商品相場専門のアナリストが、独自の視点で最新の相場動向を分析! 先物投資で利益を上げるためのコツとファンダメンタルが学べます。株式、為替以外をポートフォリオに!と考えている投資家にもおすすめです。

Home > 過去の記事 > 2017 / 05

過去の記事 - 2017 / 05 -

OPEC減産で原油価格急落の怪

先週5月25日OPEC総会で減産決議がなされたとき、価格は暴落した。
OPEC総会に集まった各国の石油大臣は、完璧な合意形成をみて、予定された6か月より3か月長い9ヵ月の減産合意ができたとこれを祝っていたところ、その報道がなされた直後の市場価格が▲5%下落して51ドルになったことをセルフォンで見た大臣は当惑し「とんだ災難だ」と叫んだ。

イランの石油大臣Bijan Zanganehは、「20年もの間OPEC総会に出席しているが、これほど完璧に100%合意が形成されたのは初めてだ」とのべ、「ふつうならこの減産決議で価格が上昇するには十分なはずだ。どうして下落したのか信じられないと驚いていた。

ある石油コンサルタントは、OPECは減産を延長することをあまりにも早く、何度も事前に言い過ぎたと言う。また、市場は欲張りで、9ヵ月ではなく、12ヵ月の減産延長を期待しており、2018年まで減産が行われることを望んでいたようだという。

null

市場は常にサプライズを求めている。予想外のことが起きれば価格は大きく動くが、今回のように既に織り込み済みのことが確認されただけでは、買われていた建玉が売り閉じられて暴落する。
OPECの減産もあまりに長く、多くの人が減産すると述べ過ぎていたのだろう。OPECの戦略としては、イランやリビア、ナイジェリア等が増産を求めており、なかなか決まりそうにないと事前に噂を流しておけば、この逆の現象が起きたことだろう。

このことは、6月14日の米国の利上げについても同じことが言える。米国金利が上がれば通常ドル高になる。しかし、余りに事前予想で利上げが確実視されれば、いざ本当に利上げがあった瞬間から買われていたドルは売られはじめ、円や金の価格は上がることになるだろう。

ただ、原油のチャートでわかるように、急落した直後には再び反発しているので、減産の効果はその後は出てくるものと思われる。金もまた然りであろう。

金やプラチナは買い時

先週5月17日VIX恐怖指数は15.59に突然飛び上がって、22日には10.93に落ち着いている。NY株価も17日は20606ドルまで下落してその後22日には20894ドルに回復している。この日トランプ政権でFBI長官が罷免され、議会により特別検察官が指名されてロシアンゲートの調査が始まることになってためである。当のトランプ大統領は議会に予算を提出したまま、初めてのG7会合に出発してしまった。大騒動は一日で沈静化したが、これは看過できないものと思う。いわゆるトランプ大統領への期待がいよいよ失意に変わった瞬間だと思うからだ。米国株価は米国経済に問題がないため、高値を保っているが、いつ下落を初めてもおかしくないと思う。6月14日にはFOMCにより利上げがあるかもしれないが、その確率は少し下がって70%になっている。金価格は利上げが近づくと下落する性質を持っているが、利上げが行われると反発して上昇する性質もある。

