
る程度は上下する。その上下動をうまくつかめば収益を上げることは可能である。

金価格動向、穀物動向

米国連邦準備制度理事会(FRB)の公開市場委員会(FOMC)のステートメントが
今朝ほど発表された。オペレーションツイストと呼ばれる短期国債売りの長期国
債買いを4000億ドル(約30兆規模で来年6月末まで行うという。償還期限3年以下
の国債を同額売却し、6〜30年物国債を購入するという、言ってみれば量的緩和
第2.5弾である。このため、米国債長期金利は1.856%と過去60年で再低の金利水
準を付けた。しかし、米国株価はSP500インデックスが3%下落、NY株価は前日比
▲283.82ドルと失望売りとなった。長期金利の低下は雇用創出や住宅市場の活性
化にはつながらないのではないかとの懐疑的な見方であろう。3名のタカ派委員
が反対票を投じたことや、銀行がFRBに預ける金利の引き下げが見送られたこと
などが政策が弱いと感じられたのであろう。円は、短期債の売却を受けた短期ド
ル金利の下げ渋り観測からドル買いとなり、少し円安に振れたが、9月中間期末
に向けたレパトリエーション(日本企業による外貨資産売りの円買い圧力)や東
京株式市場の下落を受けたドル売り圧力と、オペレーションツイストを受けたド
ル買い圧力の攻防が予想される。

ギリシャで再びデモが激化しており、ギリシャ政府がEUやIMFと公務員の削減や
増税を約束しても、それが絵に描いた餅に終わる可能性がある。IMFによれば、
EUの銀行が2000億ユーロ(約21兆円)の損失を抱えている可能性があるとレポー
トした。金額はともかく、巨額の不良債券を抱えていることであろう。米国でも
米金融大手バンク・オブ・アメリカ(バンカメ)とウェルズ・ファーゴの長期債
務格付けを引き下げるとともに、シティグループの短期債務格付けを引き下げる
と発表した。欧米の金融機関が痛んでいる。それは金価格が再び上昇する兆しと
なるだろう。

一方穀物価格は下落している。茅野先生は、USDAの需給データをまともに受け取
って、穀物価格が上昇したので、需要は減少すると見られている。しかし、小生
は、食料価格はそう簡単に需要が減るものではないと思っている。価格が上がれ
ば食べなくなるかと言えばそんなことは無いだろう。飼料の代替として考えられ
るのは、小麦であるが、コーンと大豆の不作を補う程豊作ではない。小生は、
USDAの需給データの方が恣意的な感じがすると思っている。つまり、供給が減少
しているのは、間違いない事実であるが、その供給量に見合うだけの需要は減少
せねばかずが合わないという計算だ。逆に言えば、昨年並みの需要であれば、来
年の夏にかけてコーンと大豆の在庫は枯渇し、来年9月以降の新穀が出回る前は
かなりひどい在庫の取り合いになるのではないかと思っているが、間違いであろ
うか。

ギリシャのデフォルト確率98%

5年物CDS市場では、ギリシャのデフォルト確率は98%を超えている。1000万ドル
のギリシャ国債に対するCredit Default Swapの保険料率が580万ドルを超え、デ
フォルトの際に40%が戻ってくるとすればほぼ全額となるためである。

ドイツのメルケル首相は昨日ギリシャがデフォルトになることは無いと断言した
ため欧州株価は少し持ち直したが、BNPパリバ銀行は、米ドルの借り入れが不可
能になったとブログに書かれ、否定に躍起になっている。

メルケル首相が強弁してもギリシャのデフォルトは時間の問題であるようだ。
IFMとEUが1100万ユーロの第六次融資80億ユーロを9月末までに行えなければ、
ギリシャ国民に対する年金の支払いや官僚の給料が支払えなくなると言う。
80億ユーロが融資されても12月までの資金繰りである。来年3月5月8月と大口の
返済(国債の償還)が待っている。

そもそもの発端は、80億ユーロの融資を巡ってギリシャが約束していた緊縮財政
の成果がまるで現れず、逆にGDPは悪化し、財政赤字は支出が増えて収入が減る
という事態に陥ったためである。融資団は怒って引き上げてしまった。
そのため、13日ギリシャは新たな緊縮財政案を提示し、不動産を含めた課税を
行うと提案した。ギリシャの問題点は、こうした法律を作っても、不動産の所有
者がタックスヘブンに所有権を移転したり、徴税吏がきちんと徴税しないという
絵に描いた餅になりやすいところである。

ギリシャの問題は欧州の銀行のどこかが破綻するのではないかという疑心暗鬼を
産んでいる。それは金の購入を増やす原動力となるだろう。

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