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過去の記事 - 2014 / 12 -

株価の時代から商品の時代となるか?

2013年〜14年にかけては株式投資の年であった。昨年1月4日を100として、12月22日の価格を指数で見ると、世界のほとんどの国の株価が上昇したことがわかる。日経平均株価+65%、S&P500+41.7%、インドセンセックス+40%、ドイツDAX+26.9%、ベトナムVNI+26.2%、台湾加権+16.5%、ジャカルタ総合指数+16.2%、上海B株+15%、豪州オールオーディナリーズ+14.2%、フランスCAC+14.1%、タイSETI+8.5%、英国FTSE+8%、シンガポールFTSTI+3.3%、マレ−シアKLSE+3.0%と、大半の株価が上昇している。下落したのはロシアロイター▲48.5%、ブラジルボベスパ▲19.8%、韓国▲3.4%である。21市場中18市場が上昇している。
一方この二年間で、商品は33銘柄の中で、値上がった銘柄はパラジウム、コーヒー、プラチナ、粗糖等7銘柄に過ぎず、残り26銘柄は昨年から下落している。
この状況から来年を予測すると、高くなった株価に更に投資する資金は少なくなり、投資家は他の割安な資産を物色するであろう。その中には下落している商品が、投資の対象として見直される可能性がある。高くなったものは売られ、安いものが買われるが世の常である。2015年はそろそろ商品の時代が復活するのではなかろうか。
ただ、個別銘柄で見ると先行き不透明である。金には上昇要因が見当たらず、プラチナは上昇要因があるにもかかわらず市場が反応していない。原油は短期では反発すると思っているが、その後は100ドルにまで行く程の理由はない。穀物は今の段階で云々できるものではなく、南米の天候や来年の作付、春先の天候など今後の要因次第であろう。やはり商品価格はその時々の情勢を見ながら判断していくほかないようだ。

12月9日までのファンドの動き

先週12月8日のこの欄で紹介したファンドの動きからはその後の原油価格のさらなる下落は予想できなかった。もう底かと思われたが、『もうはまだなり、まだはもうなり』の格言通り、さらに深い底があった。NY原油価格はついに60ドルを割り込んで2009年5月以来の50ドルまで下落している。12月9日時点のファンドの建て玉でみると、NY原油に対する大口投資家のネット買い残は2週連続で増加し、+約2万5千枚が買われてネット買い残は29万5千枚に増加している。一方売り残は11万1千枚と前週より+300枚の増加である。これにより想像されるのは、商品に素人な証券投資家が原油の下落を見て売りを入れ、ファンドはそろそろと空売りを買い戻して、素人の買いに当てはめつつあるように思われる。いずれにせよ今から原油を売ることは禁物で、買うなら絶好だと思われる。ただしもう少々下がる可能性はあり得ることを承知されたい。

他に12月9日時点のファンドの動きで目立つのは、NY金のネット買い残が4週連続で増加していることであろう。ただこれも、今週16日から17日にかけて今年最後の米国連邦準備制度理事会による公開市場委員会(FOMC)があり、11月の雇用統計が予想外に良かったことから「Considerable Time」の文言がはずされるかもしれない。それは利上げの時期が早くなる可能性を示唆し、金利のつかない金価格を押し下げる要因となる。Goldman Sachsは来年の金価格を予想して1050ドルになると下落基調を述べており、今週のネット買い残の増加がどの程度強い意味を持つのかどうかはわからない。銀は6週連続で買われており、プラチナは3週連続の買いと貴金属は買われている。トウモロコシと大豆もそれぞれ、+3万1880枚、+2万7743枚と大幅な買い越しであり、トウモロコシは、1週を除いて8週連続で増加大豆は3週除いて6週連続の増加である。

株価が高くなっているので、新規投資は手控えられるだろう。またクリスマス休暇が迫っているため、これまで積み上げてきた建て玉は閉じられる可能性が高い。その意味で原油価格は反発上昇するものと予想できる。

12月2日までのファンドの動き

12月2日の週までの米国商品先物取引委員会(CFTC)のファンドの建玉の動きを観察すると、ネット買い残が増えているのは、金、銀、プラチナ、原油であり、ネット買い残が減少したのは、砂糖、大豆、大豆油、天然ガス、円である。
その内訳を見てみると、買い残が増えているのは、金、原油、大豆油であり、売り残が減っているのは、金、銀、プラチナ、原油、ヒーティングオイル、天然ガスであり、売り残が増えているのは大豆、大豆油、トウモロコシである。
これらを見て要注意と見られるのは、原油の売りが1万6千枚も減って、買いが4千8百枚増えていることであろう。ファンドの動きから見ると、原油価格は安過ぎるとの見方が芽生えていることがわかる。それでも原油の売り残は11万枚もあり、ピークの13万9千枚(10月14日)からは減少しているが、まだ7月頃の8万枚台からは多い水準にある。 
トウモロコシと大豆が5月頃から売られて価格が下がり、10月初めからそうした売り残が買い戻されることにより、豊作という需給状況にほとんど変わりが無いにもかかわらず価格が反転上昇したことはファンドの売り残が買い戻されたためと思われる。金についてもある程度そのことが言えるが、今度は原油の番だと思われる。

原油の需給は緩んでいるが、それは今に始まったことではない。市場が気が付かなかったか無視していただけのことである。IEA(国際エネルギー機関)が新興諸国の景気の伸びが鈍化したことを受けて9月まで毎月世界の原油需要を下方修正したことが、原油価格下落のきっかけとなっているが、10月11月とIEAは世界の原油需要を大幅に上方修正している。

原油価格が下落することは世界の経済に良いことでもあるが、同時に、様々なアンバランスが生じる元凶となる。たとえば、産油国の収入源により、巨大なオイルダラーの還流が止まれば、世界の資金の動きにブレーキがかかることになる。さらに石油開発関連企業の業績が悪化すれば、そうした企業の株価は下落し、石油開発投資意欲が減退するなど、原油価格下落は必ずしも恩恵ばかりではない。60ドルを下回るような価格に仮になるとすれば、サウジアラビアも価格競争などをやっている場合ではなくなり、減産のアナウンスを流すものと予想され、それはファンドのショートポジションが先を争って買い戻す動きにつながる。
商品投資において行き過ぎた価格の是正に賭けることは比較的安全なものである。ただ、まだ一押しあるかもしれないことは投資家のみなさんなら百も承知であろう。

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