null

null

null

昨年11月4日のトランプ大統領が当選した日を100とした指数でNY金とダウ平均株価を比較すると、5月22日ダウ平均株価は7.49%上昇しており、金価格は6.12%上昇している。金も捨てたものではないが、金価格は今後6月かけて下落局面を迎えてその後上昇局面となると思う。なぜなら、株価に値上がり期待の妙味が薄れ、リスクオフから資金が他の資産に廻るのではないかと思うからだ。その一つが金であり、これから値下がったところは絶好の買い場となると思う。
また投資は安く買って高く売るというのが鉄則であるなら、今お安く見えるのはプラチナである。いつまで経っても上昇しないプラチナには何かあるのではないかと勘繰りたくなるが、非常に長期で持つ構えでいれば、安いプラチナは買い時である。南アのプラチナ鉱山は、今年は全社が赤字となるだろう。中には身売りしたり、操業を縮小するところも出てくるかもしれない。ひょっとしたら、倒産という事態も考えられる。プラチナは非常に希少な金属であり、簡単に他で作れるものでもなければ、触媒作用を代替する商品は無い。超高温に耐えるため、溶鉱炉の温度計にもない、ガンの特効薬としても昔から知られている。ガラス工場の設備にはプラチナが欠かせず、石油化学工場はプラチナがなければプラスチック等の化成品は作れない。自動車がガソリンや軽油を使わずに電気自動車になるには時間がかかるだろうし、燃料電池だと、水素を作る改質装置にプラチナは必要だし、激しい反応で腐食する電極はプラチナ以外は考えられない。今後10年とか15年持つつもりであれば、プラチナ価格はいずれ花咲くと思っている。

null



原油価格は1ドル上昇

5月15日のNY原油価格はサウジアラビアとロシアが減産期間を延長する必要があるとの見解で一致したことから+1.01ドル上昇して48.85ドルとなった。5月5日一時43.76ドルまで下落したときから比べると、+5ドルほど上がっている。
しかし、原油価格が上昇トレンドにあるかと聞かれればなかなか肯ずる(がえんずる)ことはできない。なぜならこれは口先介入に過ぎないからだ。守られるという保証はないし、OPECや一部の非OPEC諸国が減産したからといって世界の需給が引き締まるとも思えない。IEA(国際エネルギー機関)もOPECもOil Market Report5月号でそれぞれ今年後半の非OPEC諸国の生産量は増加すると予想供給量を上方修正している。OPECの5月のOil Market Reportでは2017年の非OPECの供給量を前年比日量+95万バレル増の5825万バレルとしている。4月の予想の5,789万バレルから+36万バレル上方修正している。これは米国、ブラジル等が予想以上に増産するためだ。だからOPECとロシア等が減産しても米国のシェールオイル生産の採算が採れて増産すれば、世界の需給の均衡は遅くなるだろう。もっともIEAは既に需給は均衡していると述べている。3月は世界の民間在庫は2ヵ月連続で減少しているという。また先週の米国原油在庫は前週比▲820万バレルという大幅な減少を見せた。こうしたことで供給過剰は緩和されていることが示されているが、米国のペルミアン油田等採算の良いシェール油田の稼働リグ数は増加している。
25日のOPEC総会で減産が正式に決定されても、実態としては今後夏場になり、冷房用電力需要やカークーラー用ガソリン需要が増大するため、石油需要の増加に合わせて原油の生産量は増加する。見かけ上のこうした増加を市場がどう評価するのかわからない。少なくとも心理的にはやはりOPECの言うことは口先だけだと思われるかもしれない。そもそもアラブ人の言葉は信用できないという固定観念もある。

凪が続く商品相場

フランス大統領選挙による欧州分裂危機が回避され、北朝鮮に対してはトランプ大統領が中国を通じての対話の呼びかけを行っている。また中国が北朝鮮からの石炭の輸入を絞り経済的圧力をかけ始めている。金正男に平衡感覚があるなら原爆開発と経済的安定の天秤の重さを量ることだろう。こうして地政学的リスクが一段落し、次はギリシャの債務返済期限の7月17日まで波乱の兆候は見られない。その間に6月14日の米国のFOMCが控えており、市場ではほぼ利上げが確実と読んでいる。それは金価格の下落を呼ぶであろう。これまでの金価格は利上げが近づくと下落し、利上げが行われると上昇するという繰り返しとなっている。噂で売って事実で買えである。

