商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

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過去の記事 - 2018 / 12 -

市場とは何か その29

 長年予測の作業に従事していると、波動の流れを体感することがある。卑近な例だが、今年の夏にテニス仲間でコーチの送別会を行った時、知り合いの公認会計士が財産をすべて米国株に切り替えたと発言した。買っても買っても上がるのだよと嬉しそうに述べていた。この時私は米国株の天井を体感した。株式取引所があるビルの靴磨きが滔々と株は上がると述べたので、売ったという例と同じである。今まで関与していなかった人々までが、株は上がると言い始めた時は相場の終焉である。2007年初めからサブプライム問題が徐々に顕在化し、NYダウ平均株価は2007年10月に14,199ドルの天井を付けてから下落した。2008年9月にはリーマンブラザーズが破綻した。NYダウ平均株価は、2009年3月6日6470ドルであった。その時の安値で米国株を買っていたら、2018年1月28日の26,516ドルを付けるまで、米国株は9年間右肩上がりで上がり続けたわけである。知人の公認会計士は値上がり中の9年目の最後の年に全財産を高値で買いつかんだことになる。
原油価格が2008年7月に147ドルを付ける前、私はセミナーでこれは異常であると述べたが、多くの人には信じてもらえなかった。2016年2月に同じく原油価格が26ドルを付けた時に安過ぎると述べている。こうした異常な高値や安値は修正されやすいので、はっきりと今後価格は下がるとか上がるとか言うことができる。そうした時に耳を貸してくれる人は非常に少ない。多くの人は価格が上がっているときはもっと上がると思いたがる。そしてそれが当たる時もある。しかし、あまりにも常識外れの価格帯になれば反転することが多い。問題はどこの段階で反転するかがわからないことだ。2016年からの原油の上げ相場の時も価格は深い谷を造りながら上がっていくため少ない資金で先物投資をしているとその凹みの部分で資金をなくしてしまう。やはりウォーレンバフェットのように、ひとたび上がると思えば、少々の凹みは意に介さず、じっと耐え続けるだけの資力と気力が必要なのであろう。
今思い出しても、過去10年以上で絶対にここは上がるとか下がると確信して思ったことは数度しかない。それ以外の時は一定のレンジの幅で価格は動いている。金価格などはその典型である。もっともリーマンショック後の金価格は例外であった。当時は米国金融業の崩壊から欧州の不動産業バブル崩壊による金融機関の経営悪化、それを支える欧州各国政府の財政悪化、加えてアラブの春による革命の連鎖など、世界史史上における大きな出来事が相次いで起きた。これは金価格にとってはまたとない機会であり、初めて1000ドルを超えた時である。こうした時のセミナーはやりやすかった。しかし最近の金価格はドルの逆相関という程度しか説明のしようがない。おそらく来年はドル安に転じるであろうから金高だと述べてはいるものの、それ程深い意味はない。
結局一定のレンジ相場が長く続いて、トレンドが出るのは何年かに一度の稀有の事態であると言えよう。

市場とは何か その28

 市場における価格の動きは波動であることは間違いない。その性質をめぐって様々な価格の予測手段が考え出されている。移動平均法、ストキャスティックオシレーター、相対力指数、平均方向性指数、ボリンジャーバンド、MACD、アルティメイト・オシレーター、ワイルダー・ボラティリティー、プライス・チャネル、パラボリック、コモディティー・チャネル・インデックス、方向性指数、%R、エンベロープ、レイト・オブ・チェンジ、ろうそく足、アルーン、サイコロジカル・ライン、値動きサイコロジカル・ライン、モーメンタム、標準偏差、ヒストリカル・ボラティリティー、速度係数、累積、順位相関係数、ADオシレーター、トレンドバー、一目均衡表、平均変動レンジ、ピボット、トレンドバー、私が日頃使っているチャートソフトにはこれだけの指標が入っており、クリックすれば、それらが瞬時に現在までのチャートに表示される。

