過去の記事 - 2015 / 02 -
NY金価格は近いうちに下落するのではないだろうか
- 2015-02-03 (Tue)
- 近藤雅世
- 金
2015年2月3日 NY金価格は下がるかもしれない。
以下は昨日書いた週刊ゴールドのエッセンスを解説したものであるが、NY金は、1月2日の終値1186.2ドルから2月2日の1276.2ドルまで、90ドル、約7.6%上昇している。最近2015年の金価格を予測したレポートが2つ出ている。一つは1月28日に発行されたLondon Bullion Market Association(LBMA)による2015 LBMA Forecast Survey であり、もう一つは、1月29日に発行されたGFMS Thomson Reutersの1 Year Outlook for Gold 29th Jan 2015 –Base Caseである。前者のLBMAのレポートは、31人の貴金属アナリストによる2015年の貴金属価格予測アンケート調査の平均値であり、それぞれのアナリストはなぜそう思うのかという根拠とともに価格を予測している。後者は貴金属の情報機関であるGFMS Thomson Reutersが今後1年間の需要と供給を予測したうえで価格を予測しているものである。
前者の2015年の金価格は、2014年平均が1,267ドルであったのに対し、2015年上半期は1218ドルと昨年より▲49ドル値下がりすると見ており、2015年平均では1211ドルと上半期より更に7ドル下がって前年比では▲56ドル安となっている。
後者の2015年の金価格は、通年平均で1,170ドルと昨年より▲97ドル安となっている。
さて、どちらも1月末に発行されていることに注目されたい。つまり、2015年の貴金属価格を予測しているにもかかわらず、内容的には1月中旬までの価格の動き、つまりNY金の値上がりを織り込んだ予測である点が注目される。昨年に作成されていたのでは、年初からの上昇局面を予測することはかなり難しかったと思われる。
現在の金高はドル高と並行しているという点で異色な現象である。ドル高でも金高であるということは、ドル建て金価格は余程の上げ要因がなければならない。しかし、実際にはそれほど金が買われる要因は無い。株価は上昇しており、債券価格も高い。資産のセーフヘブンという金の役割は見当たらない。物価上昇率は低く、世界的にデフレが懸念されているのでインフレ懸念の金の役割も見当たらない。あるとすれば、ギリシャの総選挙結果による極右政党の政権と欧州金融機関とのせめぎ合いによるギリシャ国債のデフォルト懸念であるが、2月2日のギリシャ国債の金利は11.39%と二桁台には乗っているものの、急騰はしてはいない。以前はギリシャ国債のデフォルト懸念が、ポルトガルやアイルランド等に波及して欧州全体の財政危機が欧州金融機関の不良債権の増加を連想させたが、今回はギリシャ単独の問題であり、以前程のマグニチュードは無い。スイスフラン高によるショックも一時的なものとして沈静化しつつある。ユーロドルは1月20日1.1549まで下がったがここ数日は盛り返し1.134まで上昇してる。米国の利上げは今年下半期にあるという前提は、昨年末から崩れておらず、後送りされるという観測は今の処なくなっている。欧州の金融緩和は予定通り行われているが、それが金価格を上げる主要要因とも思えない。
つまり、現在までの金価格上昇にはファンダメンタル的には確たる根拠はないということになる。それではなぜ金価格が上がっているかというと、ファンドの買いが旺盛だからだ。NY金に対するファンドの買い残は1月27日65万枚に上っている。この買い枚数は、2012年10月9日以来2年3ヶ月ぶりのことである。売りは減少しているので、ネット買い残は12月23日の週を除いて9週連続で増加している。要するにファンドが買っているから価格は上がっているのであったがその根拠は薄い。ということは過去最大に近く貯まった買い残はどこかで売り閉じられるはずである。
従って、金価格は少し反落する可能性が高いのではないかと推測する次第である。
以 上
以下は昨日書いた週刊ゴールドのエッセンスを解説したものであるが、NY金は、1月2日の終値1186.2ドルから2月2日の1276.2ドルまで、90ドル、約7.6%上昇している。最近2015年の金価格を予測したレポートが2つ出ている。一つは1月28日に発行されたLondon Bullion Market Association(LBMA)による2015 LBMA Forecast Survey であり、もう一つは、1月29日に発行されたGFMS Thomson Reutersの1 Year Outlook for Gold 29th Jan 2015 –Base Caseである。前者のLBMAのレポートは、31人の貴金属アナリストによる2015年の貴金属価格予測アンケート調査の平均値であり、それぞれのアナリストはなぜそう思うのかという根拠とともに価格を予測している。後者は貴金属の情報機関であるGFMS Thomson Reutersが今後1年間の需要と供給を予測したうえで価格を予測しているものである。
前者の2015年の金価格は、2014年平均が1,267ドルであったのに対し、2015年上半期は1218ドルと昨年より▲49ドル値下がりすると見ており、2015年平均では1211ドルと上半期より更に7ドル下がって前年比では▲56ドル安となっている。
後者の2015年の金価格は、通年平均で1,170ドルと昨年より▲97ドル安となっている。
さて、どちらも1月末に発行されていることに注目されたい。つまり、2015年の貴金属価格を予測しているにもかかわらず、内容的には1月中旬までの価格の動き、つまりNY金の値上がりを織り込んだ予測である点が注目される。昨年に作成されていたのでは、年初からの上昇局面を予測することはかなり難しかったと思われる。
現在の金高はドル高と並行しているという点で異色な現象である。ドル高でも金高であるということは、ドル建て金価格は余程の上げ要因がなければならない。しかし、実際にはそれほど金が買われる要因は無い。株価は上昇しており、債券価格も高い。資産のセーフヘブンという金の役割は見当たらない。物価上昇率は低く、世界的にデフレが懸念されているのでインフレ懸念の金の役割も見当たらない。あるとすれば、ギリシャの総選挙結果による極右政党の政権と欧州金融機関とのせめぎ合いによるギリシャ国債のデフォルト懸念であるが、2月2日のギリシャ国債の金利は11.39%と二桁台には乗っているものの、急騰はしてはいない。以前はギリシャ国債のデフォルト懸念が、ポルトガルやアイルランド等に波及して欧州全体の財政危機が欧州金融機関の不良債権の増加を連想させたが、今回はギリシャ単独の問題であり、以前程のマグニチュードは無い。スイスフラン高によるショックも一時的なものとして沈静化しつつある。ユーロドルは1月20日1.1549まで下がったがここ数日は盛り返し1.134まで上昇してる。米国の利上げは今年下半期にあるという前提は、昨年末から崩れておらず、後送りされるという観測は今の処なくなっている。欧州の金融緩和は予定通り行われているが、それが金価格を上げる主要要因とも思えない。
つまり、現在までの金価格上昇にはファンダメンタル的には確たる根拠はないということになる。それではなぜ金価格が上がっているかというと、ファンドの買いが旺盛だからだ。NY金に対するファンドの買い残は1月27日65万枚に上っている。この買い枚数は、2012年10月9日以来2年3ヶ月ぶりのことである。売りは減少しているので、ネット買い残は12月23日の週を除いて9週連続で増加している。要するにファンドが買っているから価格は上がっているのであったがその根拠は薄い。ということは過去最大に近く貯まった買い残はどこかで売り閉じられるはずである。
従って、金価格は少し反落する可能性が高いのではないかと推測する次第である。
以 上
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