ギリシャの後はイタリア、ドイツとEUの結束を揺るがす選挙があるがいずれも今秋である。

原油については、OPECが盛んに原油の7月以降の減産延長を口先介入しているが、事実としては、今後原油の需要期を迎えるので、生産量は増加せざるを得ず、どこまでが減産かという議論にもなるだろう。ただ、原油価格が再び45ドル前後まで下落しており、米国のシェールオイルの増産には歯止めがかかるかもしれない。掘削リグ稼働数が増加しているのは、テキサス州とニューメキシコ州にまたがるPermian油田が大半であることもその事実を裏付けている。生産性は改善しているとはいえ、掘削リグのコストが上昇しており、かっては40ドルでも採算が取れた油田がコスト高になりつつあるという。45ドルを下回ってくると米国の増産基調は止まるかもしれない。いずれにせよ、原油価格が60ドルまで上がるような情勢は感じられない。

投資の合間

日本は連休に入るが、商品相場も凪(なぎ)の状態のようだ。北朝鮮の問題と5月7日のフランス大統領選挙が地政学的リスクであり、これらに大きなサプライズが無い限り、金や原油価格にはそれほどの動きはないだろう。投資もいつもすると損失が膨らむ。何もしないことも投資の一形態であり、せわしなく動くことばかりが投資ではない。ここは連休でゆっくり休みお金を増やすことは一時休止とするべきだろう。
トランプ大統領の100日は何とか無難に乗りこなしたように見える。米国株価は昨年11月4日以来+13.8%上昇しており、ドルインデックスは+2%上昇している。いずれも金価格のパフォーマンス▲2.9%を上回っている。大統領支持率は40%と低迷し、歴代大統領で最低となっているが、今のところアナリストが期待している大失態には到っていない。当面は暫定予算だが、暫定予算の暫定予算が組まれてとりあえず政府閉鎖にはならないで済んでいる。100名の下院議員をホワイトハウスに招いて秘密会合を行い、彼なりになんとか議会工作をしているようだが、その成果は市場が期待する減税やインフラ投資の成否にかかっている。その展望は資金不足のためほとんどないが、まだ可能性がゼロになったわけではない。
20170501-17050101.png
20170501-17050102.png

過去の記事

Home > 過去の記事 > 2017 / 05

1. 免責事項
  • 掲載される情報は株式会社コモディティーインテリジェンス(以下「COMMi」という)が信頼できると判断した情報源をもとにCOMMiが作成・表示したものですが、その内容及び情報の正確性、完全性、適時性について、COMMiは保証を行なっておらず、また、いかなる責任を持つものでもありません。
  • 本資料に記載された内容は、資料作成時点において作成されたものであり、予告なく変更する場合があります。
  • 本文およびデータ等の著作権を含む知的所有権はCOMMiに帰属し、事前にCOMMiへの書面による承諾を得ることなく本資料およびその複製物に修正・加工することは堅く禁じられています。また、本資料およびその複製物を送信、複製および配布・譲渡することは堅く禁じられています。
  • COMMiが提供する投資情報は、あくまで情報提供を目的としたものであり、投資その他の行動を勧誘するものではありません。
  • 本資料に掲載される株式、債券、為替および商品等金融商品は、企業の活動内容、経済政策や世界情勢などの影響により、その価値を増大または減少することもあり、価値を失う場合があります。
  • 本資料は、投資された資金がその価値を維持または増大を保証するものではなく、本資料に基づいて投資を行った結果、お客様に何らかの障害が発生した場合でも、COMMiは、理由のいかんを問わず、責任を負いません。
  • COMMiおよび関連会社とその取締役、役員、従業員は、本資料に掲載されている金融商品について保有している場合があります。
  • 投資対象および銘柄の選択、売買価格などの投資にかかる最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。
  • 以上の点をご了承の上、ご利用ください。
2. 商品先物取引の重要事項
商品先物取引の重要事項はこちら >>
3. ディスクローズについて
当社のディスクローズ資料は当社本支店および日本商品先物取引協会(本部・支部またはホームページ)で閲覧できます。
日本商品先物取引協会ホームページ >> [情報開示]
サンワード貿易ホームページ ディスクローズ情報>>
サンワード貿易お客様相談室
<北海道>電話:0120-57-5311  /  <関東>電話:0120-76-5311  /  <関西>電話:0120-57-5311
キーワードで検索
Feeds

Page Top