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過去の記事 - 2019 / 08 -

逆張りの季節

投資で最も儲かる時期は、誰も思ってもいない状況で投資することだ。たとえば金投資で言えば、今年の5月にNY金なら1,300ドルで買っていれば、また東京金なら4,500円で買っていれば、1,537ドル、5200円の現在、237ドル、あるいは700円の約16%の利ザヤが稼げた。果たしてこの時期に的確に金を買うことができたかと言われれば極めて疑問であり、またその後の上昇局面でもまだ上がるとは思えなかった。これまでのところの正解はまだ上がるから買うべきであった。こうした順張りはなかなか難しいが、金価格が上昇した背景を考えればどこまで続くかはある程度予想できる。一つはマイナス金利であり、これは大資産家が今後預金に対して手数料がかかるようになるため預金を引き出さねばならないことがある。もう一つは外貨準備としての政府保有金が今年も積み上げられるものと思われる。しかし、そろそろ高値ではないかとの雰囲気もあり、ファンドのネット買い残は過去最高に積み上がっている。すでに大きな評価益を持っている投資家は価格が急落するまえにプロフィットテイクをする頃ではなかろうか。

昨年秋にセミナーで金価格は上がるだろうと述べた時は、聴衆は半信半疑であった。私の根拠は金価格は2018年夏に1167ドルまで下がっていたため、そろそろ上がるというニュアンスであった。人々が半信半疑な時は振り返ってみるとかなり当たる。しかし、通常金に興味を持っていない多くの人々が金は高いから買うべきだと言い始めると、そろそろ売り時だなと思う。今はその時期ではなかろうか。少なくとも今から買うよりは売る方が期待値は大きいと思う。

マイナス金利で溢れ出た資金が徘徊する限り

トランプ大統領はFRBが更に利下げを行うことを強要している。来年の大統領選挙の時に景気が悪化すると選挙戦に悪影響が出るためだという。
現在日本銀行を初め世界の中央銀行は、金利をゼロ以下の異次元な利率としている。これは、投資家が資金を低コストで借り入れて、新しい事業や企業に投資を促進することを促すためである。問題は新しい魅力的な投資先が見当たらないことである。安部政権の第三の矢が成就していないことが、すなわち世界経済全体の問題となっている。
銀行に預金をしている超大金持ちは、マイナス金利で金利を支払わなければならなくなっている。今や世界で販売されている債券の25%はマイナス金利だという。数百万ドルの預金を保有する資産家の負担は小さくない。そうした資産家は預金を引き出してどこかに投資する必要があるが、その投資先に困っているものと思われる。資金の一部は安全資産と言われる金や円、スイスフランといった優良資産の購入に充てられている。
これが金価格が1500ドルを超えている一つの原因であろう。となれば、マイナス金利がプラスとなるまでの間はこの流れが続くかもしれない。先週この稿で、ファンドの買い残が過去2番目に多いので、そろそろファンドが手仕舞い売りをする可能性があると書いたが、底流にある優良な投資先を見つけることのできない資金が世の中を徘徊している限り、ファンドの売りもそうした資金による金買い投資で打ち消される可能性がある。売っても売っても買われるならファンドは再び金を買い持ちするかもしれない。
 中国を初めとする新興諸国の経済が低迷気味で、世界に新たな実需が生まれ難い状態になっている今、潤沢な資金を持った投資家がどうするかを考えれば、金価格は一時的な調整局面があっても、再び買われるかもしれない。

米中冷戦と金原油価格

最近の金価格や原油価格は、トランプ大統領の発言によって動いている。9月1日に中国の製品3000億ドル相当に対して10%の関税を課すと言ってみたり、中国が譲歩するなら課税措置を引き下げることもあると言ってみたり、25%の関税を課すと言ってみたり、その都度金価格はセイフヘイブンとして上昇し、景気悪化で企業が投資を控えるため原油等の需要は落ちるとして石油価格は下落している。こうした事象、つまりトランプ大統領が次に何を言うかを前もって予想できたであろうか? 中国との事務レベルの交渉は何度も会議が行われたが妥協点が見いだせなかったことはニュースでわかっていた。しかし大阪で開催されたG20サミットではトランプ大統領と習近平国家主席は会談を開き、会談直前には課税すると述べていた措置をトランプ大統領は取り下げていた。