移動平均法は、商社マン時代に、多くの商品の過去10年間の価格を使って、どの商品が過去10年間では何日と何日の移動平均を使ってゴールデンクロスで買ってデッドクロスで売り、同時にデッドクロスで売り建て、ゴールデンクロスで買い戻すというしミュラーションを部屋中のコンピューターを使って土日を費やして計算したことがある。そして、それぞれの商品に過去10年間最適だった日数の移動平均をセットしてゴールデンクロスが出たらその商品を買い、デッドクロスが出たら売るという実際の取引を行ったことがある。半年ほど行った結果ほぼ収益はゼロに収束していた。検査期間が長ければ長いほど収益ゼロに収れんすることがわかった。手数料分だけ持ち出しである。移動平均法は、かなり確実性の高い指標であるため、ほとんどのチャートは移動平均線だけは記入してあることが多い。ただ、そのゴールデンクロスやデッドクロスは天井や底を通過した後で出る傾向があるため、どうしてもその分市場への参入が遅れてしまう。それを直すためのMACDや指数平滑移動平均法加重移動平均法等があるが、それはそれで、また欠点がある。一定の期間を区切って高値と高値を結んだ線を上値抵抗線とし、安値と安値を結んで下値支持線とすることはかなり信憑性があると思っている。またそうした上値抵抗線や支持線を割り込むと割り込んだ方向に価格が動くということも良く当たることである。これは、チャートを見ている人すべてが
そう思うからだという論理である。大多数の人がそう思うからそうなるということは市場心理である。逆に一目均衡表の雲は、一目均衡表は常日頃見ていないので、雲にかかったかどうかは多くの人は知らないことだと思う。だから、当たることもあり、気休めにしか過ぎないことかもしれない。当たる時期もあればそうでない時期もあるということではなかろうか。

市場とは何か その27

 私はテクニカル分析を信奉していない。商社で商品ファンドを組成した時、多くのテクニカル分析の本を読んだり、ファンドマネージャーから投資の手法としてのテクニカル分析を聞いたことがある。実際に長期波動等の分析手法のみでファンドマネージャーとなっていた人を知っている。しかし、移動平均法や相対力指数だけで相場を張っているファンドマネージャーはあまり聞いたことがない。私の結論は、あらゆる手法を時と場合に応じて使い分けるべきであるというものだ。一つのテクニカル分析手法だけで相場の世界を生き残るのは難しいということである。時宜に応じた使い分けと言うが、言うは易し、行うは難しである。また、ファンダメンタル分析をする暇がないデイトレード等短期売買になればなるほど、支持線とか抵抗線等に頼らざるを得ず、結果的にテクニカル分析で相場を張ることになる。テクニカル分析には必ず騙しと呼ばれる見せかけのサインが出る。ファンダメンタル分析でも常に理論通りにはならず、その情報を事前に市場が知っていた場合や、人々の予想通りの事実が現れる場合は、価格はファンダメンタルではこうなるはずだという常識とは逆に動くことがある。セミナーをやっていると、ご自分で開発されたテクニカル分析をご披露して評価を求める観客がいる。私は、それは良かったですね。ぜひそれで続けられたらいかがですかと答えていた。テクニカル分析もいろいろな考え方があり、絶対に正しいという方法はないと思っている。それぞれに当たることもあるし当たらないことも多いという程度である。
商社時代に作った商品ファンドは元本確保型であった。当時金利が7%ほどに高かったため、集めた資金の75%程度を7年間固定金利で運用すれば、100%以上に戻ったため、理論上元本は満期まで保有すれば100%以上に戻る仕組みであった。しかし、出資法ではそれを元本保証ということは許していなかった。なぜなら、商社そのものや、資金預けた銀行が倒産して返済されないというリスクがあるため、絶対に確実ではないためだ。だから元本確保型という中途半端な名称となっていた。ちなみに、残った25%の資金を先物市場で運用すれば、レバレッジを4倍かければ集めた資金全額を使っているのと同じ効果が得られる。また25%の証拠金が7割減ったところで、運用はすべて停止する仕組みとなっていた。つまり25%の資金の3割は戻ってくるので、先物における運用が最低の成績であっても、7年間で7%以上の金利が元本とともに返ってくる仕組みとなっていた。幸い、結果としては毎年数%の配当を生み出す成績をCTAは出してくれたので、投資家に謝りにいかずに済んだ。昨今の金利では考えられない夢物語である。
投資信託等が、自己の運用手数料を稼いだ上に、顧客に毎年一定の配当金を支払うことがいかに難しいことであるかをこの時学んだ。ファンドと言われる運用者は関係する多くの人々の収益を稼いだ上で、投資家に配当することになる。毎年配当型だと運用資金は毎年減ってしまう。また資金規模が大きくなればなるほど、それを殖やすことは一層難しくなるようだ。多くの投資信託の中でごく一部しかインデックスを上回る成績を出せないでいるが、それはそうしたコストを賄って余りある利益を出すことは至難の業だということであろう。

