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石油無機起源説について

  • 2015-02-09 (Mon)
  • 近藤雅世
  • 原油

2月6日の日本経済新聞朝刊『ニュースな科学』というコラムで『石油いずれ枯渇どうなった』という記事が出ていた。そこに私は初めて「石油無機起源説」に関して主要マスコミが取り上げるのを見た。私はこの説を2005年7月に、日本エネルギー経済研究所の総合戦略ユニット主任研究員中島敬史氏のセミナーで聴いた。同氏はすでに日本エネルギー経済研究所を退職している。ちなみに中島敬史でサイトを検索すると石油無機起源説のレポートが出てくる。またそれに対するいかがわしげな反論のブログも見ることができる。
ただ、同氏が出席して報告した米国石油地質家協会(American Association of Petroleum Geologists、AAPG)は正規の機関であり、同協会の主催で2005年6月19日からカナダで開催された総会で、有機起源説と無機起源説が互いに論陣を張り合い、その根拠を主張し合ったことは事実である。その後も石油業界が支配する世界では有機起源説つまり、石油は化石燃料だという理論が主流を占めている。しかし、無機起源説はロシア学会では信じられており、また、その例証として多くの超深度油田から、つまり生物の住んでいない世界から原油が採掘されていることも事実である。また、最近の海外の文献では「fossil fuel」という言葉より「hydro carbon fuel」という言葉を多く見かける。日本では石油や天然ガスのことを化石燃料と総称することが多いが、海外では炭化水素燃料と言い始めているのではないかと思われる。
私がこれまで、何よりも不思議に思っていたことは、原油の確認埋蔵量が毎年増加していることだった。綿日は大学時代に石油は40年後には無くなると習った。しかし、それから40年経った今でも、石油資源量はその当時よりも増えている。世界の原油確認埋蔵量は毎年増加しているが、その消費量も増加しており、両方のグラフを足すと大きく右肩上がりに上昇している。つまり、原油の確認埋蔵量は毎年増えるばかりではなく、毎年消費した以上に増え続けているのである。数年前に石油枯渇説が出た時に、それは絶対に嘘だと思った。だからゴールドマンサックスが主張したピークオイル論によって、2008年7月NY原油価格が147ドルにまで急騰した時、私はセミナーなどで絶対に下がると強く主張できた。なぜなら、石油無機起源説を半ば信じていたからだ。なぜ無機起源説が話題に上らずピークオイル論が世にはばかったかは、その方が、都合が良い産業があったせいだと思っている。
さて、無機起源説は、中島氏の報告によると、古くはメンデルが唱えた説であるが、スターリンが第二次大戦中に枯渇しつつあったカスピ海の油田を何とかするために、原爆を開発するほどの費用をかけて石油の成り立ち、存在場所等を学者に研究させ、その研究から出てきたのが、地下のマグマが炭素と酸素を高温高圧下で圧縮して原油を生成しているという無機起源説であった。生物の化石の入っていない原油は実際にあるが、ダイヤモンドの微細な結晶が入っていない原油はないなどが根拠であった。また、生物の化石は原油を組み上げる途中の地層から混入されたものだという。それが事実であるなら、それまでは背斜構造など、地質学的に微生物の化石が貯まる場所を掘ってきたが、全く発想を変えて既存油田をさらに超深度で掘れば原油が復活するというアイデアであった。そうした油田を3000メーター級の深度で掘るにはたいへんな費用がかかる。しかし戦時中のスターリンは、燃料不足の方が恐ろしく、その案を実行し見事カスピ海の、すでに枯渇したと思われていた油田を掘り下げて原油が噴出したのである。戦後その技術はロシアの超深度掘削技術となってイエメン、マレイシア、ベトナム等の油田に応用され、米国でも実験室で炭化水素を圧縮することで原油を生成することを確認し、メキシコ湾のユージンという海底油田を掘り下げたところ油田が復活した。その知識を元に現在の頁岩に貯まっているシェールオイルやガスも発見されている。そもそも硯(すずり)石のように固くて深い基盤岩の中に上層の地層から化石の死骸が貯まることがあるのだろうか。今でもシェールオイルの解説にはそうした記述がるが、地下深くからマグマが作った炭化水素が上昇して基盤岩に貯まり油床を作っていると考えた方が自然であると思うのは石油学会に属さない私の素人考えであろうか。いずれにせよ、原油の供給は多いので、価格が少々上がったところで、将来100ドルを越えて上昇することは無いように思える。
以 上

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