大和総研のレポートによれば、表向きの理由は7月31日に上海で行われた米中閣僚級協議で進展が見られなかったことだという。しかし同レポートが推測するに➀ 北戴河会議と10月1日の建国70周年記念式典を目前に控えた習近平国家主席の面子を潰し、中国内政における求心力を殺ぐ目的があったという。◆ヾ慇任糧動により米国経済が受ける打撃を軽減する財政金融政策の準備が整ったことも見逃せないと指摘している。FRBが利下げと共にバランスシートの調整を早々に打ち切るとしたこと、及び共和党・民主党が歩み寄り、債務上限と裁量的支出上限の両方が10月からの会計年度で引き上げられることになった。こうした前提を読み解いていれば、トランプ大統領の発言もある程度予測できたのかもしれない。また、米国内経済への影響を配慮して25%の課税ではなく10%としているという。企業は25%の課税に引き上げられる前に生産国を中国から他の国に移転する時間稼ぎだともいわれる。

今後の焦点は中国の出方であるが、妥協することはまずないだろう。報復関税も昨年行ったが、中国国内にも打撃を与える。米国の対中強硬策は、トランプ大統領独りの発案ではなく、超党派の意見だというから、米国が中国からの何の反応もなく措置を撤回することはないだろう。逆に中国は貿易という枠組みを超えた問題で米国に対抗しようとするかもしれない。いずれの場合も金買い、原油売りの市況は続くことになりそうだ。

噂と価格

先日知り合いと話をしていたら、以前原油価格が147ドルまで上昇したのは、ゴールドマンサックスのやらせだったのですねと確認された。その通りであり、私は当時からそのことを知っていたため、原油価格が上昇するたびに、これは架空の価格ですよとセミナーで説いて回っていたが、現実には原油価格はどんどん上がり2007年1月の51ドルが、2008年7月には147ドルまで上がったものである。その後急落して2009年1月には33ドルになった。3倍増の5分の1まで低下というチャートである。
商社にいる頃は、現物中心の仕事であったため、こうした需給を反映しない金融商品的な動きにはついていけなかったが、ファンドの世界を経て金融の世界に入ると、こうした人々の噂が価格を形成することが往々にしてあることがわかった。逆に商社の時代はパラジウムで代表されるように、価格は需給で決まると思っていた。パラジウムの場合は、自動車メーカーすべてとローム、TDK、京セラ、村田製作所、太陽誘電等のコンデンサーメーカーが価格に糸目をつけずパラジウムを必要としており、大量の注文が私のいた商社に入った。そのためロシアや南アに飛んで、かき集められるだけのパラジウムを買い込んだものである。先物取引がある商品は価格を無視して買えば良い。またメーカーは少々の材料価格の値上がりなど、工場を止める損失に比べれば何のことはない。そんな当時ある商品取引員の方から、パラジウムは高過ぎますよねと聞かれ、「そんなことはありません、どこまででも上がります」と答えたことを覚えている。需給さえ見ておけば価格の予測は容易であったため、未だに、商品価格の予測を需給から追っている。最終的には商品価格は需給で決まると思っているが、噂が価格を形成することもよくある。
ゴールドマンサックスのピークオイル論は、やらせのポジショントークであったことは今でははっきりしている。いや当時からはっきりしており、私はそれを説いていたが、価格は私の言う通りにはならなかった。
需給がタイトでなくとも、タイトだと人々を思わせれば、少なくとも一時的に価格を操作することは可能である。ネット時代は噂は以前より早く広まりやすい。噂に乗って取引するのも良いがあくまで噂に過ぎないという冷静な判断もするべきであろう。

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