市場とは何か その26

 近年の証券取引は、コンピューターによるハイフリークエンシー取引が席捲するようになっている。個人投資家でも以前は株を買ったまま企業の成長を待って株を持ち続けるという長期投資が主体であった。しかし、時代とともに、より短期の利益を目指す人々が多くなっている。個人投資家は、デイトレーダーとなり、日中の数時間で大金を稼ごうとする人々が出現した。筆者はかって商社で商品ファンドを日本で初めて組成し、18人の世界屈指のファンドマネージャー(CTA)に運用を託して資産運用商品を開発した。CTAはそれぞれ自慢の投資手法を持ち、実績として収益を上げてきた経歴を持つ。だが、毎年続けて優秀な成績を残すトレーダーはほとんどいない。逆に、私が知っている優秀な実績を持つ債券ディーラーは、年に3回しかトレードをしない。それが本当かどうかは知るべくもないが、考え方としては、取引はできるだけ少なくするというのが彼の方針であった。私はこの方が理にかなっていると思っている。確率の法則で大数の法則というのがあり、これはシンプルな法則であるため、正しいと思っている。大数の法則とは、取引回数を多くこなせばこなすほど、確率は2分の1に近づくということだ。じゃんけんを1回するなら勝つか負けるかは2分の1である。2回するなら、勝勝・勝負・負負・負勝の四通りになる。3回するなら、勝勝勝・勝勝負・・・となっていき、勝ち続ける確率はどんどん小さくなり、数多くじゃんけんすればするほど、勝ち負けの回数は2分の1に近づく。投資家が狙っているのは、釣鐘型の確率分布の左端にいかに寄るかということである。つまり1万回じゃんけんをして1万回勝つ人は一人いるので、その人になることを目指している。じゃんけんをすればするほど勝ち残る確率はどんどん小さくなる。何を言いたいかといえば、アナリストとして毎日金や原油の価格を予測しているが、年に何回かだけここぞという時がある。たとえば、金の場合はファンドの売りポジションが過去最大になっていれば、そろそろ金価格はファンドが買い戻して上がるのではないかと思う。また原油価格が下げに下げて25ドルになったときは、30ドル前後の頃からそろそろ原油価格は反発するだろうと確信を持つ。極端に行き過ぎた場面では逆張りは有効である。それでも天井と底を取ることは難しい。しかし傾向は何となくわかる時がある。くだんの債券投資家はそうした相場に確信を持った時だけ投資するのである。
明日は晴れるかと毎日聞かれれば、そう毎日はわからないと答えるのが常識であるが、そろそろ冬になるので寒くなるだろうという言い方なら、この時期なら、かなりの確率で当たるだろう。賭け事は、それ程確実な時だけするべきである。

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